脱毛人口が増えているとはいえ、体毛はそもそもカラダに備わっているもの。体毛はない方がいいのか、あるべきなのか。剃る派、剃らない派が集まっての座談会。果たして決着はつくのか!
語ってくれた人たち
八須拳太郎さん
はちす・けんたろう/“剛毛胸毛ブルドッグ”の異名を持つプロレスラーであり、パーソナルトレーナー。そしてパワーリフターでもある。SAWAKI GYM高田馬場の店長。ブラジリアン柔術・青帯。
長ねぎさん
ながねぎ/脇毛を剃らずに放置し続けたらどれだけ伸びるかを試す企画でバズり、脇毛コンテンツで人気になったYouTuber。昔は体毛を剃る派だったが、現在はVIOの手入れをする程度に。
畑谷友香さん
はたたに・ゆか/総合刃物メーカー〈貝印〉宣伝担当。国内トップシェアの使い捨てカミソリメーカーが「#剃るに自由を」と謳った広告を担当。最近は介護用品売り場でもカミソリが人気。
直野賀優さん
なおの・よしまさ/2019年、21年、22年にオールジャパンメンズフィジークで階級別チャンピオンとなった。ステージ映えを求めて、筋肉と同じように肌のコンディションも追求している。
“胸毛ウォッシュ”という技は胸毛がないとできません!(八須)
直野
僕はフィジークの大会シーズンは、必ず全身を剃ってつるつるにしています。毛があると筋肉のカットがぼやけてしまいますし、表面がツルッとしている方が、ライトが当たったときにキレイな印象になるんですよね。
八須
僕は体毛がプロレスラーとしての個性になっていて。胸毛がないとできない“胸毛ウォッシュ”という技をかましたり、Tシャツを脱いだときにお客さんが「おっ」と沸いたりもするので、体毛を整えつつ大事にしています。まぁでも以前ボディビルの大会に出たときには剃ったんですけどね(笑)。
畑谷
私は刃物メーカーの宣伝をしています。「剃りなさい」と会社や周囲に言われることはないのですが、肌がつるつるの状態が気持ちよくて好きなので、剃っています。
長ねぎ
私も
もともとは剃る派だったんです。剃るようになったきっかけが中学生のときに隣の席の男の子に「脛毛がボーボーでゴリラみたいだ」と言われたからなんですが、あるとき何でそんなことを言われなきゃいけないんだという気持ちが湧いて、馬鹿馬鹿しくなって逆に剃らないようになりました。
で、ユーチューブを始めたら、女性で伸ばしている人が少ないからなのか、脇毛ネタが人気コンテンツになって、今に至っています。
畑谷
2年前に剃毛・脱毛に関する意識調査をした際に、
剃毛や脱毛に対する考え方に束縛感や違和感を感じる人が36.5%、そして
剃ることは自分自身で自由に決めたいという人が90.2%いました。
カミソリを作っている会社だからといって、剃ることだけを推奨するわけではなく、それぞれの選択を応援できたらと思っていますし、価値観の押し付けに苦しむ人が減ってほしいなと思っています。
つるつるのときは筋肉と一緒に肌を褒められます(直野)
直野
海外のセレブにも「体毛の処理をしていない」という発信をする人が出てきましたもんね。個人的には
自分の中のメリット、デメリットを天秤にかけて好きな方を選べばいいんじゃないかと思います。
体毛を処理しておくと、蒸れにくい、ニオイが溜まりにくい、衣類と擦れたりしないというメリットもあるので、僕は剃ることにポジティブです。
長ねぎ
私は脇毛に限らず毛深い方なんですけど、毎日剃って全身をメンテナンスしようとすると
お風呂の時間がすごく長くなってしまうんです。
剃らなくなったらめちゃくちゃ楽で、お風呂の時間が短くなって、その分時間に余裕ができました。男性ならヒゲ剃りもそうだと思いますが、毎日の行為となると、積もり積もって結構な時間になりますよね。
八須
体毛のお陰でプロレスのオファーがある部分もあるんですけど、トレーナーでもあるので、
清潔感がなくならないように整えるようにしています。まぁでも剃っている方がモテそうな気はしちゃうんですよね(笑)。
ボディビルの大会に出て仕上がっている状態だったからかもしれないんですけど、つるつるでバキバキのときに海に行ったら、男子高校生のグループに「一緒に写真撮ってください」って言われたんで(笑)。
直野
体毛がない方がモテるかはわからないですけど(笑)、つるつるのときは筋肉と一緒に肌も褒められるということはありますね。表面が良く見えるからっていうことだと思いますけど。
脇毛も私の一部なのでそれも受け入れてほしい(長ねぎ)
長ねぎ
私はもし「脇毛があるのが嫌いだから剃ってよ」と言われたら、その人を信用できないですね。
脇毛ぐらいで私のことを嫌いになるぐらいなら、こっちから願い下げというか。
脇毛も含めて私なので、それを受け入れてくれる人がいいですね。脇毛で相手の度量を測ることができるので、そういう意味では試金石になるかもしれません(笑)。
八須
過去に女性から「体毛があるのは嫌だ」と言われたことがあるんですが、僕の毛を認めてくれる女性といつか結婚したいなと思います(笑)。特に日本だと、やっぱりつるつるの方がモテそうな気はするんですけどね(笑)。それを打ち破っていきたいですね!
体毛の処理を自由に決めたいという声が増えています(畑谷)
畑谷
年代による差はあると思いますが「女性だから剃らなければならない」「男性は剃ってはいけない」という考え方は減ってきている印象です。
最近はSNSもあって、自分の意見を表明しやすくなってもいますし、剃るか剃らないかは、それぞれの価値観だということが認められつつあるのかなとも思います。「毛を少しだけ減らして整えたい」というニーズもありますし。
長ねぎ
毛なしか毛ありかっていうテーマの座談会でしたけど、中途半端に残すっていう選択があるんですか?
畑谷
はい。脚や脇などの毛を適度な量に調節する男性用の《レッグトリマー》という商品が人気だったりします。
長ねぎ
勉強になります! 確かに私もアンダーヘアはつるつるでもボーボーでもなく、いい感じに整えたいしなぁ。
直野
第3の選択肢、面白いですね。アンダーヘアで言えば、最近は介護脱毛っていう言葉もありますよね。まだ自分ごととしては考えにくいんですけど、汚れが溜まりそうなVIOは脱毛するメリットがありそうだなと思いました。
畑谷
介護の現場でどれだけ使われているかまではわからないのですが、介護用品売り場でVIO用のカミソリが売れているという現状はあります。
長ねぎ
子どものおむつ替えのときはつるつるだから拭きやすいんですけど、それがボーボーだと考えると大変そうですもんね。脱毛はそれなりにお金がかかるので、ハードルがありますし。
八須
そうなるとやっぱりトレーナーとしては、要介護にならないようにトレーニングをして栄養バランスのいい食生活を心がけてほしいですね!
直野
ものすごく『ターザン』的なオチになりましたね! いずれ、それぞれが自分の価値観に照らし合わせて選択することが大切ってことですよね。
取材・文/神津文人 撮影/内田紘倫 編集/堀越和幸 イラストレーション/石山好宏
初出『Tarzan』No.844・2022年10月20日発売
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