【弱点別】走りのフォームを根本から矯正するトレーニング。

自分のクセを振り返り、明日からの走りを変える! 6つのタイプから自分の弱点を見抜き、トレーニングで矯正しよう。

取材・文/井上健二 撮影/安田光優 イラストレーション/サトウリョウタロウ

初出『Tarzan』No.920・2026年2月26日発売

走り方のNG3選_反り腰・後ろ蹴り・すり足の様子
教えてくれた人

五味宏生(ごみ・こうき)/日本陸上競技連盟医事委員会トレーナー部委員、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー。SUBARUや福島千里などを指導。インスタグラムを中心に情報発信を行いながら、DMでもトレーニング指導依頼を受け付けている。

五味トレーナー直伝!フォームの悪いクセを自動矯正。

ラクに長く走るコツは、効率的なフォームを身につけること。

ランは踏み出した足への体重移動の繰り返し。上体を軽く前傾させた姿勢で、軸足に真上から体重を乗せたら、地面からの反力が得られる。それをパワーに変えて走るのが正解。地面を蹴ったり、余分な筋力を使ったりすると、バテやすく故障もしやすい。

でも、理屈を頭で理解しても長年カラダに染みついた悪しきフォームは変わらない。必要なのは自らのフォームの欠点を知り、それに応じたエクササイズに励むこと。

「ポイントを絞って筋肉と関節にアプローチすれば、少しずつ欠点がリセットされて理想のフォームへ誘導できます」(アスレティックトレーナーの五味宏生さん)

今回ランニングクラブのメンバーの協力で誌上クリニックを開催。典型的なフォームの乱れを6つ選び、各々の弱点と五味トレーナー考案の修正エクササイズを紹介する。

複数のタイプにクセがまたがることもあるから、当てはまるものをチェックしよう。

理想に近づくための共通エクササイズ。

着地した軸足に体重を乗せるには、遊脚側の骨盤を引き上げるお尻の中臀筋の筋力と、軸脚側の膝が折れないようにする太腿内側の内転筋群の柔軟性が不可欠。大谷翔平選手が塁上で行うポーズ(ヒップロック、下参照)がラクに決められるようになるまで鍛える。

軸足に真上から体重を乗せる。 (左右各5秒×4セット)

ヒップロックのエクササイズ

  1. 左脚で片脚立ちに。右腕を高く伸ばしつつ、踵、膝、股関節を一直線に保ち、真上から右足で地面を強く踏む。
  2. 同時に左肘を脇腹に近づけ、脇腹の力で左側の骨盤を引き上げる。5秒キープしたら左右を変えて同様に行う。静止が確実にできたら、ランの左右の着地を意識してリズミカルにステップしながら左右を切り替える。
骨盤を上げる筋力をお尻に。(左右各5回×3セット)

骨盤を上げる筋力をお尻につけるエクササイズ

  1. 左側を下にして横向きになり、左膝を曲げ、左腕を曲げて前腕に頭を乗せる。右脚をまっすぐ伸ばし、頭から右足踵まで一直線に。
  2. 右脚を伸ばしたまま、踵をできるだけ遠くへ伸ばす意識で、なるべく高く上げる。
  3. 爪先を下に向け、脇腹ではなくお尻の力で上げる。上げ切ったところで5秒キープして戻る。左右を変えて同様に行う。
太腿内側をストレッチ。(10回×2セット)

太もも内側のストレッチをしている様子

  1. 両手両膝をついて四つん這いになる。両手は肩の真下、両膝は股関節の真下についてから内腿にストレッチがかかるように左右に大きく開く。
  2. お尻を後ろに引いて、さらに内転筋群をストレッチする。背中を丸めたり、反らしたりせず、体幹を崩さず保ち、骨盤のみを引くこと。

左右ブレタイプ|肩甲骨や腰の位置に注目。

左右ブレタイプの見本

まっすぐ立ち、左右交互に軸足へ真上から均等に体重をかけるのが基本だが、カラダが傾いたままで走り出すと当然左右にブレる。(この人は)右足に荷重すると右側へズレて地面反力が逃げるので推進力になっていない。

軸足側へのスムーズな体重移動ができないから、左右へのブレが生じる。それを矯正するため、体幹ごと軸足上に乗せる動きをインプット。さらに腕の振りとシンクロさせる。このタイプは、とくに共通エクササイズの中臀筋と内転筋群のケアを入念に行うのが吉。

左右均等な体重移動へ。(左右交互に各10回×2セット)

左右均等な体重移動へエクササイズ

  1. 両足を肩幅に開いてまっすぐ立つ。両腕を肩の高さで地面と平行に伸ばし、手のひらを下に向ける。
  2. 骨盤から下を動かさずに、右手を右側へ遠く伸ばすように、胸郭を右側へスライドさせる。
  3. 元に戻り、左側へも同様に行う。左右均等にスムーズにスライドできるのが理想。
肩甲骨を動かそう。(左右交互に各10回×2セット)

肩甲骨を動かすエクササイズ

  1. 胸郭スライドを行いつつ、肩関節の捻りと肩甲骨の動きを引き出す。右側へスライドしながら、右腕を肩から内向きに捻り、手のひらを上に向ける。
  2. 左腕は肩から外向きに捻り、手の甲を正面に向ける。左右交互に行う。静止してできるようになったら、歩きながらやってみる。

反り腰(骨盤前傾)タイプ|お尻、使えてますか?

