
Profile
なかもと家(なかもと・け)/(写真中央から時計まわりに)父・中本隆太郎、母、長男、長女、次女の5人家族。2020年5月、インスタグラムで〈なかもと家 @nakamoto.ke〉のアカウントを開設。何気ない日々の暮らしを投稿していたところ、1枚の写真が海外ブランドのグローバルキャンペーンに起用され、一躍注目を集める。現在も、ユーモアあふれる日常を発信し続けている。
※写真左上は、〈BLUE LUG HATAGAYA〉の自転車メカニック・デジタルさん
東京・調布市にある、3階建ての屋上に建つ開放的な平屋。そこに暮らすのは、5人家族のなかもと家。彼らの物語は、自転車とともに始まった。
「以前、不動産会社で働いていたとき、僕はピストバイクで内覧を回っていたんです。自転車の方が早いという理由で乗り始めたけど、だんだんおもしろくなってきて。新宿の会社から柏の物件まで漕いで、いったん帰社して、また千葉まで走るなんて日もありました。車で送迎できないから、お客さんにとっては地獄ですよね(笑)」

父・隆太郎さんは、20代の頃、バックパッカーとして世界を放浪した経験を持つ。その自由な精神はいまも変わらず、なかもと家の笑顔あふれる暮らしの源になっている。

旅の途中でギターに出会い、いまも折に触れ弦をつま弾く。写真左〈マーティン〉の「バックパッカーギター」は、ユーコン川の雄大な旅を共にした。
そう話すのは、なかもと家の父・中本隆太郎さん。ある日、内覧に来たお客さんが、のちに妻となる女性だった。
「恋人と別れたから新しく家を探すと言って、彼女も自転車で内覧に来たんです。自転車好きという共通点で意気投合して、彼女がその物件に入居したあとすぐに付き合い始めました。しかも3ヶ月で退去して、同棲をスタート。契約違反で、管理会社にはすごく怒られましたけど(笑)」

なかもと家は、インテリアも持ち物も、どれもカラフルで楽しい。

妻は、かつてユニバーサルスタジオジャパンのキャストを務めたり、ダンサーとして活動していた。根っからのエンターテイナーで、夫を笑わせようと見せたおどけたポーズが、インスタグラムでの投稿写真につながった。
そのとき二人が居を構えたのは、渋谷区幡ヶ谷。新宿まで電車で5分という便利な立地ながらも、落ち着いて暮らしやすく、こだわりの店が点在する街でもある。
「自転車店〈BLUE LUG HATAGAYA〉が近くて、よく遊びに行きました。何を買うわけじゃなくても、『これいいね。でもまぁ、次の給料が入ってからだな』とか言いながら。〈BLUE LUG〉が運営するカフェ〈LUG HATAGAYA〉にもよく通ったし、僕らの家にメカニックやスタッフが遊びに来たこともあります」

ルーフバルコニーには大きなバスタブがあり、お風呂にもプールにも大変身。子どもたちにとって、最高の遊び場になっている。

昨年生まれたばかりの長男も、にぎやかな家の中で元気にすくすく成長中。

遊び心いっぱいのなかもと家では、自転車のタイヤさえオブジェのように楽しげに表情を変える。
その後、長女を妊娠したのを機に、なかもと夫妻は調布市の平屋へ引っ越した。次女と長男も生まれ、現在は5人でにぎやかに暮らしている。
最近は、長女がひとりで自転車に乗れるようになり、長男の首も座った。それをきっかけに、5人そろって自転車で出かけられるように。次女は隆太郎さんの自転車に、長男は母がおぶって。それが、いまのなかもと家のスタイルだ。

この物件最大の見どころは、なんと100㎡もの広さを誇るルーフバルコニー。四季折々の表情を楽しみながら、ゆったりと心地よい時間を過ごせる贅沢な空間だ。
この日、家族みんなで自転車に乗って向かったのは、自宅から5分ほどの場所にある美容室〈studio UC〉。2024年初冬に現在の場所へ移転し、オーナーの中村明博さんが、日々手を動かしながらDIYで内装を整えつつ、店を営んでいる。

