ヨーロッパの街並みに溶け込む“工芸品”のような《MERCEDES-BENZ V230》|クルマと好日

アウトドアフィールドに、あるいはちょっとした小旅行に。クルマがあれば、お気に入りのギアを積んで、思い立った時にどこへでも出かけられる。こだわりの愛車を所有する人たちに、クルマのある暮らしを見せてもらいました。

text: Koji Toyota photo: Naoki Honjo

『Tarzan』No.786 on sale May 14, 2020.

6年の時を経て出合った、欧州の“風景”的な一台を道具として愛する。

長い年月を経た町工場の駐車場に停まっているのは〈メルセデス・ベンツ〉の《V230》。“ 道具感”のある、いい面構えだ。オーナーは“ロートアイアン”と呼ばれる鉄工芸を手掛ける中井貴史さん。《V230》のガッチリとしたシルバーのボディは“鉄の塊”を彷彿とさせ、中井さんの佇まいにも、彼の作業場であるこの場所にもしっくり馴染む。

「師匠から独立してすぐにヨーロッパの本場のロートアイアンをじっくり見て回りました。ロートアイアンというのは、細く延ばし、湾曲させた鉄を使って、草木や花々の模様にデザインした繊細なインテリア。門扉や階段の手すり、フェンスなど、ごく当たり前のものとしてヨーロッパの街並みに溶け込んだ“工芸品”なんです」

旅の道中、ロートアイアンと同じようによく目にしたのが《V230》だった。ドイツでもスペインでも、どんな街にいてもこの“鉄の塊”と出合ったという。

「まさにヨーロッパの“日常の風景”というか。いい意味で“ザ・普通”な感じが、ロートアイアンにも通ずるなと。僕は昔からクルマ好きで、18歳の頃に先輩から譲り受けたジムニーを皮切りに12台ほど乗り継いできました。この旅以降、“長く連れ添うなら《V230》”という思いを秘めたまま、気がつけば6年経っていて。こいつが納車されたのが1か月前です。正直、長かった(笑)」

大阪の中古車店〈ゼロカートラブル〉で見つけた念願の《V230》は、あえてパーツ類に簡素なものを選び、意図的にドレスダウンさせる“チープアップ”という手法で仕上げた一台だ。

樹脂パーツやノーマルホイール、それにフロント&バックサイドにステッカーを貼ることでセンス良く“チープアップ”!

「欧州の道端に“転がっている”、あの姿のまんま! もともとは“ヴィトー”というベンツの商用モデルをベースに、乗用車規格に転用しただけあって荷物運搬には長けていますしね。全長4.6mのサイズ感は、完成した作品を運ぶ際にとにかく頼りになる。あと、幸運なことに購入時の走行距離は5.5万km! これはきっと、“ガンガン使ってね!”というクルマの神様からのメッセージでしょう(笑)」

MERCEDES-BENZ V230

ハンドルまわりはウッドパネルを控えめに配置。まさにグッドセンス。

全長4.67m×全幅1.89mの車内は開放的。しかも、商用車ベースだけに2列目&3列目はすべて取り外しも可能。

3列目のアームレストの内側には、折り畳み式のテーブルが隠れている。“荷物を運ぶ道具”から“小さな書斎”に早変わり。

荷室脇の収納には救急セット。包帯など本格的な道具がしっかり入る大きさが、質実剛健が国柄のドイツらしい。

中央天井にはテレビやDVD鑑賞ができる収納式モニターも。

《V230》は直列4気筒。実はその上級グレード、直列6気筒バージョンもあって、こちらは《V280》と呼ばれる

  • 全長4,670×全幅1,890×全高1,850mm
  • 排気量=2,294cc
  • 乗車定員=6名
  • エンジン=水冷直列4気筒DOHC
  • 燃費=7.7km/ℓ(10・15モード)。初代モデルを約120万円で購入。

バーナーで熱した鉄を叩きながら細く延ばしていく。最初の断面は四角だが、徐々に八角形となり、最終的には丸みを帯びる。そんな作業を1日4〜5時間。1週間ほど繰り返していくと大きな門扉が出来上がる。最近はミニマルデザインのポストも作る。

看板も手作り。ロゴは、金属を叩く際に使用する金床“アンビル”がモチーフ。

Owner

中井貴史(なかい・たかし)/1978年、埼玉県生まれ。鉄工芸の専門会社〈ANAP〉の門を叩き、12年修業した後に独立。2013年に〈ベロ アイアン ワークス〉を立ち上げる。2022年には、川越でオリジナルアイアン家具と北欧ヴィンテージ食器を扱うセレクトショップ〈bero弁天長屋〉もオープンした。