札幌市街から定山渓へ。絶景を駆け抜ける、秋の極上「ご褒美温泉旅ラン」。

自分の足で街の空気を感じ、たっぷり汗を流していただく北海道グルメは格別の味わいだ。札幌市街地から豊平川沿いを上流へと向かい、目指すは定山渓温泉。距離もペースも自由自在、真っ赤な紅葉と極上の温泉が待つ最高の「旅ラン」をご案内しよう。

text: Takuryu Yamada photo: GENYA

旅先でローカルと交わる。札幌の奥座敷を目指す旅ラン。

ランのスタートは、地下鉄南北線真駒内(まこまない)駅。札幌から地下鉄で18分。ここを起点とする札幌ランナーも多い。ランのスタートは、地下鉄南北線真駒内(まこまない)駅。札幌から地下鉄で18分。ここを起点とする札幌ランナーも多い。

なにも観光スポットをめぐり、名物グルメをいただくだけが観光ではない。自分の足で街と自然のグラデーションを感じ、思い切り汗を流していただく北海道グルメはその分、うまい。これも旅ランの醍醐味である。

今回提案するのは、札幌市街地から豊平川に沿って、名湯・定山渓温泉を目指すルートだ。「ランと温泉」。なんといい響きだろうか。普段のランニングは「ランと銭湯」がせいぜいだが、旅先でのランとなると、特別な高揚感がある。せっかくなら、地元のランセッションにお邪魔してみるのもいい。

今回、旅ランをセッションしたのは、地元札幌で20年の歴史を持つランコミュニティ〈SAKU.AC〉。監督を務める作田徹さんは〈丸井今井〉の実業団選手として活躍し、国際ウルトラランナーズ協会(IAU)主催の100km世界選手権で日本代表の経験も持つ生粋のランナーだ。コミュニティには、シリアスランナーからファンランナーまで約60人のメンバーが在籍し、北の大地を駆け抜ける歓びを共有している。

左が監督の〈SAKU.AC〉作田徹さん。右の市町耀大(ともひろ)さんは、小樽商科大学4年生。2024年9月の北海道学生選手権5000m、10000mで優勝し2冠を達成したエリートランナーだ。

街と自然のグラデーションを楽しむ定山渓ルート。

地下鉄南北線真駒内駅から定山渓温泉へと向かうこのルートは、豊平川に沿って次第に街から外れ、深い自然へと向かっていく。

「札幌市街地からは、岩見沢方面、千歳方面、小樽方面と、20〜30キロの走りごたえのあるルートがいくつか取れます。なかでも定山渓温泉ルートは、比較的平坦な道のりが続き、何よりゴールが温泉とあって、旅ランにはもってこいのルートです。10月にもなれば、定山渓に近づくにつれて見事な紅葉がランナーを出迎えてくれますよ」と作田さん。

なにも20キロの道のりを、タイムを競って走るわけではない。気になる立ち寄りスポットがあれば、どんどん寄り道していきたい。それが観光も兼ねた旅ランのいいところ。

真駒内駅からはしばらく住宅街を走る。平坦な道のりが続き、北海道スケールの木々が林立する、走っていて楽しいロード。

作田さんおすすめの、最初の休憩ポイントは、コープさっぽろ藤野店。北海道札幌市南区藤野3条6丁目2-1

真駒内駅から走り始めて30分ほど。立ち寄ったのは札幌軟石の石切場跡地を公園にした〈石山緑地〉だ。テニスコートや遊具広場がある北ブロックから南ブロックへ足を踏み入れると、切り立った岩肌の造形美に目を奪われる。

〈石山緑地〉は、北海道を拠点に活動する5人の彫刻家で構成された造形集団〈CINQ(サンク)〉が構成・設計。大自然と溶け合っている。コロシアムのような〈ネガティブマウンド(石の広場)〉にて。北海道札幌市南区石山78-24

〈石山緑地〉はパブリックアートの数々も一見の価値あり。ジャングルジムのような赤いオブジェは〈赤い空の箱〉。

藤野の市街地を抜け、次第に緑が増えてくる国道230号を突き進む。急勾配がなく、まっすぐに伸びるロードが北海道のスケールの大きさを感じさせてくれる。紅葉の最盛期に真っ赤に染まるという緑は、さぞ美しいのだろう。

