トラブル発見のヒントはみぞおちの痛み。早期対処が膵臓を救う!
沈黙を貫く膵臓は、限界まで悲鳴を上げない。暴飲暴食のツケが回り始める40代から要注意。知らずに放置すれば取り返しがつかない膵臓トラブルの最前線。
取材・文/石飛カノ 取材協力/伊佐地秀司(ヨナハ丘の上病院理事長) 編集/星野“cap”徹
初出『Tarzan』No.916・2025年12月11日発売

教えてくれた人
伊佐地秀司(いさじ・しゅうじ)/〈ヨナハ丘の上病院〉理事長、三重大学名誉教授(肝胆膵・移植外科学)。消化器外科疾患、とくに肝臓、胆囊、膵臓などの悪性腫瘍をはじめとする手術を数多く手がける。研究実績も多数あり、研修医の育成にも注力。
自分で自分を消化する、恐るべき急性膵炎の正体。
代表的な膵臓病である膵炎には急性と慢性の2種類がある。まずは急性。こちらは食事や飲酒の後に突然腹部や背中に痛みが生じる。
「原因の多くは胆石です。胆囊の内部の胆石が膵臓に落ちてきて、膵管と胆管が合流するところに詰まります。すると、膵液が逆流して膵液の中にあるタンパク質の消化液・トリプシンによって膵臓が消化されてしまうんです」
と言うのは三重大学名誉教授の伊佐地秀司さん。膵液は本来膵臓内にある間は不活性。十二指腸に分泌され腸液と混ざることで活性化するが、膵臓内で膵液が逆流すると特殊な酵素で活性化されるなどして自己消化が起こる。胆石の原因は高脂肪食や過食など。人間ドックで発覚したら早期に対処を。
急性膵炎が起こる仕組み

膵液を運ぶ主膵管と胆囊から延びる胆管の合流部に胆石が詰まり、膵液が逆流。膵液中のトリプシンによって膵臓が消化されてしまう。治療法は薬物療法や食事療法。
10年単位でじわじわ進む怖い慢性膵炎のメカニズム。
慢性膵炎は長い年月をかけて病がじわじわ進行する。
「アルコールの過剰摂取が10年くらい続くと慢性膵炎の症状が出てくることがあります。過剰摂取とは一度の飲酒で純アルコールを60g以上摂ること。長期のアルコール摂取で膵液の粘度が上がって流れが滞ります。自己消化が起こるとともに膵液が固まった膵石ができ、痛みが起こるとされています」
膵液によって自己消化が起こると膵臓は小さくなっていき、膵石ができると膵管が閉じられ徐々に膵臓が硬くなってくるという。これはもう肝臓でいう肝硬変の状態。
「膵臓内部の細胞が破壊され膵臓自体が溶かされてしまうことも」
大量飲酒者は要注意。
慢性膵炎の進行イメージ

気づいたときは手術不可能に。早期発見が難しい膵臓がん。
膵臓がんの死亡率はがん全体の死亡率ランキングの第4位。膵臓自体が分かりにくい場所にあるおかげで発見しづらく、症状が出るのも遅い。気づいたときには手遅れというケースが非常に多い。
「今、がんの5年生存率は6割程度で乳がんなどでは8割くらいといわれています。ところが膵臓がんは5年生存率が10%以下でこれは世界的にも同じ数字です。膵臓の左端の膵頭部にがんが発生した場合は胆管があるので、これが閉塞されることで黄疸が表れ初期に発見することができます。それ以外は早期発見が非常に困難です」
大体発見されるのは手術がギリギリ可能かどうかのステージ3。切除手術が可能な割合は4割以下。養生に努めたうえで新たな早期発見法の登場を待つしかない。
膵臓がんのステージと治療方法

ステージ1で発見される膵臓がんは5%程度。手術が可能なのはステージ3まで。急激な体重減少という症状が見られるのはステージ3の段階。すぐに医師の診断を。
今、急増中の膵囊胞疾患、IPMNって何だ?
伊佐地さんによれば、膵炎や膵臓がんの他、今急増しているのがIPMNという疾患だという。
「日本語では膵管内乳頭粘液性腫瘍と言います。私は月に一度、外来診療をしていますが患者さんのほとんどはこのIPMNです。最初は小さな良性腫瘍として発生し、次第に大きな悪性腫瘍となって周囲の組織を破壊します」
とはいえ、5〜10年かけてがん化していくので、長期間フォローしながら良性の段階で手術をすれば治療は可能。「治療可能ながん」として注目を浴びているのだ。
「膵臓がんは慢性膵炎から移行することがありますが、IPMNはまだ原因もはっきり分からないまったく独立した病気。ですが、画像診断で発見することができるので、治療は十分可能です」
セルフチェック!
- みぞおちや左の背中が痛む
- 吐き気がする
- 最近食欲がない
- 皮膚や白目が黄っぽい
- 白っぽい便が出る
- 体重が急激に減った
主に慢性膵炎に当てはまるセルフチェック。初期の代償期にはお腹や背中に痛みを感じることがあるが、重症化するとそうした症状が表れなくなる。少しでも違和感を感じたら膵臓専門医の元へ。


