グラップリングで体幹強化&カラダの動きが自由自在に!
組み技、寝技で相手を制するグラップリング。自ずと体幹が鍛えられ、自分のカラダを巧みに操れるようになる!1人でできるソロトレと、2人で行うペアトレに分け、技を紹介しよう。
取材・文/神津文人 撮影/内田絋倫 実演/丹羽怜音、熊田堅信
初出『Tarzan』No.899・2025年3月19日発売

教えてくれた人
丹羽怜音(にわ・れおん)/〈アクシス横浜〉代表。海外仕込みの柔術猛者。米国の名門AOJで修行(メンデス兄弟より黒帯を授与)後、老舗柔術道場の代表に。横浜市南区吉野町3-10 2F、TEL 045・308・7778。金曜定休。入会金11,000円、月会費18,700円(男性)、14,300円(女性)、無料体験あり。
カラダを自在にコントロールするグラップリング。
MMA(総合格闘技)の一要素でもあるグラップリング。柔術には道着を着ないノーギのカテゴリーがあり、世界を見渡せば、ほかにもさまざまなルールのグラップリング大会が開かれていたりする。
「打撃がない分、安全性が高く、子どもでも高齢者でも楽しめるのが、柔術、グラップリングの魅力だと思います。柔術には護身術の要素もあり、自分よりもカラダが大きな相手と闘うことも想定しているので、テコの原理などを利用しながら、小さな力で大きなパワーを発揮する術を身につけることができます」と、〈アクシス横浜〉代表の丹羽怜音さん。
グラップリングの基本動作を学びながら、カラダを自在にコントロールできるようになろう!
強い人ほど上手な基本の動き・ソロトレ。
柔術道場ではウォーミングアップで行われることも多い、ソロトレ。いずれも、グラップリングの基本となる要素を含んでいる。強い人ほど基本の動きが洗練されているし、ソロトレが下手な人に強い人はいないともいえる。
まずはそれぞれの種目にチャレンジ。慣れてきたら1から7までを繫げたサーキットトレを。
1.エビ
抑え込まれそうになった状態からエスケープするときなど、ディフェンスの基本となるのがエビの動き。
- 仰向けになり、膝を曲げ両足を床につける。脇を締めて両手は顔の近くに。
- 両足で床を踏みながら、半身に。
- 床を踏んだ力を利用して、腰を後方に逃がし、両腕を足の方へ伸ばす。戻って反対側も同様に。
2.ブリッジ
馬乗りになられた状態から逃げるときなどに必要な動き。
- 仰向けになり、膝を曲げ両足を床につける。脇を締めて両手は顔の近くに。
- 両足で床を踏み、腰を高く上げる。
- 上体を捻りながら、片方の肩を床から離し、腕を伸ばす。
- 床を踏んだ力を、腰を通して指先に伝えるイメージ。戻って反対側も同様に。
3.柔術立ち
立っている相手からプレッシャーを受けながらも、安全に立つための柔術の基本動作。
- 片脚を立て、立てた脚と同じ側の腕で前方をディフェンス。
- 反対側の手は床についてバランスをとる。上体が後傾しないように注意。
- 寝ている側の足を引きながら、腰を高く上げる。カラダを起こし、背すじを伸ばす。
4.三角絞め
三角に組んだ脚の中に、相手の首と片腕をとらえる絞め技。
- 仰向けになり、両肘を床に。両膝は90度程度に曲げる。肘で床を押し、背中、腰を床から離す。なるべく腰を高く上げる。
- 片方の脛を自分の肩のラインと平行にし、そこに逆の脚をかける。
- 組んだ脚を外しながら、戻る。反対側も同様に。
5.シットアウト
相手に覆い被さられた状態から逃げるときなどに必要な、腰を切る動きのドリル。
- 両手両足を床について、腰を高く上げる。
- 左手を床から離し、右足を左手のあった場所の先に滑らせるようにしながら、左肘を引いて胸を上に向ける。
- 右手、両足の3点でバランスをとる。元に戻って反対側も同様に。
6.ワニ
寝技の際、相手のガードを越える(パスガード)ときに、応用できるのがワニの動き。
- 両手両足を床に。右肘と右膝を近づけ、左脚を伸ばす。
- 低い姿勢をキープしたまま、右手を前方に出し、左膝を左肘に近づける。
- 今度は左手を前方に出し、右膝を右肘に近づける。繰り返して前進する。
7.前転後転
回転動作も、グラップリングの攻防に欠かせない基本の動き。
- 両手両膝を床に。右肩を床につき、そこを支点にして前転。
- 着地時に脚を抱える。
- 今度は左肩を床について、そこを支点に後転。元に戻る。
- 次は、左肩を支点に前転し、右肩を支点に後転する。脚の重さを利用すると滑らかに回転できる。
2人1組でレベルアップを目指す・ペアトレ。
ペアで行うと、複雑な動作の打ち込みが可能になる。受ける側はディフェンスのイメトレになり、体幹も鍛えられる。これらの動きが滑らかに行えるようになれば、グラップリングのレベルが一段上がる! 各種目1分間行う。
まずは比較的難度の低い1から4までにチャレンジし、慣れたら1分×4種目のサーキットトレを。5〜8ができるようになったら1分×8種目のサーキットに挑戦!
