〈マウンテンマン〉森に包まれ、山の恵みから英気を養う。

住所はあえて明かさない。地図の座標だけを頼りに札幌市内を行くと、〈mountainman〉は、意外な場所に突如として現れる。
市街地からさほど遠くないのに、すっぽりと森の木々に囲まれ、空気の密度がひときわ濃く感じられる場所。ここで味わえるのは、裏山の畑で採れる季節の野菜や、北海道産の肉を使い、山暮らしの知恵をスパイスにした料理たち。食事と一緒に、森林浴やサウナも楽しめる、プリミティブなファームレストランだ。

2021年にオープン。当初はハンバーガーなどの軽食を中心に提供していたが、昨年、この環境に魅了されたシェフ澤征伸さんを迎えてからは、メニューをブラッシュアップし、ランチ、ディナー共にコースで味わえるようになった。
建物の裏手には、バーベキューテラスやサウナがあり、無農薬で野菜を育てる畑が広がる。調理や冬の暖房に使う薪には、裏山で間伐したものも。冬期間、深い雪に覆われるこの場所には、昔ながらの山暮らしの知恵が満ちている。貸し農園もあり、農業体験施設として自然体験の場を提供。サウナもその一環だ。
もともとフランス料理の世界で経験を積んできた澤さん。その技術を活かしつつも、「今はフレンチにこだわっていません。この環境とここにある食材を使って、この場所を表現する料理を目指しています」と話し、畑作業にも汗を流している。

使用する野菜は裏手の農園で無農薬・有機栽培するほか、近隣の農家からも取り寄せる。その力強い味わいを最大限に活かすよう澤さんは調理する。

山や川に囲まれ、木々の中に佇むファームレストラン。メインキッチンは、エントランス横のエアストリーム。
「無農薬で野菜を育てるのは簡単ではありません。でも、この土地では代々、そうやって人の口に入るものを育ててきました。その環境は守り続けたい」と澤さん。自ら野菜を育てるようになって、食材への意識も変わったという。「やはり、少しも無駄にしたくないですし、この美味しさを余すところなくお客さまに伝えたいという思いが強まりました。食材に対する愛情は、この場所に来てからさらに深まりましたね」。
畑の一角でエディブルフラワーを栽培し、洗練されたフレンチの要素も取り入れ、料理に彩りを添える。

薪火BBQコースは1人前4,500円。当日までの要予約。
料理は、野菜たっぷりの前菜に、サーモンのグリルやビーフハンバーグ、鹿肉のロティから選べるメインが付いた「ランチセット」(2,500円)、ゆっくり時間をかけて食事を楽しむ「森ノDINNER」(11,000円〜)のコースなど。サウナで汗を流した後の「サ飯」としても人気なのが、テラスで食べる「薪火BBQコース」だ。
スイス製のヤグーナファイヤーボウルで薪を焚き、鉄板の上でスペアリブや野菜などを豪快に焼く。炭火のバーベキューとはひと味違った香ばしさが楽しめる。薪でじっくりと加熱した鉄板で焼くことで、肉の旨みをしっかりと閉じ込めながら、余計な脂を落とせるのもありがたい。
食後のデザートには、枝に刺したマシュマロ。薪で炙れば、焚き火気分も味わえる。

テラスで燻す自家製ベーコン。
ここでは、薪の火もスパイスの一つ。バーベキューだけでなく、さまざまな料理に使う自家製ベーコンも薪で火を入れる。
「通常のスモークよりもしっかりウッドの香りが付くので、肉にハーブやスパイスで下味を付けていません。塩と砂糖を軽く振るだけで、肉の味わいが濃いベーコンに仕上がります」と澤さん。余計な味に頼らず、この土地から切り出した薪が何よりの調味料だ。
自然の中に身を置き、木々の香りとともに澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込む。大地の恵みで胃袋を満たせば、体中の細胞が喜ぶはず。
札幌市内にあって自然体験ができるこの場所なら、思い切った旅行でなくとも、出張の合間やいつもの週末に、魂をときほぐす時間が持てるだろう。

マウンテンマン(mountainman)
⚫︎住所非公開。TEL 011-581-1100。営業時間 11:00~16:00(5月〜11月の土日・祝日は8:30〜16:00の朝食営業あり)、金・土のディナー19:00一斉スタート(3日前までの要予約)火水休。https://www.mountainman-cr.com/
〈ゴーシェ〉ハンターでもあるシェフが解き放つ、生命のエネルギー。