反り腰の人の見本

反り腰で骨盤が前傾しすぎているせいでお尻が働かず、地面反力をパワーに変えにくい。骨盤が過度に前傾すると腰が張り胸郭が回旋しやすくなり、それを制動しようと脇を開いて腕を横から振るのがクセに。骨盤を後傾させよう。

反り腰でお尻が使えない人の多くは小指が休眠中で横に寝ていることも多い。小指が機能すると脚を外向きに回す外旋モーメントが働きお尻が稼働しやすい。そこで足元から姿勢を整える。加えてお尻を意識した丁寧なエクササイズで筋力を高め、フォームを改善。

大事なお尻をスイッチオン。(10回×2セット)

大事なお尻をスイッチオンできるエクササイズ

  1. 地面か床に仰向けで両膝を腰幅で曲げて立て、爪先を上げる。
  2. 両腕は体側で「ハ」の字に伸ばし、手のひらを下に向ける。お尻を締め、踵で地面か床を押し、骨盤を後傾させてヘソを斜め前方に向けるように肩、胸、お腹、膝が一直線になるまでお尻を引き上げる。腰で上げようとするとヘソは真上を向く。
5指で地面をしっかり捉える。(左右各10回×2セット)

5指で地面をしっかり捉えるエクササイズ

  1. 裸足で片足の踵を地面か床につける。「グー」を作るように5指を付け根(MP関節)からギュッと曲げて3秒キープ。
  2. 続いて「パー」を作るように親指と小指をできるだけ引き離して3秒キープ。左右を変えて同様に行う。

腕前振りタイプ|疲れてくるとフォームが乱れがち。

腕前フリタイプの見本

女性には背中の僧帽筋が弱い人も多く、肩甲骨を下げて寄せるのが不得手。女性は骨盤が広くその回転力が強いが、それを打ち消すために腕を振ろうとしても肩甲骨が動かないから前でしか振れない。それが着地の乱れにつながる。

固まった肩甲骨を動かして下げて寄せられるように、ロウイングで僧帽筋を鍛える。正しく行えるよう、まず背中と腰をしっかり伸ばすデッドリフトの姿勢を覚える。肩甲骨を寄せたら着地衝撃を受け止めて推進力に変換でき、疲れにくく練習後半も腰は落ちない。

骨盤を立てて腰を伸ばす。(10秒×2セット)

骨盤を立てて腰を伸ばすエクササイズ

  1. 両足を肩幅に開いてまっすぐ立ち、膝をできるだけ曲げないように股関節から前傾し、両腕を下に伸ばしてデッドリフトのスタート姿勢を取る。骨盤を立てて腰を伸ばし、背中も丸めず胸を張る。
  2. 腰に乗せた500mL入りペットボトルを落とさず、この姿勢を10秒キープする。
肩甲骨を寄せて肘を真後ろに引く。(左右各10回×2セット)

肩甲骨を寄せて肘を真後ろに引くエクササイズ

  1. デッドリフトの姿勢を取り、腰に乗せていたペットボトルを右手で持つ。
  2. 右肘を真上に向けるようにボトルを脇腹まで引き上げ、元に戻す。骨盤を動かさず、脇が開かないように閉じて行うこと。左右を変えて同様に行う。

後ろ蹴りタイプ|後ろのランナーに足が当たる。

後ろ蹴りタイプの見本

骨盤は適度に前傾すべきだが、前傾しすぎると本来は前方で蹴るべき両足が後ろに流れて、後方のランナーに足が当たりやすい。脚を引き上げるとそれと逆の骨盤が前にせり出て遊脚側に骨盤が向く。それで前方への推進力をロス。

胸郭と骨盤を近づける体幹力があれば、骨盤後傾を促して脚を前で回せる。それを促すのが腹筋下部だ。遊脚側の脇腹を収縮させて脚を前へ上げられるように外・内腹斜筋も鍛える。仕上げに歩きながら遊脚側ではなく軸足側へ骨盤を向ける動きをカラダに入力する。

骨盤を正しく前後に動かす。(20m)

骨盤を前後に正しく動かすエクササイズ

  1. 両足を腰幅に開いてまっすぐ立つ。左脇腹を締め、左側の骨盤を前方へ出しながら左太腿を高く上げ、右足に真上から体重を乗せる。
  2. 走るときのように左肘を後ろへ、右肘を前に振る。手足をリズミカルに入れ替えて左右交互に行いながら、20mほど前進する。
衰えがちな下腹部を強化。(5回×2セット)

