数年で体重+5kgは早期対策を。大病の一歩手前・脂肪肝に注意!

暴飲暴食は、若いうちは笑って済ませられても、40代以降の肝臓には確実にダメージを残す。自覚症状のないまま進む脂肪肝は、やがて肝炎や肝がんへとつながる“すべての始まり”。沈黙する肝臓の悲鳴を、今こそ数値と知識で聞き取るべき時がきた。

取材・文/石飛カノ 取材協力/川口 巧(久留米大学医学部主任教授) 編集/星野“cap”徹

初出『Tarzan』No.916・2025年12月11日発売

肝臓の怖い話
教えてくれた人

川口 巧(かわぐち・たくみ)/久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門主任教授。専門は肝臓病の栄養療法、運動療法。「人間味あふれた臨床医の育成と患者さんに役立つ研究」を目標に、異なる診療科と連携した栄養療法やリハビリを含めたチーム医療を実践。

すべての病の根幹に脂肪肝という病態ありき。

脂肪肝。このワードはちょっと前まで「人間ドックで脂肪肝って言われちゃったテヘヘ」的な不健康自慢のネタだった。現在はまったく笑えない病態で肝臓のすべての病の始まりは脂肪肝にあり、というくらいに考えられている。

「もともと肝臓は脂肪を貯蔵する能力があって正常な肝臓の中には脂肪が5%くらい存在しています。ところが、脂肪が過剰に溜まってくると肝細胞のいろいろな機能を障害してしまいます」(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門主任教授・川口巧さん)

脂肪肝と診断される人の多くは肝臓の30%以上に脂肪が蓄積した状態。これはエコーで判別できるのが3割レベルという話。正常値は5%未満でそれ以上は実は立派な脂肪肝。その肝臓、大丈夫?

「非アルコール性」はもう古い!「MASLD」という新名称。

脂肪肝の原因はアルコール由来(ALD)とそれ以外。後者の脂肪肝はNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)と呼ばれていたが、MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)と名称が変更。

「非アルコール性というのは約40年前にできた名称で、当時は飲酒=脂肪肝が常識でした。ところがお酒を飲まないのに脂肪肝になる人が増えてきて、糖質の過剰摂取や運動不足による代謝障害が原因と分かってきたんです」

脂肪肝から移行する肝炎は従来のNASHからMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)に。ちなみにアルコール関連肝炎の場合は肝硬変を経て肝がんに至るケースが多いがMASHは肝硬変を経ずに肝がんを発症することがある。

肝臓がんになるまでの図

脂肪肝に端を発し、肝臓に炎症が起こると行き着く先は肝臓がん。とくにMASHの場合はアルコール関連と異なり、肝硬変になる前にがんが発症することが多いという。

脂肪肝から炎症へと至るメカニズムが明らかに。

では、肝臓に過剰な脂肪が蓄積されるとなぜ炎症が起こるのか?その詳しいメカニズムが分かってきたという。

「肝臓の細胞の中に脂肪が溜まってくるといろいろなストレスが細胞にかかってきます。さらに脂肪が蓄積されると細胞が耐えきれずに爆発して、炎症を引き起こすDAMPsという物質を出すんです。DAMPsは異物ですからリンパ球などの細胞がこれを食べ、その結果、炎症が起こります」

炎症が起こった後には線維化という現象が生じ、肝臓が硬くなってますますその機能が低下する。

脂肪が溜まりすぎて爆発。シュールなことが肝臓で起こっている。

脂肪肝の炎症メカニズム

肝細胞の内部に脂肪が蓄積されると酸化ストレスや小胞体ストレスがかかり、爆発→壊死が起こる。このとき放出されるDAMPsが炎症のきっかけに。

酒を嗜み甘党でもあるMetALDがヤバい理由。

お酒由来の脂肪肝はALD、お酒をあまり飲まない脂肪肝はMASLD。では、お酒をそこそこ飲んで甘いものも大好きという場合の脂肪肝は?

大量飲酒の基準は1日に純アルコール60g以上の摂取。これに相当する脂肪肝がALD。一方、健康に害がないといわれる飲酒量は1日に純アルコール20〜30g程度。こちらの場合の脂肪肝がMASLD。ちなみに純アルコール20gはビール500mL。日本酒1合。

「この中間にあたる人たちはこれまで見過ごされていました。でも2023年に新しくMetALDという名称がついたことで、今注目を浴びています。習慣的に純アルコールを40g程度摂っていて甘党でもある人は要注意です」

男性で週に純アルコールを210〜420g、毎日飲むと仮定して1日30〜60g程度の中等度飲酒の脂肪肝がMetALD。ビールロング缶2本、日本酒2合、ワイングラス4杯、焼酎グラス1杯飲む人、ヤバいかも。

数値で分かる危険な兆候ALT FIB-4。

2023年に日本肝臓学会が「奈良宣言」なるものを発表した。これはALTという肝臓の血液検査値が30U/Lを超えたら医師の受診を勧める呼びかけ。ALTは肝細胞に存在する酵素で細胞が損傷すると血液に漏れ出てくる物質。

「これまでは健診で30U/Lを超えても病院に行きなさいとは言われませんでした。基準値を決めたときはMASLDという概念もありませんでしたし飲酒量の基準も今より甘かったからです」

この他、FIB—4インデックスという肝臓の硬さを表す指標もある(詳しくは一般計算サイトへ)。

脂肪肝を肝炎に移行させないために早期のチェックを。

    セルフチェック!
    • 脚がつる
    • 倦怠感
    • 皮膚や白目が黄色っぽい
    • カラダがかゆい
    • 出血したとき血が止まりにくい
    • ここ数年で体重が5㎏以上増えた

    「脚がつる」のは最も早期の兆候。肝臓に蓄えられている糖質の放出が不足し、筋タンパクが分解されて脚がつる。それ以下は肝炎がかなり進行した段階で表れる症状。早期発見にはALTなどの数値を優先のこと。