『弱虫ペダル』作者・渡辺航さんに必要なストレッチとは?

長時間座り続け、前かがみの姿勢で没頭する漫画家の仕事は、カラダが固くなりがち。「積極的に健康を取りにいくようにしています」と語るのは、人気ロードレース漫画『弱虫ペダル』作者の渡辺航さん。サイクリストでもある渡辺さんに、今、必要なストレッチとは?

text: Aya Shigenobu photo: Hiroshi Nakamura

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©渡辺航(秋田書店)2008

Profile

渡辺航(わたなべ・わたる)/漫画家。週刊少年チャンピオンで『弱虫ペダル』、別冊チャンピオンにて『弱虫ペダル SPARE BIKE』を連載中。自身もサイクリストであり、MTBやシクロクロスレースに参戦。プロサイクリングチームの監督も務めている。

神戸貴宏(かんべ・たかひろ)/パーソナルトレーナー。〈Body Design Studio ASK〉代表。トレーニングと食事両面から丁寧なダイエット指導を行う。さまざまなメディアで著名人のボディメイクやストレッチ、ポージング指導なども。

カラダの左右を伸ばせるストレッチが知りたいです。

渡辺航さんが書斎で漫画を描いている様子

読者を物語の世界に引き込み、夢中にさせる作品を生み出し続ける漫画家は、身体的に過酷な職業だ。長時間、座りっぱなしで同じ姿勢を取り続けるため血流が滞りがちになり、肩こりや腰痛、腱鞘炎などさまざまな不調も引き起こしやすい。だからこそ、こまめなストレッチがパフォーマンスと健康維持の救世主となる。

サイクリストとしても知られる漫画家の渡辺航さんは「積極的に健康を取りにいくようにしています」と自身のカラダに意識的で、日頃から仕事の合間にストレッチを取り入れている。

代表作『弱虫ペダル』が100巻到達という偉業を達成したのも、日々のケアと健康があってこそ。これからも長く物語を描き続けてほしい! という思いを込め、トレーナーの神戸貴宏さんが導き出したオーダーメイドのストレッチにトライしてもらった。

漫画家と自転車乗りは酷使する場所が共通?

まずは、トレーナーの神戸さんが渡辺さんの生活やルーティンから、パフォーマンスを高めるためのストレッチを分析。

渡辺
まず月曜から土曜は、9時から13時まで漫画を描き、午後は自転車のトレーニングをします。外を走る実走を週に3回、《Zwift》を使った室内トレーニングを週に2回ほど。その後、15時にスタッフが来て、23時まで仕事です。途中で2時間ほど休憩がありますが、それ以外は基本的に座った状態での作業ですね。日曜は、自転車の時間をたっぷり取っていて、大体5〜6時間くらい。今度はサドルに長時間座ります(笑)。帰宅後は仕事です。
神戸
規則正しいですね。
渡辺
仕事を始めたばかりの頃は“朝日を見て寝る生活こそ漫画家の至高だ!”と思い、当たり前に徹夜をしていました(笑)。すると、やはり体調が悪くなったので昼型に修正を。作品のクオリティのためにも、原稿は前倒しで進めるシステムにしています。最低5時間、自転車に乗る日はたっぷり8時間は寝るようにしてますね。
神戸
仕事の合間にストレッチを取り入れるなど、ケアされているところも素晴らしいです。
渡辺
座る時間が長く血流が滞りがちなので。ローラーで背中をほぐしたり、トイレに行くたびにストレッチをしたり。たとえば、タオルを両手で持ってバンザイし、上げ下げをするもの。肩甲骨や背中がほぐれます。あと、脚の付け根と腰まわり、背中を伸ばすストレッチも、流れの中で毎日行っています。ここに、左右を伸ばす動きを取り入れたいんですよね。
神戸
仕事の作業でも自転車に乗る時も、曲げている脚の付け根を伸ばすのはとてもいいと思います。
渡辺
自転車に乗った日は、作業時にEMSで背中と脚をケアします。昨日は100km走りました。
神戸
自転車に乗る時は背筋を使いますよね。また、ロードバイクに乗る人は、背中のS字カーブがまっすぐになる「ストレートバック」になるケースも多いです。首が凝ることはありますか?
渡辺
以前、腰痛が辛くて整骨院に行った時に、「首が張っていますね」と言われましたね。無自覚だったので驚きました。
神戸
頸椎と腰椎は連動していますから、ストレッチで緩めていきましょう。ペンやハンドルを握る時間が長いので、疲れやすい母指内転筋にアプローチできるものも役立ちます。漫画と自転車は酷使する場所に共通点が多そうです。
渡辺
こうやって教えてもらえることは嬉しいですね!
渡辺航さんのルーティン。

