ネガティブ感情を上手に扱う! レジリエンスを高める方法
スタミナというと、フィジカル面を想像しがちだが、精神的なスタミナ力も生きていくうえでかなり重要。そこで、今回はネガティブな感情と上手に付き合いながらレジリエンスを育むための具体的なアドバイスを紹介。避けられないストレスへの反応の仕方を変えることで、メンタルのスタミナを高めよう!
取材・文/井上健二 イラストレーション/ビオレッティ・アレッサンドロ 監修/久世浩司
初出『Tarzan』No.884・2024年7月18日発売
打撃系でネガティブ感情を手放す。
ストレスで気分が落ち込む原因は、ストレスそのものではない。ストレスから発する自らのネガティブな感情だ。このネガティブな感情を早く断ち切ることが、レジリエンスを高めるためにまず大切。
「ネガティブ感情は頑固。一度生じるとずっと残り続け、心のスタミナを削ります」(認定レジリエンスマスタートレーナーの久世浩司さん)
そこで役立つのが運動。疲れない範囲内でカラダを動かして、焦点を自分の内面から逸らせてやれば、ネガティブ感情は手放せる。
「これは“感情の気晴らし”と呼ばれています。とくに気晴らしになるのはボクササイズなどの打撃系。バッティングセンターでボールを打ち、スカッとするのも有効です」
カラオケなどでモヤモヤを吐き出す。
運動以外でネガティブ感情を手放す方法はあと2つある。
1つ目は楽器を演奏したり、歌を歌ったりすること。いずれも脳内で快楽物質ドーパミンが分泌され、ネガティブ感情から解放される契機に。楽器が弾けなければ、カラオケで好きな歌を熱唱すればいい。
2つ目は、何にどういうネガティブ感情が生じているかを書くこと。
「これはライティングセラピーと呼ばれるメソッド。感情を可視化し、客観視すると手放しやすくなる。書き出したら寝るまでに紙を破り捨て、その日のネガティブ感情を翌朝まで持ち越さないようにするのが肝腎。SNSに不平不満をぶちまけるより、手を動かして紙に書き出す方が効果的だとわかっています」
夜眠る前、良かったことを3つ書き出す。
レジリエンスを高めるのに有益な手段として世界的に知られているのが「3 Good Things」。
これは眠る前に、今日良かった出来事を3つ書き出す習慣。良いことに意識を向ける機会を増やせば、心のスタミナはついてくる。
毎日いいことなんてそうそうない? いやいや、それは目の付け所が悪いだけだ。
「作家の村上春樹さんがエッセイで触れている“小確幸”、つまり小さいけれど、確かな幸せで十分。数年に1回とてもハッピーな出来事があるよりも、ちょっとした幸せをちょいちょい実感できる方が幸福度は高く、メンタルが健全に保たれるのです」
雨予報なのに晴れた、電車で坐れた、仕事終わりの缶ビールが美味しかったなど、何でもOK。今日が案外幸せで恵まれていたと気づけたら、立ち直るチカラが湧いてくる。
仲間、サードプレイスを作る。
ここまでセルフで行えるコツを紹介したが、他者の力を借りると心のスタミナはより養いやすい。
「レジリエンスが高い人に共通する特徴は、信頼できる仲間に恵まれていることです」
妻に先立たれた夫より、夫に先立たれた妻の方が余命は長くなる傾向があるとか。それは女性の方がコミュ力は高く、夫婦以外に仲間が大勢いることが一因と考えられる。
心が折れそうになったとき、相談できる相手がいるだけで気持ちは軽くなる。そこから得られるアドバイスやサポートは、立ち直るエネルギーを与えてくれるだろう。
自宅と仕事場の往復ではなく、それ以外で心が落ち着けるサードプレイスを作ったり、趣味などで関わる人を増やしたりすることも重要。近所のカフェやスナックに通って、店主や常連客と緩やかな絆を作るのもいい。
「感謝」を可視化してポジティブ感情を増やす。
ポジティブ感情を豊かに増やしていくことも、ネガティブ感情を打ち消すのに役立つ。
脳のキャパは限られているので、ポジティブ感情が広がれば、ネガティブ感情の居場所は狭まる。それでストレスを受け流す緩衝力が高まり、ネガティブ感情は生じにくくなるのだ。前述の「3 Good Things」もポジティブ感情を増やすが、それ以外に日本人に馴染みやすく習慣にしやすいやり方がある。
「それは日常生活で“感謝”の気持ちを表現すること。食事の前に手を合わせる、お世話になった方にお礼の手紙を書く、神社仏閣にお参りして頭を下げる、母の日や父の日にプレゼントとカードを両親に贈る…。そういうことを習慣にするとポジティブ感情がアップして、いわゆる打たれ強い人になることが心理学の研究で明らかになっています」