5人そろって初めて自転車でのお出かけ。

長女と次女は、この日が美容室デビュー。ちょっぴりドキドキしながら、お店のドアをくぐる。
「移転前の店舗は、壁がボルダリング用になっていて、最初は何の店かわからなかったんです。変な店だなと気になっていたら、中で髪を切っている様子が見えて。それで、『髪切ってください』って飛び込みました」
そのときのことを、中村さんはこう振り返る。
「店を閉めている時間に、3回くらい来てくれたんです。でも基本は予約制なので、最初の3回はお断りしました。そこまで断るとだいたいみんな諦めるんですけど、隆太郎さんはその後もグイグイ来て(笑)。さすがにそこまで通ってくれる人はなかなかいないので、4〜5回目でお受けして、それからのお付き合いですね」

オーナーの中村さんは、障害物コースを足をつかず転倒せずに走る自転車競技「トライアル」の経験者でもあり、最近は1日70km歩いたり、川をパックラフトで下ったりと、休日もアクティブに活動している。
隆太郎さんが「変な店」だと感じたのは、多趣味な中村さんのユニークなセンスが、そのまま店の空気に滲み出ているから。現在の店舗でも、壁や天井には仕事と直接関係のない道具が所狭しと吊るされている。
自転車も中村さんの趣味のひとつで、フレームやパーツも並び、一見すると自転車店と見間違うほどだ。
「前の店舗では自転車を外に置いていたので、よく間違われていました。『パンク直せますか?』とか、『鍵を失くしちゃったので開けてください』って言われたこともあります(笑)」

大学で工業デザインを学んだ中村さんのお店には、DIYの道具が多く揃う。自転車や楽器、旅のアイテムも混ざり合い、個性的な空間になっている。

必要なものはなんでも手作り。この自転車中央に装着した自作のフレームバッグは、パックラフトを漕ぐときにはバウバッグに変身する優れものだ。

通勤も、隆太郎さんは自転車で移動。
普段の隆太郎さんは、JR矢野口駅近くのサイクルカフェ〈CROSS COFFEE〉で店長を務め、なかもと家の暮らしを支えている。
「稲城市は“自転車の街”としても知られています。高尾まで続く定番コース〈尾根幹〉のスタート地点になっていて、うちの店の向かいにあるローソン稲城鶴川街道店は、土日の朝になるとロードバイクが30〜40台くらい停まっています。それから、年に一回、多摩川の河原で〈稲城クロス〉というシクロクロスのイベントもあって、ここ数年でだいぶ人気が出てきていますね」

ライドの待ち合わせに、食事や飲み物の補給に、仲間を求めてライドイベントに。〈CROSS COFFEE〉には、それぞれの目的に合わせてあらゆるサイクリストが訪れる。

オーナーの棈木亮二さんがヨーロッパで出会った味を再現したホットチョコレート。ベルギー産チョコを使った濃厚な味わいで、メニューには「バナナトプロテイン」もあり、ライドの合間の補給にもぴったり。
“サイクリストの聖地”とも呼ばれるほど、多くのローディが集まるこの街で、〈CROSS COFFEE〉はコミュニティハブとして親しまれている。隆太郎さんは接客や調理のほか、サイクルジャージやヘルメット、シューズの販売、ライドイベントの企画まで手がける。
「都心みたいに仕事の合間の休憩で来る場所じゃなくて、自転車好きが遊びに来る場所なので、山小屋で働いているような気分になりますね。でも、僕はロードバイクには乗らないので、僕が企画するのは『婚活ライド』のようなゆるいイベント。バイクパッキングのトークショーをやったこともあります」

台湾ブランド〈KPLUS〉のヘルメットは、本格的なロードバイクにもカジュアルな街乗りにも対応。カラー豊富で人気が高く、デザインやフィット感は店頭で試せる。
ピストから入り、いまは家族と一緒に乗るのが楽しいという隆太郎さんが好むのは、ロードバイクではなく生活に根差した自転車だ。一体、どう違うのだろうか。
「ロードバイクに楽しく乗るには、日々体を鍛えておかないと、仲間と一緒に走るときに辛いだけなんです。だから、やり始めは絶対に辛い。僕はそれを乗り越えられなくて。家でインドアトレーニングするなんて、性格的に無理だから。それでも、ヘルメットやシューズの販売をするから、お客さんに教えてもらいながら知識がついて、話だけはめちゃくちゃ走れそうなやつになりました(笑)」

カッコいい車を見つけて購入し、その後に妻が免許を取得したというから、その行動力には思わず驚かされる。最近は、自転車を運べるよう〈Thule〉のキャリアを設置した。