衰えがちな下腹部を強化エクササイズ

  1. 地面か床で仰向けになり、両膝を曲げて足の裏をつける。両手を膝へまっすぐ伸ばして、手のひらを下に向ける。
  2. 手でリードしながら胸郭を骨盤に近づけるように上体を起こし切ったら5秒キープ。ゆっくり元に戻る。
サボる脇腹の筋力アップ。 (左右各10回×2セット)

サボる脇腹の筋力アップのエクササイズ

  1. 地面か床で右側を下にして横向きになる。右膝を90度曲げ、左膝を垂直に上げて90度曲げる。左手を頭の後ろに、右手を左脇腹に添える。
  2. 左脇腹を締め、左肘を左太腿に突き刺すように上体を起こす。起こし切ったら5秒キープ。ゆっくり戻る。左右を変えて同様に行う。

アゴ出し(胸椎屈曲)タイプ|PC作業の長い人は要注意。

顎出しタイプの見本

前傾姿勢を取る時間が長い人がなりやすい。重たい頭が前へ出るため、倒れないようにお腹を前に出して全身が弓形に。胸郭が引き込まれて屈曲し、柔軟性が失われて上体が固まり、腕と協調せず脚だけで頑張って走ることに。

首の後ろを強化し、顎と頭を後ろに引く。さらに胸郭の柔軟性を高め、胸郭の動きを引き出そう。日常生活ではパソコンなどで前傾姿勢を取る時間が長いはず。モニターは目線まで引き上げ、二重顎を作るように顎を引く習慣をつけてフォーム改善につなげよう。

背骨を軸に胸を回そう。(左右各10回×2セット)

背骨を軸に胸を回すエクササイズ

  1. 胸郭を伸ばした姿勢を取る。右手を後頭部に添え、右肘を真横に向ける。
  2. 頭と背骨を貫く軸を中心に、肘を真上に向けて右の肩甲骨を背骨に寄せながら、胸を開いて胸郭をツイストさせる。元に戻り、左右を変えて同様に行う。
胸の柔らかな動きを出す。(各10回×2セット)

胸の柔らかな動きを出すエクササイズ

  1. 地面か床に両膝をつき、お祈りをするように両腕を肩幅でまっすぐ前に伸ばし、手のひらをつける。
  2. 脇を地面や床に近づけるように胸郭を気持ちよく伸ばしたら、お腹にボールを抱えるように背中を丸めて胸郭を曲げる。
頭を背骨上にリセット。(10秒×5セット)

頭を背骨上にリセットするエクササイズ

  1. 両足を腰幅に開いてまっすぐ立ち、タオルを後頭部に回し、両端を両手で持ち、弛みがないようにする。
  2. タオルを前方へ引き、頭を前に出す。タオルを強く引く力に抵抗し、頭を背骨の真上に戻す。そのまま10秒キープ。

すり足タイプ|ペタペタ走りが気になる。

すり足タイプの見本

両足が地面から離れる滞空時間が短く、地面すれすれを平行移動しているせいで、地面反力が得られない。前傾せず突っ立ったまま走っているのでストライドも伸びにくい。長く走れるとしても、スピードには乗れないタイプだ。

滞空時間を確保できるように、着地のタイミングで軸足側に体重を乗せて反力を得る練習を。それには体幹の四角形(ボックス)を崩さず、骨盤を固定したまま軸足側へスライドさせるのが重要。すると反力で跳ねるように走れるのでストライドは勝手に伸びる。

軸足上に体幹を乗せる。(左右各5秒×2セット)

軸足上に体幹を乗せるエクササイズ

  1. 両足を腰幅に開いて立ち、両腕を伸ばして体側につける。
  2. 骨盤から下を動かさないようにして、腕を体側につけたまま、真下のゴミに手を伸ばすように上体を真横に倒す。脇腹を縮めて倒し切ったところで5秒キープ。
  3. 元に戻り、左右を変えて同様に行う。頭を倒しすぎない。
これで歩幅を着実に伸ばす。(左右交互に各10回×2セット)

これで歩幅を着実に伸ばすエクササイズ

  1. 上の側屈エクササイズに片足ジャンプを追加。右脚で片足ジャンプして着地した瞬間、右側へ側屈。右足に真上から体重を乗せる。
  2. 続いて左脚で片足ジャンプして着地した瞬間、左側へ側屈して、左足に真上から体重を乗せる。ランの着地をイメージして左右交互にテンポよく行う。
教わった人たち|W/E Running Club

東京都内の20〜30代を中心に400人ほどが在籍する無料のランニングサークル。元箱根ランナーや元実業団ランナーもいる一方、陸上未経験者も多く、5km30分程度のランナーも少なくない。WEBサイト