【棚橋弘至・連載】第37回:過去の成功体験に決別。「棚橋弘至改造計画」始動

新日本プロレス「100年に一人の逸材」棚橋弘至が綴る、大胸筋のように厚く、起立筋の溝のように深い筋肉コラム。第37回のテーマは「棚橋選手、本気の肉体改造計画」について。

「棚橋弘至改造計画」始動

ついに!つーいーーに、始動しました、「棚橋弘至改造計画」。その名も『逸材ボディを取り戻せ』。えっ!?…ということは、今も逸材ではあるけれども、逸材ボディではないと…いや、これ如何に。

丁寧に説明しますと、若手の頃から、プロレスラーの中では低い体脂肪率のおかげで、腹筋も割れていて、筋肉質だったわけです。で、プロレス界の筋肉アイコン(自称)として君臨し、『棚橋弘至の100年に1人の逸材★BODYのつくりかた』(ベースボールマガジン社)というトレーニング本(名著)を出したこともあったのです。

しかし、2020年頃から体脂肪率が増え始め、有酸素運動や食事制限などをしても、思うように体重が落ちなくなった結果、かつて「逸材ボディ」と呼ばれていた僕の肉体は、どんどんしょっぱく(※)なっていきました。

※しょっぱい≒よくない

昔から、見た目を自信に変えるタイプだったので、練習量に思いを馳せ、髪型よし!コスチュームよし!ビジュアル完璧! と、試合前に、全部が揃うと、自信を持ってリングに上がることができ、動きも良くなっていたわけで。

言わずもがな、結果もちゃんとついてきていて我が世の春を謳歌していました。それが…棚橋ウォッチャーの皆さんなら、すでにご存じの通り、2020年頃から、少しずつ体型が崩れていき、なかなか体型が戻らないままリングに上がり、案の定、結果も出なくなっていきました。

そして「いつの間にか他の選手にいじられるくらいなら」と、ポッコリお腹を自虐ネタにするようになっていきました。かといって、練習しなくなったわけでも、食事制限を止めたわけでもありません。ただただ、やり方もゴールも見失っていた。そんな感じだったのです。

2020年からなので、約4年ですね。今思うと「しっかりコンディションを作れていれば、ベルトの2本や3本巻いていたかもなぁ」と、後悔することもままあります。

そして現在、新日本プロレスの代表取締役社長となり、さらにケガでの欠場も重なり、出口の見えない、あんこ体型への一本道をトボトボとひとり歩いていたのでした。

そんな矢先、1つの企画が新日本プロレスの社員のみんなから提案されました。その企画とは『棚橋弘至改造計画~逸材ボディを取り戻せ~』というものでした。詳しく話を聞いてみると、トレーニングから食事まで、専門のトレーナーさんに見ていただいて、期限を決めて、しっかり結果を出すというものでした。

ここ何年かで、自分自身のやり方が間違っているのではないか?とは思いつつ、過去の成功体験にすがり付いて生活してしまったのかもしれません。会社のみんなから、こういった企画が持ち上がるのは、不甲斐ない気持ちもあったけれど、「期待してくれているんだ」と気持ちを切り替えることにしました。

代謝オバケになって米をたくさん食べたい!

某日、担当してくれるトレーナーの水田さんと直接会って、企画の説明とトレーニング計画の打ち合わせ。打ち合わせというよりは、水田さんのメソッドの説明ですね。

何度も言いますが、もう僕自身のやり方が合っていないのなら変えるしかないのです。そして、僕自身が退路を断つために、新日本プロレスの公式SNSを使って、発表と相成ったわけです。

ただ、発表のタイミングが4月1日だったため「エイプリルフール」のネタなんじゃない!?と、思われた方も多くいらっしゃるはず。ええ、本気の企画なのです。この企画の画像にも、よく見ないと分からないくらいの小さな文字で「この企画はエイプリルフールのネタではありません」って書いてありますからね。

さて、そうして始まった水田さんによるパーソナルトレーニング。2024年4月5日現在で、肩、脚、背中、二頭を終えました。次は胸と三頭で、全身をやり終え、2ターン目に入る感じです。

食事に関しても「マイフィットネスパル」というアプリを使って、摂取カロリーや食事のPFCバランスを見ていただいています。「夜も少し、カロリーとっても大丈夫ですよ」とか「ここは肉じゃなくて魚でお願いします」と、丁寧にコーチングをしていただいているところです。

僕にも、ずっと続けてきたメソッドらしきものはありましたが、水田さんのカラダとその代謝の良さに驚きました。玄米のおにぎり300gを1日5回食べても、太らない体質になっているからです。勢いで、腹筋をつまませていただきましたが、薄い脂肪。

僕が、炭水化物を朝と昼の2回(1回「100~150g)に抑え、総摂取カロリーを2000前後に抑えている一方、水田さんは、玄米を1.5キロも食べていらっしゃる。その昔、マッスル北村さんも代謝のオバケだと、聞いたことがありましたが、僕の倍以上を食べ、カロリーも摂っているのに、体脂肪率を低くキープできている。

本当に、驚きました。「そのハウツーを教えて下さい!」「お米が食べたいです!」と、即、弟子入りを志願し、1週間が過ぎました。メソッド通り、毎食、食べていいお米に「恍惚と不安2つ我にあり」状態でしたが、食事の摂り方もだんだん慣れてきました。今は、信じてやるしかないのが、僕にとってもいい状態なのだと思います。

実際、2回目の測定では、そんなに体重は変化していませんでしたが(むしろ増えていました泣)、体脂肪率の減少が見られました。恐るべし!水田メソッド!

今の、目標は大阪城ホールまでの約2か月間を全力で走り切ること。大会前日の6月8日には、仕上がった逸材ボディをお披露目したいと思っています。…いや、お披露目します!

年齢的にも、ここで仕上げなければ!という思いもあります。頑張りますね! そして、水田さんのように代謝の良いカラダを作り上げた暁には…絶対1日お米1.5キロ食べるんだから(着地)♪

棚橋弘至

たなはし・ひろし/1976年生まれ。新日本プロレス所属。立命館大学法学部卒業後、1999年デビュー。低迷期にあった同団体をV字回復に導き、昨今のプロレスブームをリング内外の活動で支える。

本連載『モテ筋肉でいいじゃないか』は毎月・第2金曜日に公開予定。次回は、2024年5月10日(金)に公開予定です。