太りやすさや疲れやすさにも関係する「腸内細菌」の話。
「体質だから」で諦めていた太りやすさや疲れやすさ、実は腸内細菌が関係しているかも。乳酸菌とビフィズス菌の違いから、加齢による変化まで。知れば、腸との付き合い方が変わる。
text: Kano Ishitobi illustration: Jun Otani expert advisor: Jun Kunisawa
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教えてくれたひと
國澤純(くにさわ・じゅん)/国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 医薬基盤研究所 副所長。医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBN)のヘルス・メディカル微生物研究センター長、腸内環境システムプロジェクトリーダーも兼任する腸内研究の第一人者。
生まれながらの体質は腸内細菌が決めている?
同じ漢方薬を飲んで効く人、効かない人がいるのは中国四千年のナゾというわけではなく、腸内細菌の働きで薬の形が変わる可能性があるから。西洋医学の薬でも薬が吸収される前にある腸内細菌が分解してしまうことで効果が得られないことが報告されている。
これと同様、「個人差」や「体質」で片付けられていたさまざまな違いに腸内細菌が関わっている可能性が指摘されている。太りやすさ、疲れやすさ、ストレスの感受性、アレルギーの有無などなど。
遺伝的背景が同じマウスに異なる栄養素を与えると、健康状態が著しく異なることが多くの実験でも分かっている。つまり、望ましい形で腸内細菌と共存できれば体質改善が叶う可能性があるのだ。
乳酸菌は主に小腸で、ビフィズス菌は大腸で活躍する。
問題です。腸内細菌が棲んでいる場所はどこ?
「大腸!」と言下に答えたあなた。残念! 答えは小腸と大腸。確かに大腸に棲む腸内細菌の数はおよそ100兆個で小腸のそれは約1兆個。大腸の腸内細菌はケタ違いに多いが、次の事実を知れば認識も変わるはず。
「カラダにいい働きをする腸内細菌の筆頭に乳酸菌やビフィズス菌がありますが、これらは菌としての性質がまるで違います。前者は酸素がある環境でも生きられますが後者は酸素があると生きられません。なので乳酸菌は酸素が存在する小腸に、ビフィズス菌は酸素のない大腸に主に棲んでいます」
主に大腸の菌を反映する便の解析で乳酸菌が検出されたら、腸の環境が乱れているサインかも。
乳酸菌とビフィズス菌は似て非なる腸内細菌。
| 乳酸菌 | ビフィズス菌 | |
| 主な棲息場所 | 小腸下部 | 大腸 |
| 酸素があるところでの活動 | できる | できない |
| 主な代謝物 | 乳酸 | 酢酸と乳酸 |
無菌状態で生まれるヒトは母親から菌を受け継ぐ。
子宮の内部は無菌状態、そこから産道を通って生まれてくるプロセスで新生児は母親から腸内細菌を受け継ぐ。これが通説。この説からすると帝王切開で生まれた子どもは母親からの腸内細菌を引き継げる可能性が低くなる。
でも、最近の研究では腸内細菌の引き継ぎのチャンスは出産のみにあらずということが分かってきた。ひとつは入浴時。日本には世界でも稀な浴槽に浸かる入浴習慣がある。子どもと家族が同じ浴槽の湯に浸かることで腸内細菌が引き継がれるという報告がある。
また、寮の同室で生活しているルームメイトたちの腸内環境が似てきたという報告も。こちらはドアノブなどの共有物を介した可能性が。菌は意外と感染(うつ)る?
加齢や生活環境で腸内環境は変化する。
生まれたばかりの赤ちゃんの大腸にはお母さんから受け継いだ多くのビフィズス菌が棲んでいる。
「もうひとつ、母乳の中にはミルクオリゴ糖という栄養が含まれていて、これがビフィズス菌のエサになります。このため授乳期間中はビフィズス菌が圧倒的に多く、ビフィズス菌が作る酢酸のせいで赤ちゃんのうんちは酸っぱいにおいがします」
やがて離乳食がスタートし、徐々に大人と同じ食物を食べるようになると、ビフィズス菌は減っていき、うんちは一丁前に臭くなる。その後は一生を通してビフィズス菌は乳幼児レベルには戻らず、加齢によって減っていく。ただし、己の食生活次第で一定レベルを保てることは心しておくべし。
ビフィズス菌は加齢で確実に減っていく。

門とは生物の分類階級のひとつ。ビフィズス菌はアクチノバクテリア門に属する。離乳前の乳幼児が最も多く保有し、3歳〜40代くらいは低空飛行、高齢者はさらに減少する。
Odamaki et., BMC microbiology, 2016


