漫画『もやしもん』著者・石川雅之さん、“菌”について語る。

腸内には約1000種類もの細菌が暮らし、日々せめぎ合いながら健康を支えている。そんな“見えない主役たち”を人気漫画『もやしもん』で描く石川雅之さんに、菌のキャラクター化の裏側から発酵食品との付き合い方、そして腸内細菌への想いまで聞いた。

text: Kano Ishitobi expert advisor: Jun Kunisawa (National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition, NIBN)

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Profile

石川雅之(いしかわ・まさゆき)/1997年デビュー。『もやしもん』(イブニング・モーニング/講談社)で第12回手塚治虫文化賞マンガ大賞、第32回講談社漫画賞一般部門、第46回星雲賞コミック部門受賞。デジタル作画が主な時代に不撓不屈でアナログ作画を貫く。

もやしもんに登場する菌たちのキャラクター

L.カゼイはA.オリゼーやL.ヨグルティと並ぶ代表的な乳酸菌。『もやしもん』には未登場だが、ブラウティア属菌は日本人の約9割が持っているという“やせ菌”。B.ビフィダムはお腹の調子を整えるビフィズス菌。
©石川雅之/講談社

『もやしもん+』絶賛連載中!

もやしもん一巻

『もやしもん+』(アフタヌーン/講談社)は菌が見える主人公・沢木惣右衛門直保と仲間たちと菌による農業大学を舞台にした物語。実質、主人公は菌たちともいわれている。単行本1巻&『新装版もやしもん』全13巻が絶賛発売中。

勉強して気づく「エラい世界に手を出してしまった」。

連載開始時には『農大物語』としてスタートした『もやしもん』。「もやし」とはさまざまな発酵食品を作る際に必須の麴の元となる「種麴」のこと。

主人公・沢木と周囲の農大生たちが繰り広げるモラトリアムなキャンパスライフに、精緻で多様な菌たちの生態が絡み合う物語。

その第1巻の巻末の「おまけ」で描かれているのが腸内細菌。自分たちの繁栄のみを望み仁義なき戦いを続ける細菌たちの世界で、唯一のユートピアである腸。役割の違う細菌が共生し、腸内環境のバランスがとれているからこそ、この平和は保たれるのだと締めくくられている。

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漫画『もやしもん』で学ぶ、腸内環境の不思議。

菌たちのモブシーンは『もやしもん』の見せ場のひとつ。複雑な菌の働きもシンプルなモブシーンをもってすればズバズバ腑に落ちていく。

作者はさぞや菌や微生物に詳しい人であろうと思いきや、「まったくの門外漢です」と、石川雅之さん。

「実家の近くに大阪府立大学の農学部がありまして、この学校何してるのかなと子どもの頃から思っていました。その後、東京農大を見学して学生たちが発酵を勉強していることを知り、漫画に菌を入れていこうと。そこから大学図書館で醸造や微生物学の教科書を中心に読みまくりました。勉強を始めてから、エラい世界に手を出してしまった、と思いましたね」

顕微鏡写真を参考にしながら、菌を描き分けていく。

腸内細菌だけでも種類は約1000にのぼる。多様性が半端ない菌の描き分けは一体どのように?

「基本的には顕微鏡写真を参考にしています。丸いとか細長いとかそのくらいの違いしかないんですけど。あとは学名などから発想を得ている感じですかね」

確かに、同じ乳酸菌でも棒状の乳酸桿菌と球状の乳酸球菌など、形に違いがある。シンプルなフォルムに目と口と髪型(?)を加えて出来上がりというわけだ。

作中には牛乳でお腹を壊した主人公・沢木がヨーグルトを食べるシーンが登場する。ヨーグルト内の乳酸菌が、「お前のお腹の中に棲んでいる同志を応援してやるからくえー くえー」と呼びかける。なんと頼もしき乳酸菌。

石川さん自身は発酵食品を口にするとき菌のことを考えたりするのだろうか。

「いやいや、そんなことしたら気持ち悪くて食べられない気がしちゃいますね。ヨーグルトは普通に美味しくいただいています。でも、この漫画を描くようになってからお酒を飲むようになりました。それとお味噌やお醬油にこだわるようになりましたね。とくにお味噌は地域によって個性がはっきり分かれているのにどれも美味しいということに驚きです」

もし腸内細菌が見えるなら、何を伝えたい?

現在、51歳。これまで大きく体調を崩した経験はないという。その一方、腸内細菌が喜ぶような食事や運動はしていないとか。

「腸を意識して何かアクションをするということはないですね。でも、考えてみれば、“いつもご苦労さまです”って労いたいですよね。少しは意識しなくちゃ」

最後に、沢木のように細菌が見えてコミュニケーションが取れたとしたら、何を伝えたいですか?

「いいネタがあれば参考にしますので、ご教示ください!」