
※1 (株)ナレッジワイヤ調べ、PubMed・医中誌WEBに掲載された原著論文に基づく調査結果
日本人を対象とした食事・栄養・サプリメント等「食べることができるもの」の介入による老化に関する臨床試験において、ビフィズス菌配合ヨーグルトを含む介入の結果、老化速度(評価指標にDunedinPACEを使用)の抑制が日本で初めて示された。(2026年4月9日および7月1日調査実施)
――まず、ビフィズス菌について教えてください。
菱田:ビフィズス菌と乳酸菌は、どちらも「おなかにいい菌」と一緒にされがちですが、生物の分類では「門」から異なります。ヒトとクラゲほど遠い関係にある、別の生物なんです。乳酸菌が主に乳酸を作る細菌類の総称なのに対し、ビフィズス菌は乳酸に加えて酢酸などの短鎖脂肪酸も作ります。

この表で動物界と比較して見れば、ビフィズス菌がどれくらい乳酸菌と違う種類なのかがよく分かる。
すんでいる場所にも違いがあります。乳酸菌は主に小腸に、ビフィズス菌は主に大腸にいます。ビフィズス菌は酸素の少ない環境を好み、大腸まで届く難消化性の糖を分解して酢酸などを作るのが得意です。分解する糖や作り出す物質が違うので、カラダの中で担う役割も同じではありません。
ビフィズス菌は、分かっているだけでも100種類以上あります。ヒトのおなかにすむ種類と、ヒト以外の動物のおなかにすむ種類も基本的に異なります。私たちは、ヒトの腸管に特徴的にすむものを「ヒト常在性ビフィズス菌(Human-Residential Bifidobacteria(HRB))」と呼んで研究しています。
老化の坂を転がり落ちるスピードを緩めよう。
――そもそも「老化のスピード」とは?
菱田:実年齢は誰もが同じ速さで重ねますが、老化の進み方には個人差があります。老化とは、年月と共に体のさまざまな機能が少しずつ低下していく過程のことです。そこには、慢性炎症、代謝の乱れ、腸内細菌叢(そう)の乱れなど、いくつもの要因が積み重なると考えられています。

Lopez-Otin et al., Cell. 2023,を参考に作図
「老化における12の因子(Hallmarks of Aging)」は、老化の根本的な原因や特徴を分類した12個の生物学的プロセス。2013年に海外の研究チームが9つの因子として発表、2023年に「マクロオートファジーの障害」「炎症反応の持続」「腸内菌叢の不均衡」の3つを新たに追加した。
人それぞれ異なるこの「老化スピード」は、クルマのスピードメーターにたとえると分かりやすいですね。今どれくらいの速度で老化が進んでいるのか、の可能性を測る指標だと考えられます。

老化スピードは、クルマのスピードメーターのようなもの。
今回使ったDunedinPACE(ダニーデンペース)という指標は、老化スピードを推定する指標として、世界で知られています。血液中のDNAメチル化の情報から、現在の老化の進行速度を推定するものです。DNAメチル化とは、加齢に伴い、血液中のDNAに生じる変化です。加齢や健康状態に伴って、そのパターンが変化することが分かっているんです。

DunedinPACEは、ニュージーランド南島の街ダニーデンで行われた有名な追跡研究から生まれた指標。26歳から45歳までの約20年間を追いかけ、血圧や臓器の働きなど、体の状態を表す複数の数値が「どのくらいの速さで変化していくか」を測り、その進み方を血液のDNAメチル化から推定できるようにした。 Elliott ML, et al. Nat Aging 2021, 1: 295-308.
――どんな研究を行ったのでしょうか。
菱田:対象は50~74歳の男性で、BMI25以上の45名(介入群21名、非介入群24名)です。
全員をランダムに2グループに分け、片方のグループ(介入群)だけにビフィズス菌BB536を含むプレーンヨーグルト(1日100g×3カ月間)を食べてもらいました。ヨーグルトに加え、毎日の食事記録をもとに管理栄養士が個別指導をしました。厳密な食事プログラムではなく、食べ過ぎや間食、加糖飲料を少し控えるといった内容です。運動はウォーキングか室内のステッパーを1日30分、週3日以上。非介入群には普段どおりの生活を続けてもらい、3カ月後に比較しました。
――結果はどうなりましたか?
菱田:何もしない非介入群の人たちに比べ、介入群ではDunedinPACEが有意に低下しました。試験前後での差で見ると、非介入群と比べて介入群では約2.3%、老化のスピードが「低下」する方向に変化したことになります。

