“脱衣所で見るアレ”こと「温泉分析書」の読み方。

温泉の脱衣所に掲示されることの多い「温泉分析書」。そこに書いてある内容を読み解けるようになると、また新たな温泉の楽しみが生まれる。今回は基本的な表示の見方に加え、掲示が義務づけられている「禁忌症」についても解説。

取材・文/石飛カノ イラストレーション/イマイヤスフミ 取材協力・監修/早坂信哉(東京都市大学人間科学部教授、医師)

初出『Tarzan』No.914・2025年11月6日発売

教えてくれた人

早坂信哉(はやさか・しんや)/東京都市大学人間科学部教授、医師。温泉療法専門医、博士。日本健康開発財団温泉医科学研究所所長。メディア出演や書籍などを通じて温泉や入浴に関する健康効果を広く発信している。

温泉分析書の項目を簡単解説。

ところ違えば湯も異なる。例えば、東北の湯治場の湯は真っ白だし、北関東の湯は透明だけどピリピリするし、東京近郊の湯は真っ黒で、九州には真っ青な湯もあるそうな。

ひと口に温泉と言っても含まれる化学物質などによって泉質はさまざまで効能も異なる。まずは温泉の脱衣所に掲げられているアレ、その温泉の釣り書きである「温泉分析書」の読み解き方を知ることから始めたい。

泉質分析書

1.泉温

地中から湧き出した湯を採取したときの温度。温泉法によれば25度以上なら自動的に温泉であり療養泉。化学成分の条件を満たせば25度未満でも立派な温泉。温度による泉質分類は下の通り。

温度による泉質分類

  • 25℃未満…冷鉱泉
  • 25〜34℃未満…低温泉
  • 34〜42℃未満…温泉
  • 42℃以上…高温泉
2.陽イオン・陰イオン

湯の中に電荷を帯びたイオンの形で溶け込んでいる成分。マイナスの電荷を帯びた陰イオンとプラスの電荷を帯びた陽イオンの2種類がある。mgは温泉1kg中に含まれているイオンの質量、mvalはイオンの電気量を指す。

3.pH値

pH値は酸性・アルカリ性を示す数値。pH7が中性、それより下は酸性、上はアルカリ性。弱酸性から弱アルカリ性までは負荷が低く低体力者でも問題なく入れる。酸性とアルカリ性は出浴後、洗い流す必要あり。

ph地による分類のグラフ、0−3酸性、3−6弱酸性、6-7中性、8弱アルカリ性、9アルカリ性

4.遊離成分

湯の中に分子の形で溶け込んでいる成分のこと。固体のものと気体のものがある。二酸化炭素はアルカリ性のときは炭酸イオンになるが酸性や中性の湯では分子のまま溶け込んでいると考えられている。

5.泉質

実はここだけ見れば、温泉の正体が丸わかり。最も量が多い陽イオンと陰イオンを連ねて表記。また、mval%が20%以上のものがあれば副成分として表記する。

()内の低張性とは体液と比べた濃度のことで、体液と同じなら等張性、それより薄いと低張性、濃いと高張性となる。続いてpHと湯温が表記されているのでここで全貌が分かるのだ。

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知っておきたい3つの禁忌症。

1948年に施行され、温泉分析書の掲示を義務づけた温泉法は、逆に温泉に入ることで健康を損なう可能性がある「禁忌症」についてもその掲示を義務づけている。

禁忌症には3つの種類がある。

ひとつは温泉全般に当てはまる禁忌症。病気の活動期などがこれに当てはまる。ただし、2014年には「妊娠中の女性」が除外され、悪性腫瘍に関しても「体調が良ければ問題ない」と改訂された。

もうひとつは泉質別禁忌症。こちらは酸性泉と硫黄泉の2つに限られたもので、どちらも皮膚や粘膜の過敏な人や皮膚トラブルのある人が対象。

3つ目は含有成分禁忌症で、浴用ではなく飲用対象。腎不全や高血圧などの症状を抱えている人に注意を促している。

それぞれの禁忌症に思い当たる節がある場合は、必ず医師と相談のうえ、安全な温泉浴を。

1.温泉の一般的禁忌症 
  • 病気の活動期(とくに熱のあるとき)
  • 活動性の結核、進行した悪性腫瘍または高度の貧血など身体衰弱の著しい場合
  • 少し動くと息苦しくなるような心臓または肺の病気、むくみのあるような重い腎臓の病気
  • 消化管出血、目に見える出血があるとき
  • 慢性の病気の急性増悪期
2.泉質別禁忌症 
  • 酸性泉・硫黄泉…皮膚または粘膜の過敏な人、高齢者の皮膚乾燥症
3.飲用の禁忌症 
  • ナトリウムイオンを含む温泉を1日1L以上
    塩分制限の必要な腎不全、心不全、肝硬変、虚血性心疾患、高血圧など
  • カリウムイオンを含む温泉を1日1L以上
    カリウム制限の必要な腎不全、副腎皮質機能低下症
  • マグネシウムイオンを含む温泉を1日1L以上
    下痢、腎不全
  • よう化物イオンを含む温泉を1日1L以上
    甲状腺機能亢進症