定山渓温泉に向かってひた走る。道幅も広く、遠くに山を望むスケール感は最高に気持ちい!ラントークをしながら走るグループランで、あっという間に定山渓に近づいた。

豊滝除雪ステーション(旧・道路情報館)には、自販機やトイレがあって、距離的には定山渓前の最後のひと休みにちょうど良い。北海道札幌市南区豊滝424−1

国道230号沿いにある豊滝除雪ステーション(旧・道路情報館)までやってくると、定山渓温泉まであと少し。ここも安全な休憩スポットとして使えるので、無理なくマイペースに距離を刻んでいける。

極上のソフトクリームと、開湯160年の名湯というご褒美。

定山渓ランのご褒美 〈LOCALE-JZK〉のアイス

ご褒美の北海道グルメは、〈LOCALE-JZK〉のソフトクリーム。

定山渓温泉の湯に浸かる前に立ち寄って欲しいのが、ソフトクリーム専門店〈LOCALE-JZK〉だ。オーナーのニール・ハートマンさんは、カリフォルニア州サンディエゴ出身。高校を卒業して1991年から日本で暮らし始め、スノーボードビデオグラファーの草分け的存在としても知られる写真家・映像作家である。

ここで味わえる〈ソフトクリーム〉(600円〜)は、江丹別の伊勢ファーム直送、グラスフェッドミルクを100%使用した濃厚な味わい。イタリア製ソフトクリームマシン〈カルピジャーニ〉で抽出される〈ダブルショットアフォガート〉(650円)は、ランで火照ったカラダをクールダウンしてくれる。

定山渓ランのご褒美 〈LOCALE-JZK〉のアイス ピスタチオフレーバーを食べている

自家製の塩ピスタチオ味は人気のメニュー。定山渓ラン常連の市町さんのお気に入り。

ほかにも〈ケサディーヤ〉(1500円)や〈ミートパイ〉(850円)など、小腹を満たすメニューも充実。ニールさんは札幌国際スキー場のカフェ〈SKS INTERNATIONAL〉も経営しており、オフシーズンはキッチンカーでもその味を楽しめる。

そしていよいよ、ゴールの定山渓温泉へ。開湯160年の歴史を持ち、「札幌の奥座敷」として知られるもう一つの顔は、札幌のランナーにとっては、ランセッションの汗を流すオアシスだ。

定山渓温泉の入り口にある〈足のふれあい太郎の湯〉

定山渓温泉の入り口にある〈足のふれあい太郎の湯〉。タオルの自動販売機もある無料の足湯。

「定山渓」という名は、開祖である修験僧の美泉定山に由来する。この地の美しい渓谷美などにちなんで自ら「美泉」という苗字を名乗っただけあって、その自然は息を呑むほど美しい。春は鯉のぼりと桜、夏はイルミネーション(夏灯路)、秋は紅葉、冬は雪見温泉と、四季折々の表情を見せる。特に紅葉の名所として名高く、10月中旬から見頃を迎える。

路線バスで賢く距離調整。現地でちょいランも正解。

秋の紅葉は定山渓名物。温泉街の眺望がご褒美だ。定山渓エリアには10数軒の日帰り温泉施設があり、ラン後の湯めぐりも楽しめそう。

なにも、最初から20キロのルートをとらなくてもいい。3〜5キロのファンランなら、札幌市街地から約40分、定山渓まではバスで直行してしまおう。現地で温泉施設に荷物を預けたら、周辺の自然をラン。温泉に入り、お土産を買って日帰りするだけでも十分すぎるほど贅沢だ。

もう少し走りたいなら、定山渓をゴールと設定して〈じょうてつバス〉で距離を調整して途中下車するのもスマートな選択だ。例えば〈豊滝〉停留所までバスで行けば、果樹園〈アルシェフェルム〉で夏はフルーツ狩りやバーベキューもできる。お目当てのカフェやローカルグルメを見つけながら距離を刻んでプランするのも楽しい。

〈定山渓温泉 湯の花〉の看板

〈定山渓温泉 湯の花〉。日帰り湯は1,180円。サウナや岩盤浴、飲食コーナーもあるので、たっぷりリラックスして札幌の観光に向けて英気を養おう。

たっぷり汗を流し、名湯に浸かってカラダをリカバリーしたら、帰路は路線バスが便利だ。〈定山渓温泉 湯の花〉は作田さん御用達の温泉。目の前のバス停〈定山渓車庫前〉からは、真駒内駅を往復する送迎バスも発着しているので、帰りの体力は気にしなくていい。

距離も、ペースも、立ち寄る場所もすべて自分次第。もちろん事前に宿を予約し、荷物を送っておくのも賢い選択。札幌から定山渓へ。秋の風を感じながら、札幌で旅ランの醍醐味を感じてほしい。