Nishimura et al., Aging, 2026 を元に作図
BMI25以上の男性45名(介入群21名、非介入群24名)が対象。ビフィズス菌BB536入りのヨーグルトを食べ、無理のない食事・運動改善を12週間続けたところ、「老化スピード」を示す指標が介入群で約2.3%低下――森永乳業が2026年7月27日に発表した臨床試験の結果。
米国では、摂取カロリーを約25%減らす介入を2年間続け、DunedinPACEが約2~3%低下したという研究があります。期間も対象者も試験方法も違うため、単純に比較することはできませんが、今回の数字はそれと同じ程度の範囲にあります。さらに先行研究では2年間で得られた結果を、今回は3カ月で得られているのは大きい成果だと考えています。今後に期待ができます。
単純計算すれば、2.3%は1年で約8日分の差に相当するイメージですが、この変化が長く続くのか、健康や寿命にどんな違いをもたらすのかは、これからも研究が必要です。
老化に関わる「慢性炎症」とビフィズス菌の関係
――なぜ、ビフィズス菌が老化のスピードを緩めるカギになりえるのでしょう。
菱田:老化との関連で特に注目されているのが慢性炎症です。炎症は感染やケガから体を守るために必要な反応ですが、弱い炎症がくすぶるように続くと、老化の進行やさまざまな疾患に関わると考えられています。その一因として、免疫細胞が炎症を起こしやすい状態に傾くことも知られています。今回我々は、こうした慢性炎症に対するビフィズス菌の可能性を見出しました。
健常成人50人を調べると、腸内のビフィズス菌の割合が高い人ほど、採取した免疫細胞が炎症性物質を出しにくい傾向があったのです。細胞実験で細かく調べてみたところ、ビフィズス菌由来の成分に一度触れた免疫細胞は、後から刺激を受けても過剰に炎症反応を起こしにくくなりました。

Ishihara et al. iScience. 2026を元に作図
老化スピードの臨床試験を説明し得るメカニズムの候補が、ようやく一つ見えてきました。今後はビフィズス菌が生み出すどのような成分が炎症の調節に大切であるのかを突き止め、ビフィズス菌の持つ力を解き明かしていきたいですね。
――私たち人間にとって、ビフィズス菌はどんな存在ですか?
菱田:私の感覚では「パートナー」ですね。ビフィズス菌の中でも、ヒトのおなかにすむ種類のビフィズス菌は、約1,500万年にわたり、ヒトの祖先とともに進化してきたと考えられています。そして今や、赤ちゃんのときから老年期まで、いろいろな形で私たちの健康に貢献しているのです。
私たちが食べたものの一部はビフィズス菌の餌になります。一方でビフィズス菌は、体にとって好ましくないものを減らしたり、役に立つ酢酸などを作ってくれたりする。持ちつ持たれつの関係にあります。
腸内には人それぞれ多様な菌がいて、腸内フローラを構成しています。その中でビフィズス菌はどんな役割を担い、私たちの健康にどう役立つのか。今までの積み重ねと同様に、これからさらに研究を進め、一つずつ解明していくことが大切だと考えています。
Profile

菱田幸宏(ひしだ・ゆきひろ)/森永乳業株式会社 研究本部 バイオティクス研究所 菌体機能研究室 室長。ビフィズス菌の機能性研究に豊富な経験を持ち、特にビフィズス菌BB536株の老化スピード抑制作用に関する研究を主導する。菌体そのものの性質解析から、摂取時の生体への影響、製品化における技術的課題まで幅広く担当している。
Information
問い合わせ先/森永乳業お客さま相談室
TEL:0120-369-577
(受付時間は平日9:00~17:00 ※年末年始を除く)