チャイルドシートは、かつて長女の特等席。いまは次女が座り、子どもの成長に合わせて役割を変えるのが、なかもと家の自転車。
隆太郎さんが通勤に使うのは、折りたたみができて小回りの利く〈BROMPTON〉。一方、家族と出かけるときは、〈Rivendell Bicycle Works〉の《Clem Smith Jr.》だ。
長女の誕生をきっかけに、子どもを乗せられて、なおかつカッコいい自転車を探して選んだ。幡ヶ谷に住んでいたころから、〈BLUE LUG HATAGAYA〉で密かに狙っていた一台だという。

長距離レースのブルベにも挑戦する、自転車メカニックのデジタルさん。ロングライド用の自転車はもちろん、ご自身にもお子さんがいることから、子どもを乗せる自転車も得意な頼れる存在。
「《Clem Smith Jr.》は、チャイルドシートを付けたり、買い物した荷物を載せたりと、日常づかいに最適な車種です。中本さんが購入したころは、ちょうど〈BLUE LUG〉で〈Rivendell Bicycle Works〉の取り扱いが始まったばかり。日本ではまだほとんど乗っている人がいなく、これから広めていこうというタイミングだったこともあって、よく覚えていますね」
そう教えてくれたのは、〈BLUE LUG HATAGAYA〉の担当メカニック・デジタルさん。

調布に越してからなかなか訪れる機会がなかったが、家族そろって久々に来店。

1930年創業のオランダ・GMG社が開発したチャイルドシート〈Yepp〉。独自の合成樹脂で快適な乗り心地を実現し、安心して子どもを乗せられる。付け外しも簡単で使いやすさも大きな魅力だ。

ハンドルはスイープバックが大きめで、リラックスした姿勢を保ちやすく、安定感も抜群。

クラシックなスタイルの〈Rivendell Bicycle Works〉には、〈Brooks〉のレザーサドルがよく似合う。使い込むほどに味わいが増し、体に合わせて少しずつ変形することで、乗り心地も向上する。

反射材アクセサリーをスポークに簡単装着。夜道も安心、にっこり笑顔でご機嫌に。
〈BLUE LUG HATAGAYA〉は、〈Rivendell Bicycle Works〉のような日常に便利なエブリデイバイクから、カッコいいピストバイク、山で遊んだり旅にも行けるタフな一台まで、ラインナップは実に幅広い。アパレル、バッグ、雑貨類もそろい、まさに自転車界のデパートのような店だ。これほど質が高く豊富な品揃えを誇るショップはそうとない。
代々木公園、上馬、鹿児島にも店舗を構え、それぞれ個性あふれるスタッフがそろっているから、自分の好みに近い人に相談できるのも魅力だ。
「デジタルさんに、ロングライドするための相談をしたとき、必要だった小さなネジをくれたんです。『いい人だな、この人なら信用できる』って思ったのを覚えています。いま思えば大した物じゃなかったんですけど(笑)。そのあと家にも遊びに来てくれて、一緒に稲城を走りに行きました」
こうして、日々の生活や仕事、人生の分岐点にも、なかもと家の暮らしにはいつも自転車があった。
「自転車があったから妻と出会えたし、車を持つまでは、自転車にまつわる流れにだけ乗っていれば、いろいろうまくいっていたんです。正直、車なんかいらないと思っていたくらい。まぁ、一度車を持つと乗っちゃうんですけど(笑)。でも、改めて家族で並んで走ってみたら、やっぱりすごい楽しくて」
子どもたちと過ごす時間にも、欠かせない存在だと隆太郎さんは言う。
「幼稚園の送り迎えを自転車ですると、子どもって、そういうときに限っておもしろいことを言うんです。お互い顔を見ずに、前を向いて並んで進んでいると、いろんな話しができる。10分くらいの短い時間なんだけど、そのときの会話をふと夜に思い出して、うれしくなるんですよね」
これからも、なかもと家の物語は、自転車とともに続いていく。

インスタグラムに投稿したこの写真は、アメリカのフットウェアブランド〈KEEN〉の広告に起用され、ニューヨークの街角に大きなポスターとして掲出された。

〈BICYCLE SPECIFICATIONS〉
フレーム:Rivendell Bicycle Works – Clem Smith Jr. H Style
クランク:Rivendell Bicycle Works – Silver Crankset
ペダル:MKS – Lambda Pedal
ハンドル:NITTO – B353 Bosco Bar
ステム:NITTO – Tallux Stem
サドル:BROOKS – B17 Standard
チャイルドシート:Thule – Yepp Nexxt Maxi
スタンド:PLETSCHER – Double Kickstand
フロントラック:NITTO – Rivendell Big Front Rack 34F (Silver)













