
「HOKA FLYLAB」は二階建て。一階は「Tecton X 4」の展示エリアと試し履きコーナーが併設。2階はDJブースと軽食やジュースが楽しめるカフェ。
UTMB Mont-Blancの大会期間中、現地には数多くのブースが並び、さまざまな新作シューズが紹介される。レースの舞台であると同時に、大規模な見本市としての顔も持っているのだ。シャモニーに集まったランナーやメディア関係者の間では、「何がよかったか」「〇〇の最新作を履いている人を見た」といったシューズ談義が、日々の話題になる。
今回、HOKAがお披露目したのは「Tecton X 4」。Tectonシリーズとは、2022年に登場した、カーボンプレートをブランドが初めて搭載したHOKAのトレイルレーシングシューズだ。一言でいえば、山道を“速く走る”ための一足。その4代目となるのが「Tecton X 4」だ。
さっそく、シャモニーを走ってみた。

解体することで、上からニットゲイター、アッパーの素材Matryx® Micro、PROFLY™ Xを構成するカーボンプレートと高反発フォーム、Vibram® Megagrip Litebaseのソールなど、各々のフォルムがわかる。
8月26日の朝6時45分、UTMB Mont-Blancのレースを2日後に控えたシャモニーで、HOKA主催の「Tecton X 4 Shakeout Run」が開催された。集合場所は、シャモニー中心部のモンブラン広場に設けられた巨大な特設ブース「HOKA FLYLAB」。HOKA所属アスリートのHayden Hawks(ヘイデン・ホークス)も参加し、5kmほどをイージーペースで走るという。

シェイクアウトランの参加者たちの足元は、「Tecton X 4」または「Speedgoat 7」。地形や好み、用途によってシューズを履き分けるのも楽しみの一つ。
参加者は、世界各国から集まったランナー(中にはUTMB出走者も)に、ランニング系のインフルエンサー、メディア関係者、各国のHOKAのスタッフたち。まずは「HOKA FLYLAB」でシューズについてのブリーフィングが行われ、「Tecton X 4」の開発にも携わってきたHayden Hawks自ら、思い入れのあるレーシングシューズについて語ってくれた。
Hayden Hawksが語る「Tecton X 4」。

HOKA所属のフランス人のトップトレイルランナーThibaut Garrivier(写真左)。 2021年 CCC 優勝し、2023年 UTMB 6位 入賞を果たした。Hayden Hawks(写真右)と。
「HOKAに所属して10年。Tectonシリーズは初代からX 4まで、すべて愛用してきました。2024年のCCC 100Kで優勝し、Western Statesで表彰台に上り、Black Canyon 100Kでも優勝できたのは、X 2.5のおかげです。シャモニーの山岳地帯からアメリカの砂漠まで、異なるタイプのレースで結果を出せたことが、Tectonシリーズの汎用性を証明していると思います。
X 4で特に気に入っているのは、安定感。2.5がフォームの『上に乗っている』感覚だったのに対し、X 4は『フォームの中に身体が収まっている』ように感じるんです。初期プロトタイプのテストにも参加し、かなりの距離を使って試走しましたが、2.5と3の良さを受け継ぎながら、さらに進化を遂げています。もし、今週末のUTMBを走るなら、間違いなくX 4を選んだと思います」
Hayden Hawksは、米国ユタ州出身のプロトレイルランナー。スピードを武器に、特に下りで強さを発揮し、レース後半でもペースを落とさない走りが持ち味だ。その攻めの走りは、まさにTectonシリーズを体現しているかのよう。

「Tecton X 4 Shakeout Run」でのHayden Hawksと参加者たち。Hayden着用のアイテムは、HOKA所属のランナーたちが、実際のレースで着用していたものと同じ。
彼は、「Tecton X 4 Shakeout Run」では、参加者の後方をジョギングペースでゆったり走りながら、ランナーたちとの交流を楽しんでいた。筆者も実際に「Tecton X 4」で走ってみると、まず感じたのはその圧倒的な軽快さ。トレイルシューズでありながら、平坦な路面でも足運びにストレスがなく、自然にスピードに乗っていく感覚がある。グリップ力もしっかりと感じられ、テクニカルな下りでは、さらにその真価を発揮するに違いない。
今回、HaydenはUTMB本戦には出場せず、HOKAチームのサポートとして家族とシャモニーを訪れているという。レース後にはゴールエリアでHOKAのアスリートたちを迎え、日本の宮﨑喜美乃選手とハグを交わすなど、チームを献身的に応援する姿も印象に残った。
製品開発を指揮したBekah Broeのこだわり。
また大会期間中、HOKAのパフォーマンスフットウェア部門で製品開発を統括するシニア・ディレクター、Bekah Broe(ベカ・ブロー)に話を聞く機会を得た。シューズのコンセプト設計から素材や構造の検証、ランナーからのフィードバックまで、ロードとトレイルでパフォーマンスシューズの開発を幅広く指揮する人物だ。

Bekah Broeは、2021年にHOKAに加入。自身もランナーとして走りながら、パフォーマンスシューズの開発に携わる。2024年より現職。
「Tectonシリーズに関しては、X 2.5、X 3、X 4に携わってきました。X 4では、カーボンプレート、高反発フォーム、レース向けの形状設計をひとつのシステム、PROFLY™ Xとして組み合わせました。着地ではクッション性と安定性を、蹴り出しでは反発性と推進力を発揮し、よりスムーズに前へ進めるよう設計しています」
さらに、「Tecton X 4 Shakeout Run」で筆者が感じた軽快さについては、こう語ってくれた。
「Matryx® Microという素材をアッパーに採用したことで、大幅に軽くなりました。この素材は、軽いだけでなく、摩耗への強さ、水はけのよさ、通気性の高さなど、素晴らしい機能を持ち合わせています。軽さについては、ソールにも工夫があります。Vibram® のMegagrip Litebaseを採用することで、グリップ力を保ちながら軽量化することができました」

「Tecton X 4」のクッショニングがわかる展示。プレートを搭載したレースシューズを用いた戦略は長距離には必須事項。UTMBではエイドで履き替えるランナーも多数。
「また、素材、プレート、ソールを個別に進化させるだけでなく、それぞれがどう呼応し、走行中に機能するかをシステムとして突き詰めたことが、X 4の大きな進化です。この検証には、多くのランナーやアスリートが協力してくれました。シャモニーという舞台で発表できて、嬉しく思います」
UTMB Mont-Blancという、トレイルランナーにとって夢の舞台で発表された「Tecton X 4」。そこには、シューズ開発者の飽くなき探求心と、トップアスリートたちの実走経験から得られたフィードバックが凝縮されている。ぜひ実際に足を入れ、その走りの違いを体感してほしい。山を速く走る楽しさと可能性を、さらに広げてくれる一足だ。