渡辺航がタオルストレッチしている様子

  1. タオルを両手で持ち、上げ下げする。

渡辺航がタオルストレッチしている様子

2.タオルを両手で持ち、上げ下げする。

渡辺航がストレッチしている様子3. 四つん這いになり、左膝を立て、右脚を後ろに伸ばす。左右の足を入れ替えて同様に行う。

渡辺航がストレッチしている様子

4. 正座をした状態から両手を前に出して背中を反らす。

渡辺航がストレッチしている様子

5. 両脚を後ろに伸ばし顔を上げて背中を反らす。

上級編エクササイズ。

渡辺航が神戸さんにストレッチのレベルアップ術を教えてもらっている様子

1. 神戸さんが提案する上級アレンジ。伸ばした左脚の足首を左手で摑む。「太腿がより伸びますよ」(神戸さん)

渡辺航が神戸さんにストレッチのレベルアップ術を教えてもらっている様子

2. 次に左膝を立て、右肘を床につける。「あ、腰にしっかり効いてきますね」(渡辺さん)

渡辺航が神戸さんにストレッチのレベルアップ術を教えてもらっている様子

3. 左腕を上げてカラダの左側を開く。何度か繰り返して行う。「これ、すごくいいな〜!脇腹が伸びてる」(渡辺さん)

渡辺航が神戸さんにストレッチのレベルアップ術を教えてもらっている様子

4. 2の状態から始める。右手を前に出し、右膝を床から浮かしてカラダを右に捻る。すべて反対側も同様に行う。「スパイダーマン?肩甲骨が動くね」(渡辺さん)

凝り固まる肩・首・腕を集中ストレッチ。

次に紹介する2つのストレッチのうち、1つ目の「上腕三頭長筋」のストレッチは、首や肩、背中、腰など、日々の座り作業で凝り固まりがちなカラダの背面にアプローチ。

また、漫画を描くペンや自転車のハンドルを握ることで負荷がかかる手のひら、親指まわりの筋肉は、2つ目の「母指内転筋のストレッチ」でケア。デスク作業や握る動作が多い人は積極的に取り入れよう。

1.上腕三頭長筋ストレッチ

上腕三頭長筋ストレッチをしている渡辺航さん

上腕三頭長筋ストレッチをしている渡辺航さん

壁に向かって立ち、左足を1歩前に出す。右肘を壁につけて、左手で右手首あたりを摑む。右肘を顔の高さまで上げて、背中と胸を反らした状態で10秒キープ。二の腕に突っ張った感覚があればよし。反対側も行う。

2.母指内転筋のストレッチ。

母指内転筋のストレッチをしている渡辺航さん

親指と人差し指の間がぐ〜っと伸びますね。

母指内転筋のストレッチをしている渡辺航さん

母指内転筋のストレッチをしている渡辺航さん

右手のひらを上に向け、左手の人差し指、中指、薬指、小指の4本を使い、右手の親指を握る。左手の親指で、右手の甲側にある人差し指の付け根を押さえる。右腕を前に伸ばした状態で10秒程度キープする。反対側も同様に行う。

『弱虫ペダル』

自転車ロードレースに挑む高校生たちを描いた大ヒット漫画。主人公の小野田坂道をはじめ個性豊かなキャラクターが魅力。累計発行部数は3500万部を超え、単行本100巻が発売中。