1.キムラロック
キムラロックは肩関節を極める関節技。
- 座った相手の胴に両脚を絡める。パートナーは両手を床に。
- 右手で相手の左手首を摑む。
- カラダを起こし、相手の上腕三頭筋側から左腕を通して、自分の右手首を左手で摑む(関節技を極める場合はここから相手の腕を捻り上げるがそれはやらない)。元に戻って反対側も同様に。
2.アームバー
肘関節を極める関節技。
- 座った相手の胴に両脚を絡める。パートナーは相手の胸に両手を置く。
- 両手で相手の両手首を握る。カラダを右に振りながら、相手の脇腹に沿って右脚を上げる。
- 右脚のプレッシャーで相手の頭を少し下げるイメージ。腰を上げて左脚を回して、相手の首にかける。反対側も同様に。
3.レッグレイズ
安定した体幹は、自分のカラダをコントロールするのに重要な要素。こちらは腹直筋、腹斜筋を鍛えるトレーニング。
- 仰向けに寝て、パートナーの両足首を摑み、両足を上に。
- パートナーに足を押してもらい、真っ直ぐ足を下ろす。
- 元に戻ったら、今度は右手側に押してもらう。
- 戻ったら左手側に。これを繰り返す。
4.サイドスイッチ
寝技の攻防で、相手のガードを越えるのに役立つ打ち込み。
- 寝ているパートナーの右足側に斜めに立つ。左手を腰、右手を左膝に置く。
- 手の位置を変えずに、反対側にステップ。
- 今度は右手を腰に、左手を右膝に置き、ステップして元の位置に戻る。なるべく頭の位置を変えずに、リズミカルに繰り返す。
5.キス・オブ・ザ・ドラゴン
相手の股をくぐって背後を取る同名の技がある。その動きに近いドリル。
- パートナーの左脚を股の間に入れ、右手で太腿を左手で足首を摑む。
- 横方向に倒れて両肩を床に。右手で相手の右足首を摑む。
- 相手の股の間にある足を入れ替えながら、横回転を続け、座る。
- 今度は逆回転。これを繰り返す。
6.トップスピン
トップポジションをキープするのに役立つ動き。
- 亀になったパートナーの左側につき右膝を床に。両手は相手の肩と腰に。
- 右膝を支点にして左足を逆サイドへ。
- 左膝を相手の近くにつき、手の位置を入れ替えながら、左膝を支点にして右足を逆サイドへ。
- 今度は逆回転。これをリズミカルに繰り返す。
7.ダックアンダー
相手のガードを越えるのに役立つ動き。
- 寝ているパートナーの左足側で片膝立ちに。右脚を上げてもらい、右肩に担ぐようにする。
- 左手を床につき、相手の左脚を越えて逆サイドに移動しながら、床につく膝の左右を入れ替える。
- 今度は左脚を上げてもらい、それを左肩に担ぎ、逆サイドへ。繰り返す。
8.ニー・オン・ザ・ベリー
膝を相手の上に乗せて抑え込む技の打ち込み。
- 寝ているパートナーに両脚を上げてもらい脛の辺りを摑む。
- 相手の右足側にステップ。
- 腰を落として、右膝を相手に乗せながら両手を床に。
- ジャンプして反対サイドに移動しながら、左膝を相手の上に。
- カラダを起こして両手を膝に。戻って逆回転。