「しんどい時やウケた時は、頭の中で『焼肉行こう』って考えてる」笑いとウェルビーイング。オダウエダ・植田紫帆(後編)
笑うことは心身の健康に良いと言われています。では、日々誰かを笑わせているお笑い芸人は、自身も健やかな状態になっているのでしょうか。芸のために筋肉を鍛えることもあれば、不摂生が爆笑を生むこともある。ウェルビーイングの形は人それぞれです。本連載では放送作家の白武ときおさんが聞き手となり、芸人一人ひとりが考える「笑いとウェルビーイング」を掘り下げます。第9回後編のゲストもオダウエダ・植田紫帆さんです。
interview: Tokio Shiratake edit,text: Neo Iida photo: Wataru Kitao
Profile
植田紫帆(うえだ・しほ)/1991年、大阪府生まれ。大阪NSC36期生として2014年に小田結希とオダウエダを結成。2017年から拠点を東京に移し、神保町よしもと漫才劇場に所属。『THE W 2021』で優勝し、テレビや舞台で活躍中。ラジオ『アッパレやってまーす!』(MBSラジオ・火曜隔週レギュラー)、『がっちゃんこ』(ABCラジオ・月曜)などに出演中。
1人でも飲みに行って、膨大な量の酒を飲む。
白武ときお(以下白武)
食生活はどんな感じですか?
植田
ヤバいですよ。本当にウェルビーイングできてないです。まず起きたいタイミングで起きるんです。我々の仕事って、テレビのロケがなければ大体昼過ぎくらいに現場に入ってれば大丈夫なんで、10時にも11時にも起きてないんですよ。そのくせ6時に起きようとはするんです。目覚ましだけつけて。
白武
なるほど、1回起きるんですね。
植田
そうなんです。6時に起きて携帯だけ見て、また寝て、12時前ぐらいに起きる。で、UberEATSを頼むんです。マクドとかでとりあえずハンバーガー2個。よくないですよね。お腹パンパンにして仕事に行く。そのあと現場に着くとお弁当が出てます。ちょっといただこうかな、劇場入る前にコンビニ寄っとこうかな、とか言って揚げ物を食べたり。さらにどの現場行ってもモンスター飲んで終わったら終わったで打ち上げあるし、打ち上げがなくても1人でも飲みに行って膨大な量の酒を飲むんですよ。
白武
すごい! 1人でも飲みに行くんですね。
植田
はい。家の近所で。それはそれは考えられない量の酒を飲みます。焼肉も1人で行っちゃいますよ。本当に呆れられてます。昔は家でもそんな飲まなかったし、1杯飲んだらもうええかなと思ってたんですけど、店のハイボールってすぐ飲めちゃうんで。
白武
氷がいっぱい入ってるから?
植田
あー、氷が好きなのかもしれないですね。冷たいとワクワクするじゃないですか。それで飲んじゃって、またご飯を頼んじゃって。で、1人で飲んでる時ってYouTubeを見てるんですよ。それでテンション上がって飲みたくなっちゃって。

