『SHUKYU Magazine』編集長選! W杯とあわせて観たい、“サッカーの入り口になる”映像作品5選。
待ちに待ったW杯がついに開幕! 初戦では強豪オランダを相手に2-2で引き分け、無事に勝ち点を獲得した日本代表。次なるマッチは6月21日(日)のチュニジア戦だ。街中もテレビも、スマホの中も、どこもかしこもサッカームード満載の今。このお祭り気分に乗っかりたいけれど、正直なところサッカーには詳しくない...という人へ朗報。事前知識不要、ポジションやルールがわからなくても楽しめる、サッカーの入り口にぴったりな映像作品のおすすめを『SHUKYU Magazine』編集長・大神崇さんに聞いた。
text: Haruka Hayashi

教えてくれた人
大神崇(おおがみ・たかし)/フットボールカルチャーマガジン『SHUKYU Magazine』編集長。カルチャーからスポーツまで、ジャンルにとらわれない活動をしている。
『SHUKYU Magazine』最新号「FUN ISSUE」が絶賛発売中。
https://shukyumagazine.com/
今回おすすめの映像作品を教えてくれたのは、「蹴球」をテーマに、サッカー選手やファンカルチャー、アート、コミュニティ、社会など、あらゆる接続点からフットボールカルチャーを編む雑誌『SHUKYU Magazine』の編集長をつとめる大神崇さん。
サブスク配信で見られる物語から、劇場公開中のドキュメンタリーまで。このW杯期間中に、気になったものから気軽に視聴してみよう。
1.『テッド・ラッソ』(Apple TVオリジナル/2020年)

STORY
イギリスの弱小サッカーチームに新たな監督が就任。やってきたのは、サッカー経験0のアメフト監督、テッド・ラッソだった。冗談好きで明るいことだけが取り柄の彼は、さまざまな騒動を巻き起こしながらも、監督としてチームとともに成長していく。Apple TVオリジナルコメディドラマ。
『テッド・ラッソ』は、サッカードラマでありながら「ストーリーにハマって見進めたらたまたまサッカーの話だった」と言えるほど、ヒューマンドラマとしての完成度が高い作品です。
サッカーは集団スポーツなので、一人で何かをするというよりは、やっぱりチームメイトがいてなんぼという側面があります。特にプロチームとなると、チームメイトだけでなく、監督と選手の関係、オーナーと監督の関係など、色々な人間模様が存在するもの。けれどそれはサッカーに限らず、社会に出ると誰しもが経験することですよね。会社の中にはいくつもの役割があり、その中で、コミュニケーションの方法や人間関係の築き方を模索する。
『テッド・ラッソ』は、そういう社会的な側面とサッカーの繋げ方が上手いんです。チーム内の人間関係やテッドと家族の関係など、人間模様ひとつひとつを丁寧に描いているから、見ていてすごく勉強になります。
大変な出来事もありながら、全体的にはポジティブなストーリーで終わるので、いつも見終わった後は「頑張ろう!」という前向きな気分にさせられます。サッカーの試合シーンももちろんありますが、ルールがわからなくても置いていかれずに楽しめるドラマです。
2.『ベッカム』(Netflix/2023年)

Netflixシリーズ「ベッカム」独占配信中
STORY
1996年、デビッド・ベッカムをスターの座に押し上げた歴史的なゴール。そして1998年、フランスW杯で、彼をイングランド随一の嫌われ者にしたあのレッドカード。スーパースターの波瀾万丈なキャリアをめぐる、Netflixオリジナルのドキュメンタリーシリーズ。
サッカーはあまり知らないけれど、ベッカムなら知っている、という人は多いはず。そんな言わずと知れたスーパースターの、今だから語れる現役時代の出来事、良い話だけでなく悪い話もひっくるめたベッカムの半生を、ドキュメンタリーで見られるのがこの作品の面白いところです。
日本人にとっては、“ソフトモヒカン”が一世を風靡した2002年の日韓W杯が広く知られていますが、彼のサッカー人生におけるターニングポイントは、初出場で準々決勝へと進出した1998年フランスW杯のアルゼンチン戦。そこで渡されたレッドカードでした。当時の彼は20代前半、スター街道を駆け上がっていた最中でのレッドカード。ベッカムはサッカー選手でありながら、アイドル的な人気を誇っていたからこそ、その反動は大きく、国中からバッシングを受けることに。
そんな大挫折を経て、様々な重圧やストレスを抱えながらも再び這い上がっていくストーリーは見ていて引き込まれるものがあるし、その点にただのスーパースターのドキュメンタリー、ということにとどまらない魅力を感じます。また、妻のヴィクトリアとのやりとりも必見です。
3.『オール・オア・ナッシング』(Amazonプライムビデオ/2018年〜)