本場フランスで研鑽を積んだ小鹿シェフが魅了されたのは、素材の力を愚直に引き出すビストロ料理と伝統的な肉加工技術(シャルキュトリー)だった。帰国後、狩猟免許を取得し、エゾシカやヤマバトなどの野生動物と対峙する日々を送る。
「自分で銃を撃ち、命を仕留めることで、肉の1g、血の1滴まで無駄にできないという覚悟が決まるんです」
そう語る小鹿シェフの言葉通り、提供される料理には一切の妥協がない。「命を余すことなくいただく」という哲学のもと、命の恵みを昇華させる姿勢こそが、この店の料理に宿る圧倒的な力強さの源泉だ。
席に着いたら、まずは「自家製シャルキュトリーの盛り合わせ」(2,580円〜/2人分〜)を頼みたい。エゾシカのモルタデッラやテリーヌなど、部位ごとの食感と豊かな脂の旨味があふれるプレートに、体に優しく染み込むナチュールワインを合わせれば、身体に眠る野生のスイッチが静かに押し込まれていく。
メインディッシュの「エゾシカのロティ」は、まさに真骨頂。アロゼ(溶かしバターを回しかける技法)を繰り返しながら約50分かけてじっくり火を入れた赤身肉は、息をのむほど美しいロゼ色に染まる。一口噛み締めれば臭みは一切なく、しっとり柔らかい。北の大地を駆け巡った高タンパク&低脂質な野生の滋味が、カラダにダイレクトに染み渡っていく。

「エゾシカのロティ」は、ハンターシェフの神髄が宿る一皿。

「強い体をつくる」という理屈を超えて、食べる行為そのものが血を巡らせ、身体を内側から熱くする。札幌の夜、本能を解き放つ至高の食体験がここにある。

ゴーシェ(gaucher)
⚫︎北海道札幌市中央区南3条西8丁目7 大洋ビル2F。TEL 011-206-9348。営業時間 17:00~22:00(L.O.21:00)。火休。
https://www.facebook.com/gaucher2013/
〈ジンギスカン羊飼いの店『いただきます。』〉鮮度と熟成が叶える、羊肉パワーの真骨頂。

希少な高タンパク部位サガリ(手前・1,850円)と鉄分とビタミンが豊富なレバー(1,400円)。鮮度抜群で臭みがなく、濃厚な甘みと旨味が特長のレバーは、ファンが多い一品。
旅先でのコンディショニングに妥協したくないトレーニーなら、札幌で絶対に訪れるべき一軒がある。自社牧場から直送される最高峰の純血サフォーク種を味わえる『ジンギスカン羊飼いの店 いただきます。』だ。
ここで提供されるのは、一度も冷凍せず、5日間の枝肉熟成と2日以上のチルド熟成を経て、最高の状態で切り出される「生の羊肉」。脂身が少なく、タンパク質が豊富なウデ・モモ・ヒレといった赤身肉(メニュー名「ジン」)は、高タンパク・低脂質を追求するカラダ作りに最適だ。さらに、オレイン酸を豊富に含むロースや肩ロースは、肉本来の深い旨味と上質なエネルギーで身体を満たしてくれる。

道産羊肉は焼きすぎないほうが、旨味を感じられるのだそう。モヤシやタマネギも北海道産を使用。
飼育・処理・調理まで一貫して手がけるからこそ、徹底されているのが「命を丸ごと無駄なくいただく」という哲学。羊の成長段階(5段階)に合わせて厳選した牧草と飼料を与え、丹精込めて育て上げられた肉は、食べた翌朝の胃もたれとは無縁の軽やかさだ。
命のエネルギーをダイレクトに取り込み、カラダの内側から力強さをチャージする——。これぞ、大自然の恵みを味わう最高のコンディショニング食だ。

『いただきます。』の⾃社牧場は、札幌から車で約1時間ほどの距離にある由仁町にある。約900頭のサフォーク⽺を飼育し、⼀頭⼀頭の⽉齢や良好な成育状態を⾒極めて最⾼のタイミングで出荷される。

ジンギスカン羊飼いの店『いただきます。』
⚫︎北海道札幌市中央区南5条西5丁目1-6。TEL 011-552-4029。※事前予約がおすすめ。営業時間 LUNCH 11:30~14:30(L.O14:00) DINNER 16:00~23:00(L.O22:30)、日のみ16:00〜22:00(L.O21:30)。無休(12/31・1/1は休業)。https://xn--u8jf3af20ad.net





