水に浸かり、浮かぶだけ。頑張りすぎない自律神経の整え方。
水に浸かるだけで、カラダには陸上とは違う刺激が加わる。水を味方につければ、頑張りすぎずに自律神経を整えることができる。プールや風呂で実践したい、水中運動との上手な付き合い方を専門家に聞いた。
text: Shintaro Kawabe photo: Hiroshi Nakamura
『Tarzan』No.931 on sale August 6, 2026.

©アフロ
教えてくれた人
大槻毅(おおつき・たけし)/流通経済大学スポーツ健康科学部教授、同学部長。博士(体育科学)。専門は運動生理学。動脈硬化の予防や、中高年の健康づくりに役立つ運動の効果と実践方法について研究する。
水圧で静脈還流が促進される。だから、自律神経に効く。
水に浸かると、カラダには水圧がかかり、脚などに溜まった血液が心臓へ戻りやすくなる。これが静脈還流。心臓に戻る血液量が増えると、心房からANPと呼ばれるホルモンの分泌が促される。ANPには、体内の水分量や血圧を調整し、交感神経の働きを鎮める方向に作用する可能性がある。
水中で副交感神経が働きやすくなる背景には、こうした水圧による循環の変化が関わっていると考えられる。プールではできるだけカラダの広い範囲を水に浸すのがポイントだ。
ただし運動強度は軽めに、心地よいペースで。
自律神経を整えたいなら、水中で頑張りすぎないこと。運動強度が上がるほど交感神経が働きやすくなり、副交感神経が戻るまでにも時間がかかる。
一方、息が上がらない程度の軽い運動なら、カラダへの負担を抑えながら気持ちよく動ける。目安は、会話ができるくらいのペース。水中ウォーキングやゆっくり泳ぐなど、疲れを残さない強度で行うのがよい。長く行えばいいわけではなく、時間よりも強度を意識。水の流れに身を任せるような感覚で、心地よいペースを保とう。
水中運動を継続することで、効果はアップする。
軽い水中運動の後には、副交感神経の働きを示す指標が一時的に高まる。大槻先生らの研究で行ったのは、水中ウォーキング15分、水中ジョギング10分、仰向けで浮く時間10分。いずれも、楽から非常に楽と感じる程度の強度だった。
定期的に運動を続けることで、安静時の副交感神経の働きが高まることは、多くの研究で報告されている。
プールでも、息が上がらない程度の水中ウォーキングなど、無理なく心地よく続けられる方法を見つけることが大切だ。
気をつけるべきは水中の温度。
水中で心身をゆるめるうえで、温度設定は見逃せない。水が冷たすぎると、体温を保とうとして交感神経が働き、血管も収縮しやすくなる。一方、熱すぎる水はカラダへの刺激が強く、のぼせや脱水を招くことも。
その日の体調によって感じ方も変わるが、目安は入っていて心地よく、カラダが冷えない温度。運動をするプールは30度前後が一般的だが、冷えを感じる水温は避けたい。
長く浸かればよいわけではなく、寒さや熱さを感じたら早めに上がり、水分補給も忘れずに。
特別な施設や本格的な運動は不要。日常生活への取り入れ方。
泳ぎが苦手でも、近所のプールをゆっくり歩くだけで、水圧や浮力の作用は得られる。棒状の浮き具、アクアヌードルが使えるなら、運動後に仰向けでぷかぷか浮かぶのもおすすめ。自宅では、40度以下を目安に、熱さを感じすぎない湯に浸かるだけでも効果は得られる。
時間や方法にこだわりすぎず、自分が気持ちいいと感じるやり方を選ぶべし。まずは無理なく試してみて、日常の中に水と触れ合う時間をつくってみよう。