白武
どんなYouTubeを観てるんですか?
植田
芸人さんのチャンネルを観てますね。あとHIKAKINさんの鬼茶のやつとか。自分で麦茶作ってちょっと悪いこと言って謝罪してる一連の流れがおもろすぎましたし。あと鉄道系YouTuberの方の日本全部使った鬼ごっこっていうめちゃくちゃな企画とか。そういうのを見てハイボールをガーッと飲んでベロベロになって帰って家でまたビール1缶とか飲んで寝ちゃうからダメなんですよね。これを繰り返してたらダメなんですよ。
白武
そこまで飲んで、夜は何時に寝るんでしょう。
植田
夜は2時くらいまで起きてしまってますね。3時まで起きちゃったら何してんねんとはなりますね。どういうつもりやねん、って。なのでなるべくそこまでには寝るようにしてますけど。
白武
植田さんを見ていると、テレビ番組でも舞台でも、大オチというか重要なポイントを任せられることが多いように思うんです。その時のプレッシャーってすごいんじゃないかなと思うんですけど、その後ってどういう状態になるんですか?
植田
ろくでもない状態になってることが多いんですよ、本当に。だからわーっと喋ったあとで楽屋とか戻った時に、一応ですけど警察が来てもいいような状態にはしてます。最悪、逮捕されてもおかしくないですから。
昼間から飲んでやろう、世界をせせら笑ってやろう、という気持ちで飲みます。
白武
(笑)。嫌なこと、しんどいことがあったあとのルーティンってあったりしますか?
植田
もう仕事中、ライブとか収録中に「今日は焼肉行っちゃおう」って考えちゃってますね。悪いことばかりじゃなくて、ウケたなとか仕事したなって思った時も焼肉行こうって考えてます。
白武
どういうメンバーと行くんですか?
植田
コントのライブをよくやるんで、コントの後輩が多いですかね。オフローズとか喫茶ムーンとかあとむとか。別に先輩だからっていう義務感ではないんですけど、みんなで行こうかみたいな感じですね。
白武
先輩と行くこともありますか?
植田
ありますよ。Aマッソの加納さんと、にぼしいわしのいわしさんとよく行ってて。世界のありとあらゆる悪口を言うんです。ただ加納さんが今年願掛けで悪口を禁止されてるんで、回数は減ってますけど。去年は加納さん、小麦を禁止されてたんで、揚げ物とか粉もんが少ないお店に行ってましたね。
白武
休日はどんな風に過ごしているんですか?
植田
本当に良くないですよ。さっきのルーティンの仕事がないバージョンなんで、やっぱり1回6時に起きるんですよ。携帯見てまた寝て、12時ぐらいに起きてUber頼んで、昼間から飲んでやろう、世界をせせら笑ってやろう、という気持ちで飲みますね。

白武
みんな働いてるのに、という背徳感ですね。
植田
外で人を笑いながら酒飲みたいなあって思うんです。でも結局ダラダラして16時17時までゲームしちゃって、あかん! となってようやく家を出て、中野らへんの店に入って、そっから1人で6時間ぐらい飲み続けて。そうやっていると、22時頃に先輩に呼ばれるパターンもあるんですよ。1人で焼肉行ったくせに、お腹減ってますみたいな顔してまた焼肉行ったりしてますね。いつも一日が無駄になってます。
白武
6時間飲むと、次の日の記憶ってなくなってるんですか?
植田
自分ではあると思ってたんですけど、次の日を過ごしていくうちに覚えていない3軒目があったなと思い出してきますね。そういえばウイスキーのロック飲んでたぞ、マスターと喋ってたぞ、みたいな。しょっちゅうありますね。
白武
でも、いい休日の使い方ですよね。
植田
本当ですか? 全然良くないですよ。小田は休みの日に外に出て美術館に行ったとか言ってますよ。すごいですよ。ちゃんとしてる。
白武
植田さんから見て、相方の小田さんはどんなふうに見えているんですか?
植田
小田も身体が強いほうじゃないんですけど、休みの日は美術館とか誰かの個展を観に行ったり、海とか山とか川に行ったりしてるんですよ。小田を見ていると、あなたのことを健やかと言わずして何だと言うのだって思いますね。

TikTokで美容液ティア表を調べて、化粧品を買ってます。
白武
植田さんならではのお金の使い方ってあったりしますか? これには糸目をつけないぞという。
植田
旅行や営業で打ち上げに行くとなったら、その辺で食べられる美味しいものを探します。コンビでそういうの好きですね。あとは家電ですね。TikTokで家電ティア表を調べて、その上位を「これええな」って買うのが好きです。ティア表もゲームの影響ですね。最近だと空気清浄機を買いました。あと漫画もおすすめされたらすぐ買いますね。昔はお金がなくて漫画買うのもだいぶ躊躇したんですけど、今はバンバン買ってます。娯楽にお金を使うのは厭わないですね。
白武
美容とかメイクはどうですか?
植田
そっちも好きですね。SNSで流行りの美容液とか見つけたら、TikTokで美容液ティア表を調べます。PRじゃないかどうか一応確認してからです。PRだったらお話にならないんでね。で、買う。買って試すのも好きですね。
白武
じゃあ準備とか大変ですね。
植田
朝シャワーが好きなんで、起きてUberが来るまでの間にシャワーを浴びるんですけど、お風呂から出たらもう手厚く大量に塗るわけです。私はこんなに液体を塗らないと風呂から出られないんだ、と思うくらい塗りますね。
白武
その美容意識はどこから来てるんでしょう。表に出る仕事だからでしょうか。
植田
そうかもしれないです。人前に出るんで多少は小綺麗に、というのはあるかもしれないですね。