©Amazon MGM Studios
STORY
Amazonスタジオが制作する、様々なプロスポーツクラブのシーズンに密着する長編ドキュメンタリーシリーズ。サッカー版ではこれまで『マンチェスター・シティ(2018年)』、『トッテナム・ホットスパー(2020年)』、『ブラジル代表(2020年)』『ユヴェントス(2021年)』『アーセナル(2022年)』の5シリーズを公開。試合の裏側、ロッカールームの様子、私生活など、普段は見ることのできない選手の様子がリアルに映し出されている。
スポーツドキュメンタリー作品には「最終的に話をいい方向に話を持っていく」というセオリーがあるとしばしば感じるのですが、『オール・オア・ナッシング』はその忖度が一切なく、初めて見た時には衝撃を受けました。
今となっては「チームの裏側を見せる」というコンテンツは、国内外ともに一般的になりましたが、少し前の時代まではまったくと言っていいほどなかった。けれど『オール・オア・ナッシング』は、負けている時は負けているところを、印象の悪いシーンも差し替えず、監督がクビになるかどうかといったシリアスなところまで、本当にただ事実を映す。
それを映像作品として世界へ発信すること自体が、サッカーの枠を超え、スポーツドキュメンタリー全体のひとつの転換点になったのではないかと思います。近年では、SNS上でもそういったコンテンツが増えてきましたが、その流れにもまた、このシリーズが与えた影響は大きいのではないかと思っています。
監督の素顔や選手の個性を深く知れるからこそ、これをきっかけにサッカーを好きになる、という人もきっと多いのではないでしょうか。
4.『ブルーロック』(U-NEXT、Netflix、Huluほか/2022年〜)

©金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会
STORY
「世界一のエゴイストでなければ、世界一のストライカーにはなれない。」日本をW杯優勝に導くストライカーを育てるため、日本フットボール連合はある計画を立ち上げる。その名も”ブルーロック(青い監獄)”プロジェクト。集められたのは300人の高校生。しかも、全員FW(フォワード)。299人のサッカー生命を犠牲に誕生する、日本サッカーに革命を起こすストライカーとは…?
従来のサッカーアニメ作品といえば、仲間同士の青春物語や、団結して強い敵を倒す、というテーマが多かったように思うのですが、『ブルーロック』はその真逆。チームワークよりも、個人のエゴが突き抜けた“エゴイスト”たちが集まるという話だった。デスゲーム的にメンバーが振り落とされていくというストーリーも、これまでの作品とはまったく違う印象があり新鮮です。
大前提として、サッカーはチームで協調するスポーツですが、日本のサッカー、ひいては日本社会全体の特徴という点で見ると、そこには「調和は取れるけれど、圧倒的な個性は生まれづらい」という側面があるように感じます。世界的な潮流で見ても、昨今は一人の選手が抜きん出るより、いかにチームで連動してプレイするか、というスタイルが主流です。だから、個性のある選手はいても、メッシやロナウドのような突出した選手はなかなか生まれない。
そうした現実がある中で、アニメがこういうストーリーを押し出すということ自体が挑戦的だし、すごく面白いです。今回のW杯では、この『ブルーロック』に出てくるキャラクターのように、個の力で突破する選手に出てきてほしいと思っています。そんな新しいスター選手が出てきた時に、サッカーはまたひとつ新時代を迎えられる気がしています。
5. SAMURAI BLUE Project for FIFA World Cup 2026™️『ONE CREATURE』(2026年)

STORY
史上初めて2大会連続でW杯の指揮を執る森保監督と、サッカー日本代表SAMURAI BLUE。2022年カタールW杯から現在までの4年間にわたる彼らの成長と進化の日々を記録したドキュメンタリー映画。選手や監督、スタッフのリアルなコミュニケーションや関係性が垣間見える。全国各地の劇場にて公開中。
前回大会のカタールW杯終了から、AFCアジアカップ2023、ワールドカップアジア予選、そしてキリンチャレンジカップでの、対ブラジルの歴史的勝利まで。その一連の流れと、日々のトレーニングやピッチ外での風景を記録したドキュメンタリーは、今現在のサッカー日本代表を理解するのにうってつけです。
W杯の舞台に立つまでには、選手自身や監督だけでなく多くのスタッフが関わっていて、その裏方の存在があってこそ、選手たちはベストなプレーをすることができます。常に良いことばかりではない状況でも、一人一人が自分の役割をしっかり果たしながら、チーム一丸となり本気で世界一を目指していく。そんな姿を見ていると、見る側の私たちもまた、彼らと同じように「日本が世界一になること」を信じて応援することで、夢の実現に近づくのではないかと感じるのでした。
4年間チームを追い続けてきた方はもちろん、最近SAMURAI BLUEに興味を持ち始めた方にも、ぜひ見ていただきたい一本です。
⚽️
⚽️
⚽️
余談として「配信はないけれど、2002年日韓W杯大会期間中の1ヶ月間、チームに密着したドキュメンタリー『六月の勝利の歌を忘れない』もオススメです」と大神さん。本作は、映画監督の岩井俊二さんが編集を担当し、SNSもまだない当時において、ニュースでは見ることのできなかったチームの裏側を記録した、貴重な映像なのだとか。日本代表の歴史をより深掘りしたくなったら、DVDを探してみるのも楽しいかもしれない。
大神さんに今大会の見どころを尋ねると「今年の注目は、やっぱり出場国が48チームに増えたことです。サッカーを通して、そういう今まで行ったことのなかった国を詳しく知ることができるのはいいこと。初戦でスペインと引き分けたカーボベルデはいい例です。賛否もありますが、それも含めての新しい試みだと思うので、今回は初出場国に、勝敗関係なく注目したいです」と教えてくれた。
次のグループリーグ日本代表戦は、6月21日(日)11:00キックオフ。サッカーに少しでも興味が出てきたら、お近くのパブリックビューイング会場に足を運んでみるのもいいかもしれない。少しくらいルールがわからなくても、きっとたちまち引き込まれるはず!


