肩こりに梅干し、腰痛なら長芋。東洋医学的・カラダの痛み解消術。

湿布や痛み止めに頼ることも大事。でも慢性化しつつあるなら、東洋医学的治療法も試す価値あり。ゆっくりと健康要素のバランスを整え、肩こり・腰痛・膝痛の原因に、根本からアプローチ!

取材・文/石飛カノ 撮影/内田紘倫 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/村田真弓 監修/河尻澄宏(東京女子医科大学附属東洋医学研究所准教授)

初出『Tarzan』No.918・2026年1月22日発売

東洋医学で肩こり・膝・腰を養生できる食材
教えてくれた人

河尻澄宏(かわじり・すみひろ)/東京女子医科大学附属東洋医学研究所准教授。順天堂大学大学院、UCLAを経て漢方の道へ。専門は漢方全般、脳神経内科・内科全般。漢方を軸に頭痛、脳神経系の治療に注力。女性特有の不調などにも対応。

原因は気・血・水と五臓のバランス。

古代中国の人だって肩こり・腰痛・膝痛に悩まされていたに違いない。ならば、東洋医学的な対策も必ずあるはず。東京女子医科大学附属東洋医学研究所准教授、河尻澄宏さんに伺ってみた。

「東洋医学には気・血・水という健康を支える3要素と五臓(肝・心・脾・肺・腎)という心身を動かす5つの概念があります。簡単に言うと肩こりは気の流れが悪い“気うつ”、血の流れが悪い“瘀血(おけつ)”という状態。さらに五臓で言うと“肝”の異常が考えられます。腰痛は五臓のうちの“腎”の機能が低下している状態。膝痛は腎虚と同時に気・血・水のうちの水が滞る“水滞”が考えられます」

気うつは不安感や喉が詰まったような感覚、肝の異常は精神的にイライラしやすい状態。瘀血は血流低下だけでなく、目の下のクマやあざができやすい、お腹が張るなど別の症状も合わせて判断する。

さらに腎虚は生命エネルギーが減ってヘソから下の骨や筋肉、泌尿器系臓器の機能が低下し、水滞は体液の調節が不全で膝に水が溜まるといった症状に陥りやすい。

すべては健康要素のバランスの乱れが原因。ならば整えるまでだ。

生命活力の原動力、気・血・水

肩こり・腰痛・膝痛の原因

1.生命活動の原動力不調を改める食材で、美味しく養生。

東洋医学の不調対策として最も手軽に取り入れられるのが食事による養生。

「肩こり、腰痛、膝痛すべてに共通して有効な食材はニンニクやニラ、玉ネギやショウガなどカラダを温めるもの。冷たいものを避けて血流を促すこうした食材を積極的に摂りましょう」

これを踏まえたうえで肩こりには酸味のある梅干しや酢、香りの良いシソやミントなどがおすすめ。

「酸味は五味の中で肝の働きを促し、香りの良い食材は気の巡りを促します。また、腰痛には腎の働きを補う黒い色の食材やオクラや長芋などのネバネバ食材、膝痛を引き起こす水滞の対策としては利水を促すナスやキュウリ、きのこ類などがおすすめです」

とりあえず、これらの食材で今晩、餃子&汁物など作ってみては。

玉ねぎ・生姜・ニラ・ニンニク

肩こり・お酢、梅、ミント、シソ

腰痛・長芋、オクラ、黒豆、わかめ、ひじき、黒胡麻

膝痛・キノコ類、なす、きゅうり

2.漢方薬を1か月試す。

気うつの肩こりには半夏厚朴湯や加味逍遙散、瘀血には桂枝茯苓丸が対応。肩から背中に凝りが目立つ場合は葛根湯、首から横方向に凝りを感じるなら大柴胡湯などの柴胡剤が有効だという。

腰痛で冷えがあるなら八味地黄丸、火照りがあるなら六味丸、水太り体型の膝痛には防已黄耆湯、急性の腫れには越婢加朮湯などに効果が期待できる。

「服用は基本的に1日2〜3回。1か月で効果は出ます。効果が出なければ漢方専門医に相談を」

肩こり・腰痛・膝痛に効く漢方

3.運動はゆったりと。

東洋医学の養生では基本的に激しい運動を推奨していない。あくまで気・血・水のバランスを整え、偏った状態をちょうどいい塩梅に戻すことが目的。そこに息切れするような運動は必要ないからだ。

「肩、腰、膝痛で共通のおすすめはヨガや太極拳、ストレッチなどの運動。とくに冬は万物が活動を控えてエネルギーを蓄える“閉蔵(へいぞう)”の季節。動物が冬眠するように人間もあまり活動的になる必要がない時季なので運動するなら無理のない範囲で行ってください」

4.ツボ刺激で痛み軽減。

カラダを巡る気・血・水の通り道のことを“経絡”という。全身には計14本の経絡が通っていて、そのライン上にあるのが、いわゆるツボ。そのツボを刺激することで歪んだバランスを整えるのが東洋医学が得意とする鍼灸治療だ。肩こり、腰痛、膝痛緩和に代表的なツボは上に示した通り。

「慢性的な凝りや痛みを緩和するときは患部の近くのツボを刺激する方が有効です。押し方は指の腹で2〜3秒かけて押し込んで3秒間押し続け、2〜3秒かけて離す。これを5回ほど繰り返します。リラックスできる環境や時間帯で行うと習慣化しやすいと思います」

早速、マイ・ツボの習得を。

前面のツボを記載

【血海(けっかい)】
膝のお皿の上部内側から指3本分上にあるツボ。婦人科系の症状に効くほか、変形性膝関節症の痛みにも対応。

【梁丘(りゅうきゅう)】
膝のお皿の外側から指3本分上にあるツボ。膝の痛みのほか、胃腸の不調にも有効なツボとして知られる。

背面のツボを記載

【風池(ふうち)】
頭蓋骨の後ろ側、髪の生え際の斜め下にある凹んだ部分。肩こり、頭痛、眼精疲労などにも有効とされている。

【天柱(てんちゅう)】
風池よりやや内側下方にあるツボ。首の後ろを覆っている僧帽筋と頭の境目にある、筋肉の外側のくぼみ。

【志室(ししつ)】
肋骨の一番下側の縁のライン上にある。左右の手でそのラインを挟んだとき親指がちょうど当たる部分。

【大腸兪(だいちょうゆ)】
腰骨の一番高いところを結んだライン上にある。そのライン上で背骨から左右に指2本分外側にあるツボ。

【委中(いちゅう)】
膝の裏側の真ん中。膝を軽く曲げたときにできるシワの中央部分にあるツボ。腰背部の不調の特効穴として有名。