「この紙を切りなさい」と言われたら喜んで切らせてもらいます。
白武
普段持っていると落ち着くものってありますか?
植田
ろくでもないものでいうと、『THE W』で優勝した時に、なぜかステッカーをもらいまして。トロフィーではなくステッカー。そのステッカーをろくでもないライブで乳に貼って出てくるとお客さんがビビるんで、そういうのは持ってますね。って、そういうことではないですよね。
白武
それも十分素敵なんですが、気持ちが落ち着くものをぜひ見たいです。
植田
あ、落ち着くもの。それでいうとこれはコンビ共々なんですけど、筆記用具とちょっとした小道具が作れるセット。これは持っとかないとドキドキするかもしれないです。サインペン、ボンド、ハサミ、カッターとかが入ったポーチを持ち歩いてます。急にちょっとした銃とか作らなあかん時があるんですよ。この間はちょっとしたカマキリを作らなあかん時があって、ハサミとか持っとかないとなっていうのありますよね。

白武
かなりギッチリ入ってるんですね。
植田
だいぶ詰め込んでるんですよ。このハサミはめっちゃよく切れます。ダンボールも切れるんで本当に便利です。あとはボンドですね。この量ないとダメです。で、ペン。赤はね、出血表現がしたい時にサッと塗れますから絶対に必要ですよ。このカッターもよう切れます。あとこれは所(ジョージ)さんにもらった〈世田谷ベース〉のボールペン。所さん、急にボールペンくれるんですよ。ええ方ですよ。基本的に小田が「書くもんない」とか言うんで、多めに入れてますね。裁縫道具は、私が巨大すぎて衣類がちぎれる時があるんで、その時用に持ってます。
白武
このセットにはどうやって行き着いたんですか?
植田
えーと、前からローズヒップファニーファニーさんとか野性爆弾さんとか、ネタ中にデカいもの持たせる先輩がカッコいいなと思ってたんです。で、小田とNSCで組んだ時に、最初は小道具欲しいなんて言わずに、爆弾解体のネタをやってたんですよ。その時に小田がミリタリーのヘッドセットみたいなのを作ってくれて。それ以来、小田が見繕って小道具を作ってくれるようになりまして。今まで小田が100%作ってくれてます。
白武
作るのは小田さんなんですね。植田さんは?
植田
私は小田から雑用係を頼まれるんで、「この紙を切りなさい」「段ボールをたくさん切ってください」と言われたら喜んで切らせてもらいます。なのでこのセットがないと、「あなたは何をしに来たんですか?」と怒られますんで。小田は現場監督で、私は見習い。でもガムテープを貼るだけでもガタガタッてなって「触らんといて」って言われてるんで、下働きをするために現場にいます。仕事がなかったら買い出しとか飲み物を買いに行く雑務を任されます。
白武
このセットを持っていれば、出先で何か作れるわけですね。
植田
そうですね。例えば地方に行った時も大丈夫です。でも気をつけないといけないのが、刃物が入っているので、飛行機に乗る時は絶対このセットを置いていくこと。この間も小田が保安検査所で止められて。気をつけないといけないですね。お気に入りがなくなっちゃう。なくなったら困るんでね。
白武
では最後に、植田さんにとって、活き活きと生きるための秘訣やヒントがあったら教えてください。
植田
そうですねえ、「好きなことをする」ですかね。昔からそうですけど、私は自分が何を好きなのかははっきりわかってるんで。人目も気にせずに熱中します。ただ、何か買う時は誰かがいいよって言うやつを買ってみる。皆さんもティア表を信じて一回買ってみてください。楽しいですよ。




