湖、湿原、稜線歩き。アルプスを楽しみ尽くす名山へ。|8月の山・白馬岳

季節によって異なる表情を見せる日本の山。その時期だけに出会える風景や体験を求めて、写真家の根本絵梨子さんに毎月おすすめの山と、その歩き方を教えてもらいます。

interview, text: Yuriko Kobayashi photo: Eriko Nemoto

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今月の山 白馬岳
しろうまだけ
| 長野県、富山県、新潟県

標高/2,932m

おすすめコース

1日目
栂池自然園(1時間10分)天狗原(1時間10分)白馬乗鞍岳(40分)白馬大池山荘
歩行時間計:3時間

2日目
白馬大池山荘(2時間)小蓮華山(45分)三国境(50分)白馬岳(15分)白馬山荘
歩行時間計:3時間50分

3日目
白馬山荘(1時間20分)岩室跡(1時間30分)白馬尻小屋(50分)猿倉荘
歩行時間計:3時間40分

思い出が詰まった、愛すべきホームマウンテン。

梅雨が明け、登山シーズン本番を迎える8月は、一年で一番ソワソワする時季。北アルプスなどの高山は9月に入ると秋の気配が漂ってくるので、本当に夏が短い! 登りたい山はたくさんあるのに、時間が足りない……、毎年うんうんと唸りながら計画を練ります。

そんな中で、毎年必ずといっていいほど登るのが白馬岳。日本百名山のひとつに数えられる美しい山ですが、私にとって、これほど思い出深い山はありません。まだ7歳だった頃、山好きの父と母に連れられて栂池自然園から白馬大池へ、そこから白馬岳に登りました。

栂池自然園から白馬大池までの途中、大きな岩と岩の隙間に落ちないよう、用心深く歩いたこと。夕暮れの白馬大池で水切りをしたこと、サンショウウオを見つけたこと。白馬岳へ続く美しい稜線や、そこから見える後立山連峰の雄大な山々に感激したこと。初めて泊まった山小屋が秘密基地のようで興奮したこと。幼い頃の思い出なのに、とても鮮やかに心に残っていて、30歳を目前に再び登った時には、感慨深いものがありました。

もうひとつの思い出は、29歳からの3シーズンを白馬岳の山頂に近い白馬山荘で働いたことです。フォトグラファーとして独立して間もない頃、山をテーマに写真を撮りたいと思っていました。でも駆け出しの私には長野の山に通うお金などなく……。どうしたら長い時間を山で過ごせるかと考えた末に思いついたのが、山小屋で働くというアイデアでした。数ある山小屋の中で白馬山荘を選んだのは、子どもの頃の楽しかった記憶があったからかもしれません。

中判カメラを買って住み込んだ白馬岳で、たくさんの風景に出会いました。朝や夜、それまで知らなかった山の表情を知って、この先、山を撮っていこうと心に決めました。それから9年、毎年白馬岳に登ると、その頃の気持ちを思い出して、今こうして好きな山に登って表現活動ができていることを、ありがたいなと思うのです。

8月の白馬岳は高山植物が咲き誇る、一年のうちで最も美しく、賑やかな季節です。火山であることを実感できる岩々しい道や、のびやかな湿原、どこか北欧を思わせるような湖に、最高に気持ちのいい稜線。下山時には真夏でも雪がとけることのない大雪渓を歩くスリルも味わえます。こんなに盛りだくさんで楽しい山は、そうありません。何度歩いても飽きない、私のホームマウンテンです。

午後からの突然の雷雨に注意して、早出の計画を。

高山植物が最盛期を迎える8月の白馬岳は多くの登山者で賑わうが、標高が高く、天候変化も激しいことから、中級以上のレベルが必要とされる。北アルプス登山が初めての人は、必ず経験者と一緒に入山すること。

夏の白馬岳は午前中に晴れていても午後から急激に積乱雲が発達し、激しい雷雨に見舞われることが多い。森林限界を越えた稜線上では人に落雷することもあるので、13時〜14時頃には山小屋やテント指定地に到着するよう計画しよう。もし稜線上で雷の音が聞こえたら、姿勢を低くして雷雲が通り過ぎるのを待つこと。

晴天時の日中は暑く感じても、稜線上で風雨にさらされると体感温度は一気に低下し、低体温症に陥ることもある。必ずしっかりしたレインウェアと防寒具を携帯すること。

下山ルートの途中にある大雪渓には8月でも雪の上を1時間以上歩くことになるので、軽アイゼンやチェーンスパイクは必携。落石が多いので、歩行中は周囲の音に気を配り、できるだけ長く休憩時間を取らず、素早く行動するのが安心。

おすすめスポット情報

白馬八方温泉 みみずくの湯
JR白馬駅から歩ける場所にある温泉で、電車利用で登山する時には便利。露天風呂からは八方尾根と白馬三山の眺めを楽しめて気持ちがいい。
長野県北安曇郡白馬村大字北城八方5480-1
0261-72-6542
https://www.vill.hakuba.nagano.jp/spots/mimizuku-no-yu/

Sounds Like Cafe
自家製のバンズに肉汁あふれるパティを挟んだバーガーがたまらなくおいしいお店。下山後に食べるとより沁みる。自家焙煎のコーヒーと一緒に。
長野県北安曇郡白馬村北城3020-504
0261-72-2040
https://sounds-like-cafe.com/

おじさんの店
JR白馬駅前にあるレトロなお土産もの屋さん。手作りの「干しあんず(ドライあんず)」は肉厚で、ほどよく甘酢っぱく、他にはない食感と味。登山の行動食や、お土産にも良い。大雪渓を歩く登山者にアイゼンのレンタルもあり。
長野県北安曇郡白馬村大字北城白馬町6140−1
0261-72-2129
https://www.vill.hakuba.nagano.jp/spots/ojisan-no-mise/