車好きの聖地「大黒埠頭PA」でも異彩を放つ一台《スバル GLワゴン》|クルマと好日

アウトドアフィールドに、あるいはちょっとした小旅行に。クルマがあれば、お気に入りのギアを積んで、思い立った時にどこへでも出かけられる。こだわりの愛車を所有する人たちに、クルマのある暮らしを見せてもらいました。

文/豊田耕志 撮影/五十嵐 一晴

初出『Tarzan』No.851・2023年2月22日発売

デンバーの山中から発掘! おそらく日本で唯一現役な、左ハンドルのスバルの名車。

いくらクルマ好きがこぞって集まる「大黒埠頭PA」といえど、ここまで目立つ一台もなかなかないんじゃないか? 誰もが二度見、いや三度見せざるを得ないこのクルマは、1984年式のスバル GLワゴン。

日本名はレオーネ ツーリング ワゴンの北米仕様車だ。そんな珍しき一台のハンドルを握るのは、クルマの輸入業を営む金子真司さんである。

「たぶん日本には一台しかないんじゃないでしょうか。4年前、スバルのショールームで一目惚れして以来、ずっと探していた幻の個体。もう無理かなと思いきや、2020年にデンバーの山中に眠っていた一台を発見しまして。昨年末にようやく手元に届いた一台なんです」

購入当初は、燃料タンクの蓋がガバガバ。アメリカ在住の知人が奇跡的にパーツを発見し、なんとか閉まるように。

まさに粘り勝ちで手に入れたGLワゴンだが、当初は今よりもシンプルなホワイトカラー。

「本来のGLワゴンは、今よりもずっと素朴な北米仕様カー。でも、アメリカでは、こういう日本の旧車の人気が高く、カリフォルニアでは毎年『ジャパニーズ クラシックカー ショー』と呼ばれるイベントが開催されるほど。思い出作りに、と輸入前に出品してみたら、なんと特別賞を頂くことになりまして」

思いがけない嬉しいサプライズを手土産に、華々しく凱旋帰国することになったのだ。

「この派手なルックスになったのは、実は最近。ある時、昔のカタログをぱらぱらと捲っていたら、アメリカスキー代表のオフィシャルカーが載っていたんです。おっ、かっこいいな、と思い、何気なくeBayで“US SKI TEAM”と検索すると、まさに同じデカールセットが出品されていたんですよ」

出合いは続けて突然に。早速アメリカから取り寄せたデカールを奥さんと二人でカスタムチューン。

「ご覧の通り、いい出来栄えになったので、今度は『ヨコハマホットロッドカスタムショー』に出品してみたら、またもや賞を受賞させていただいて。本当に嬉しい限りです」ただ、“スキー”とデカデカと書かれるが、実はまだスキーは未経験。「今年はスキーに行くつもり(笑)。やっぱり雪山が似合う旧車なので」

SUBARU GL WAGON

燃費はアメ車並みで、一般道は約6km/ℓ、高速道路で約9km/ℓ。AT3段変速仕様。本体価格は、2020年当時のレートで、約125万円で購入。中古車市場ではなかなかお目にかかれない貴重な代物である。

GLワゴンを日々乗り回す奥さんが最も気に入っているのは、“TURBO”と刻印されたミラー。そして、昭和生まれのクルマらしい素朴な顔つき。

紺色のビニールレザーに包まれた後部座席からの景色はこんな感じ。ハンドルはもちろん左、メーターパネルはマイル表記になっている。ちなみにフロアマットは、メイド・イン・USAのカスタムカーマットブランド〈cocoMats〉にオーダーした特注品。

  • 全長4,280×全幅1,620×全高1,410mm
  • エンジン=1,800cc、水平対向ターボ付きエンジン
Owner

金子真司(自動車ディーラー)
1973年、東京都生まれ。保険代理店で働く傍ら、アメリカから左ハンドルの日本車とメルセデス・ベンツを輸入する。スバル好きで、2017年式のCROSSTREKも所有する。