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“疲れないカラダ”が可能になる? 〈ロート製薬〉に聞く、冬虫夏草の神秘のチカラ。

古来伝わる滋養強壮の生薬、冬虫夏草。そのパワーを現代科学でひもとけば、「疲労を回復する」その先にある、「そもそも疲労しないカラダ」が見えてきた!?

text: Kano Ishitobi illustration: Miltata

『Tarzan』No.936 on sale October 22, 2026.

チベット高原に育つ冬虫夏草

チベット高山の過酷な環境で生まれた、奇跡のきのことは?

「冬は虫」「夏は草」? 冬虫夏草はその名の通り、神秘的なきのこ。冬の間、土の中にいる昆虫の幼虫に菌が寄生し、虫の栄養を糧として成長し、やがてきのことして地上に姿を現す。寄生する虫はセミやカメムシなど、約400種類存在するといわれているが、本家本元の冬虫夏草はチベット高原に生息するオオコウモリガ由来のもの。

その昔、チベットの3000m級の山々で家畜として飼育されていたヤクがこのきのこを食べ活発に動き回ることから遊牧民の滋養強壮薬として知られ、漢方医がこれに注目。やがて時の皇帝の不老長寿の妙薬となったという。

冬虫夏草

古くから滋養強壮の源とされてきた冬虫夏草は、現在もアジア圏で漢方薬や養生食の素材として活用されている。上級品は1g1万円程度。

冬虫夏草には、東洋医学的に“肺を潤し腎を補う”効能が。

東洋医学には世の中を構成している自然や現象をすべて5つの要素に分類する「五行論」という考え方がある。人のカラダも自然の一部なので、人体の機能も「五臓」に分けられる。それがすなわち「肝・心・脾・肺・腎」。西洋医学的な臓器とは異なる役割を持ち、それぞれの臓器が互いの機能を助けたり、調整し合って健康状態が維持されると考えられている。

古来冬虫夏草に期待されてきた効能は「肺を潤し腎を補う」というもの。空気の薄い高地で呼吸器系の働きを助け、健やかなエイジングを可能にする、まさに不老長寿の生薬だ。

五臓:肝・心・脾・肺・腎の図

【肝】末梢循環や代謝、排泄、解毒などに関わり、気や血の巡りを調整。
【心】血液循環、心拍、メンタルのコントロールなどを司る。心を安定させる臓器。
【脾】消化吸収や意欲をコントロールし、食物から元気を生み出す。
【肺】呼吸や水分の循環などに関わり、全身に気や水を巡らせる。
【腎】生きるためのエネルギーを蓄え、生殖やエイジングをコントロールする。

冬虫夏草のサポートによって、疲れにくさが手に入る可能性。

長い間、漢方薬や養生食として取り入れられてきた冬虫夏草だが、その働きが現代の科学によって明らかにされつつある。

たとえば、エネルギーの通貨であるATPを作り出すシステムと冬虫夏草の関わりが示唆されている。ATPは生物の細胞が動くために欠かせない物質。

日本語名はアデノシン三リン酸で、これはアデノシンという物質に3つのリン酸がくっついた化合物。生物の細胞内でATPからリン酸がひとつ外れるときにエネルギーが作り出され、アデノシン二リン酸(ADP)に変換される。その後、ADPにリン酸がひとつ結合してATPが再び合成される。このエネルギー循環に冬虫夏草が関わっているという。

エネルギーの出納サイクル

エネルギーの出納サイクルの図

糖や脂肪などを原料にしてエネルギーが作り出されるルートはいくつかあるが、基本的にATPがADPに変換されるときにエネルギーが放出され、ADPがATPに再合成されるときにエネルギーが供給されるというのは同じ仕組みだ。

〈ロート製薬〉の研究によると(※1)冬虫夏草を長期的に摂取した際、ADPが1.7倍に増加。さらに、糖からATPが作り出される“解糖系”というエネルギー産生ルートに冬虫夏草が作用して関連物質が増えていたという。

これはエネルギーを「作る→使う→再び作る」という循環ルートがより活発になっている可能性を示す結果だ。エネルギー量を増やすというより、エネルギーの回転力を高める、たとえば使ったそばからスマホを充電するイメージだ。充電し続ければ、パワーが枯渇する心配はない。

人で言えば使ったエネルギーを補い続けることが、疲れにくさに繫がる可能性は高い。冬虫夏草に秘められた力を現代科学が少しずつ解き明かし始めている。

※1 ロート製薬の冬虫夏草に関する研究結果。「伝統的薬用素材である冬虫夏草が脳内の神経回路形成とエネルギー代謝回転を活発化することを示唆」を参照。https://www.rohto.co.jp/research/researchnews/technologyrelease/2026/0928_01

高度な技術で菌を培養、安定供給が可能になった。

疲労の悩みを解消するかもしれない冬虫夏草だが、問題は高すぎる希少性。でも、朗報がある。〈ロート製薬〉と〈余仁生(ユーヤンサン)〉は特殊な培養技術を持つ企業と協力し、本家本元の冬虫夏草と99%以上(※2)の遺伝子的類似性を持つ菌糸体「ヒルステラ・シネンシス」の発酵・培養に成功した。

※2 KoY-F, Liau J-C, Lee C-S, Chiu C-Y, Martel J, Lin C-S, et al. (2017) Isolation, Culture and Characterization of Hirsutella sinensis Mycelium from Caterpillar Fungus Fruiting Body. PLoS ONE 12(1): e0168734. doi: 10.1371/journal.pone.0168734

標高3000mの過酷なチベット高原の環境を手本とし、温度、水質、酸素量、湿度、換気、栄養条件まで細かく管理。サプリメントなどの安定供給が可能な時代になっているのだ。

菌糸体を培養するタンク

大規模培養が開始されたのは2004年。最初は小さなタンクで菌糸体を培養し、菌が増えるにつれて大きなタンクに移行させる。

Information

問い合わせ/ロート製薬株式会社
TEL:0120-045-610 24時間受け付け(年末年始除く)
https://jp.rohto.com/