怒りっぽい、冷え性…更年期症状に苦しむ夫。その時、家族はどうする?
更年期に対する、男女の意識と知識量の違いが生んでしまうトラブル。自らの意識改革はもちろんだが、家族や周囲の理解が加われば、当人の苦しみは軽減されるはず。老化の悩みに長年携わる医師の上符正志先生が、事例ごとにアドバイス。
取材・文/板倉みきこ イラストレーション/室木おすし 取材協力/上符正志(銀座上符メディカルクリニック)
初出『Tarzan』No.907・2025年7月17日発売

教えてくれた人
上符正志(うわぶ・まさし)/米国抗加齢医学会専門医、日本抗加齢医学会専門医。米・ニューヨークの最先端治療プログラムを習得し日本に導入。
家族が何か指摘した時の拒絶が凄い。
今まで同じことを言っても笑ってスルーしていたのに、急に怒ったり、指摘したことを全否定したり、攻撃力が増しているパターン。
「老化は敗北、認めたくないのが男の本音です。男性ホルモンは怒りを抑えるブレーキの役目も担うので、自分でもブレーキが利かない状況。感情のコントロールができなくなった自分に本人が困惑しているのです。失態を指摘するなど怒りの燃料を投下すると被害は甚大に。どうかぐっとこらえて慈しみの思いで見守ってください」。(銀座上符メディカルクリニックの上符正志さん)
多汗、冷え性などが厄介。改善策はある?
体質が変わり、本人も大変そうだけど自分からは何もしなくてモヤモヤ。
「多汗や冷えを感じても、女性のように具体的な対策が浮かばないのが男性。手間がかかるかもしれませんが、さりげなく布団を替えたり、黙って下着を用意するとか。微妙なエアコンの設定なども女性が勝手にやったほうが断然スムーズに解決します。この時期の夫は手間のかかる大きな子供と思って対応を。我が家もまさにこのパターン。大変ありがたいと心では感謝しているんです」
被害妄想、ひがみっぽいなど面倒なことに。
どうせ俺なんて、がお決まり文句。自己卑下感が強い相手には。
「バカにしているんだろ、と言うのは絶対否定してほしいから。“あなたが必要なんだ、大事なんだ”と存在を認めてあげてください。男性は怖がりなうえ、更年期という自分で想像もしていなかった不調に襲われ、どうしていいかわからず自己卑下のスパイラルに陥っているのです。そこで彼が気にしていること、弱点を突いたら収拾がつかなくなる。孤立させないよう気をつけましょう」
抜け毛や加齢臭など、肉体の衰えに向き合わない。
明らかに抜け毛は増えたし、加齢臭も気になる。
「自分だけは大丈夫、臭くないなどと思っているものなので、他者の症例、世の中の具体例を挙げて、気をつけた方がいいみたいと遠回しに言ってあげてください。“あなたは違うけど”と一言添えれば完璧。“テレビでやっていたけど、あなたの年代の男性って体質が変わって、ニオイが気になる場合があるみたいよ”などと、意識をちょっと問題に向けさせるだけで十分。その後自主的に対策を考えていくでしょう」
独り言や物忘れが多いように思うが指摘できない。
物忘れが多いと、認知症ではないかと気になるもの。
「その場では謝ったり、忙しくて忘れていたなどと誤魔化すかもしれませんが、何度も指摘すると怒って厄介。この際些細な物忘れは諦め、火の元の管理や鍵のかけ忘れなど、家族に危機が及ぶものは“お互い”気をつける、と共通ルールにしましょう。それでも忘れるなら“心配だから一緒に健康診断に行こうよ”と優しく声がけを。娘さんがいるなら言ってもらうのもいい。息子さんからは逆効果です」
喋らない、明らかに眠れていないなど、深刻。
男性の更年期障害に最近病名がつき、保険適用となった。深刻な状況なら病院に行き、診察や治療を受けてほしい。
「ただ、ダイレクトに“病院に行って”と言うと、“俺は違う”“ちょっと疲れただけ”と全力で否定するでしょう。男はプライドが高く、自分は大丈夫だと思っているんです。“あなたのことが心配だから。私のために行ってほしい”という言い方をすれば、重い腰も上がるでしょう。夫がリラックスしているときに声がけすればうまくいきます」



















