
教えてくれた人
益崎裕章(ますざき・ひろあき)/琉球大学大学院医学研究科教授。今号では食材の選び方や食べる順番など、体脂肪を溜めないための取り入れやすいメソッドを指南。
1.主食を白から黒にシフトする。
太りにくいカラダ作りの基本は主食を精製された白いごはんやパンから黒いそれらに替えること。肥満研究の第一人者、琉球大学教授の益崎裕章さんは未精製の穀物が持つ利点を次のように語る。
「米ぬかや胚芽など未精製の部分には肥満や糖尿病を起こしにくくする機能性成分が含まれています。その一つは玄米に含まれるγ—オリザノールという成分。強力な抗酸化作用が期待できるだけでなく、油脂に対する依存を改善する効果があることが分かっています」
γ—オリザノールはインスリンの分泌を促し、血糖値の上昇を抑える。さらに満腹中枢がある脳の視床下部に作用して、過食を防いでくれる。
実際、γ—オリザノールを与えたマウスは、それまで好んで食べていたラードのエサより普通のエサを選んで食べるようになるという。選択肢があるなら迷わず、主食を白から黒へ。
2.超加工食品の摂取を減らす。
ファストフードにインスタント食品、スナック菓子や加工肉。これらはUPF(Ultra-Processed Food)と呼ばれる超加工食品。天然にはない添加物が使用されたこれらの食品の常食は肥満のもと。
「たとえばドレッシングなどに配合されている乳化剤をネズミに与えると内臓脂肪が増えてメタボに陥ります。また、人工甘味料は糖の輸送体の活動を促し、消化管からの糖質の吸収を上げることが分かっています」
同じ飲み物でも100%オレンジジュースとカロリーゼロドリンクでは後者の方が太るリスクは高まるということ。
「人工的な添加物は人間の消化システムにとって未知の存在。どう処理したらいいか分からず誤った反応が起こると考えられます」
厳禁とは言わない。減らそう。
3.朝食は必ず摂る。
朝食は不要。だって起床前にはコルチゾールというホルモンが出て血糖値が自動的に上がるから。なんて説もあるが、こと肥満に関してはこれはまったくの誤情報。
「朝食を抜くと、午前中のカラダは飢餓状態に向かっていきます。起床前に上がった血糖値もどんどん下がっていき、その結果、脂肪が分解されて遊離脂肪酸が血液中に放出されます。この遊離脂肪酸は基本的に悪玉物質でインスリンの効き目を妨げてしまうのです」
インスリンの役割は血液中の糖を必要な組織に運んで血糖値を下げること。その効きが悪くなると腹ぺコ状態で食べたランチ後の血糖値が急上昇する。
それだとカラダ的にマズいので遅ればせながらインスリンが大量分泌。その結果、脂肪はじゃんじゃん合成されるわ、血糖値ダダ下がりで午後の集中力はゼロになるわ。朝食抜き=肥満+パフォーマンス低下と心得よう。
4.タンパク質や野菜を先に口にする。
「食べ順ダイエット」はもはやポピュラーな体重管理のメソッド。いきなり白メシをわしわし口に運ぶのではなく、おかずを最初に口にする。その目的は、糖質食品を後回しにすることで、血糖値を下げるインスリンの急激な分泌を避けるため。一時期は、食事の前に大量のキャベツを食べるダイエット法も登場した。
とはいえ、そこまでせずとも副菜の小鉢、肉や魚、卵などのタンパク質を先に食べ、おもむろに主食に取り掛かるだけで肥満防止の効果は望める。
「とくにタンパク質を先に食べるとインクレチンというホルモンが小腸から分泌され、インスリン分泌が緩やかになります。主食を食べるタイミングでインスリンが適度に作用するので、脂肪合成を避けることができます」
5.出来合いの揚げ物に手を出さない。
仕事帰りの空腹状態でデパ地下やスーパーの惣菜売り場に行くと、思わず引き寄せられてしまうのがフライに天ぷら、唐揚げ。
油脂のエネルギーは1gにつき9キロカロリーで糖質やタンパク質の倍以上。衣にたっぷりその油脂が含まれている揚げ物は当然、高カロリー。それはそれで太る原因にもなるが、それ以上に問題なのは「出来たてではない揚げ物」という点。
「時間が経過した揚げ物の油は酸化されることで過酸化脂質という異物を作り出します。これはカロリー以上にカラダにとって有害」
過酸化脂質の過剰摂取は動脈硬化などさまざまな疾患の原因になることも分かっている。揚げ物を口にするなら、せいぜい週に1〜2度、目の前で作られる専門店で食すことをおすすめする。