真の「健康的な食事量」とは?1日のエネルギー量を把握しよう。

食べ過ぎもダメだし、食べなさすぎもダメ。健康的な食事量を見極め、日々意識するのは難しい。しかし、大事だ。食生活の量とバランスを整えることこそが、将来の肥満や生活習慣病を防ぐ。

取材・文/石飛カノ イラストレーション/Tuna Dunn

初出『Tarzan』No.900・2025年4月3日発売

食事のニュースタンダード

D判定の原因は摂取エネルギー量にあり?

生き物のカラダは食べる物によってできている。もしあなたが今、10年前より太っていたり健康診断でD判定をくらっていたりするとしたら、その原因の多くは食事にあると考えていい。

たとえば、自分が毎日どれくらいの食事量を摂っているのかを把握しているだろうか? 厚生労働省の「食事摂取基準」によれば一般的な30〜40代男性の適正摂取エネルギー量は2750キロカロリー。3で割ったら1食分は900キロカロリー強。

ランチで二郎系ラーメンやチキン南蛮定食を食べたら完全アウト。同じ日の夜に焼き肉店に出かけたら太るのは当然。活動量が低ければさらに必要な摂取エネルギー量は少なくなる。立ち止まって考えるのは、まさに今。

推定エネルギー必要量(kcal/日)

推定エネルギー必要量

身体活動レベルは「低い」が生活の大部分が座位、「普通」が通勤などの歩行やスポーツが含まれる生活、「高い」は移動や立位の多い生活の想定。

「日本人の食事摂取基準2025」より

3大栄養素、PFCバランスにも注目。

食事の量が適正でも栄養バランスが乱れていたら、やはり肥満や生活習慣病を引き起こす原因になる。食物に含まれる3大栄養素はタンパク質(Protein)、脂質(Fat)、炭水化物(Carbohydrate)。この3つの摂取配分を略してPFCバランスと呼ぶ。

厚生労働省が提唱するPFCバランスは下の円グラフの通り。数値に幅があるのは年齢や活動量、体格の違いなどが考慮されているためだ。

たとえば1日にタンパク質を100g、脂質を65g、炭水化物250gを摂って2000キロカロリーをカバーしたらPFCバランスはおよそ20:30:50で理想的な範囲に収まる。

理想的なPFCバランス。

理想的なPFCバランス

生きていくのに不可欠なPは筋肉や骨、内臓などカラダを作る材料、Fはエネルギーであり細胞膜の材料、Cは最も手っ取り早く使えるエネルギー。

「日本人の食事摂取基準2025」より

減らすべき3つの脂肪の正体を暴く。

余分に摂ったエネルギー、糖質や脂質はただちに体脂肪としてカラダに蓄えられる。1年に1kgずつ増える体重の正体はまさにこの体脂肪。

と、ひと口に脂肪と言ってもその種類は主に3つ。ひとつは腹まわりや顎の下にダブついていて指でつまめる皮下脂肪。もうひとつは腹筋の内部、多くは腸管膜と呼ばれる腸を包む膜に蓄積される内臓脂肪。いわゆるパツパツの太鼓腹で脂肪は指でつまめない。

さらにもうひとつは心臓や筋肉、肝臓などに溜まる異所性脂肪。

皮下脂肪が比較的悪さをしないのに対して、内臓脂肪は生活習慣病、異所性脂肪は脂肪肝などの疾患に関わる脂肪。どちらにしろ食事調整で速やかに落とす必要あり。

皮下脂肪

皮下脂肪

指でつまめる皮下脂肪は分解に手間がかかるので落とすのは長期戦。

内臓脂肪

内臓脂肪

内臓脂肪は反応性が高いので食事調整でスピーディに落とすことができる。

異色性脂肪

異色性脂肪

内臓脂肪よりさらに分解・合成スピードが速いのが異所性脂肪。後に解説するが、とくに肝臓の脂肪は近年問題視されている。

過剰&不足しがちな食品を再チェック。

毎日の食事で圧倒的に多すぎる食品、逆にあまりにも不足しすぎている食品を洗い出す。これもまた、今後ご機嫌な人生を送るコツ。

まずは基本的な3大栄養素。炭水化物が多いならかさましで減らしたり、油脂が多いなら調理油を減らすなどの工夫をすればいい。タンパク質が足りないなら必要量のイメージを摑むことが重要だ。

多くの日本人に足りていない食物繊維は腸内細菌のエサとなるので、補塡することが急務。腎臓に負担をかける過剰な塩分は今後ますます減らす必要があるし、脂肪肝を防ぐためには肝臓で代謝される果糖減にも気を配りたい。