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ただ「気持ちいい」だけじゃない。温泉がもたらす7つのメリット。

多くの人が温泉の効果を実感するのには理由がある。専門家が挙げるのが、ここで紹介する7つの条件。この条件を知れば、温泉選びや宿探しにも役立つはず。

取材・文/石飛カノ 撮影/下屋敷和文 取材協力・監修/早坂信哉(東京都市大学人間科学部教授、医師)

初出『Tarzan』No.913・2025年11月6日発売

教えてくれた人

早坂信哉(はやさか・しんや)/東京都市大学人間科学部教授、医師。温泉療法専門医、博士。日本健康開発財団温泉医科学研究所所長。メディア出演や書籍などを通じて温泉や入浴に関する健康効果を広く発信している。『医師が教える温泉の教科書』(早坂信哉著・朝日新聞出版刊)

1.温熱|血流の力で老廃物がデリート。

お湯に浸かってしばらく経つと皮膚に赤みがさし、カラダが芯から温まってくる。これは皮膚の毛細血管が広がって血流が促されている証拠。

全身を構成している37兆個の細胞は絶え間なく活動している。その細胞に酸素や栄養を運ぶのが血液の役割。さらには細胞が活動することによって生じる老廃物を回収するのも血液のもうひとつの仕事でもある。

血流がよくなることでカラダは温まり、細胞が化学反応を起こしてエネルギーを作り出す。同時に体内の老廃物が血液によって押し流される。これが入浴の温熱効果だ。

2.浮力|日常の筋肉の緊張をリリース。

湯船に肩まで浸かると、カラダが軽くなったような感覚が得られる。これは浮力による効果。浮力を簡単に説明すると、液体の中に物体を入れたとき、物体が上に向かって押される力のこと。水面に物がプカプカ浮かぶのは浮力が働くからだ。

そしてこの浮力、水に浸かっている部分の体積が大きいほどパワーが大きくなる。湯船に肩まで浸かると体重は陸上のおよそ10分の1に感じられるという。陸上で筋肉や関節は重力に耐えるために常に緊張しているが、お湯の中では浮力によってリラックスした状態になりやすい。しっかり肩まで浸かろう。

3.蒸気・香り|喉が潤い、気分もリフレッシュ。

温泉地のそこかしこでもうもうと立ちのぼる湯けむり。浴槽内に贅沢にどどどーっと注ぎ込まれる掛け流しの湯。単に旅情がそそられるだけではない。その蒸気は鼻や気管にプラスの効果をもたらしてくれる。

鼻や気管の奥にある線毛細胞という細胞は、毛状の突起を動かすことで外部から侵入してきた異物を排出する役割を果たす。最もシンプルな免疫機能で、線毛細胞が蒸気で潤うとその働きが活性化する仕組み。

さらに硫黄に代表される湯の香りや檜などの浴槽の香りはリラックス効果をもたらす。こうして入浴後は気分もスッキリ。

4.粘性・抵抗|適度な運動効果が得られる。

お湯の中ではカラダが軽く感じるというのにアラ不思議、腕を素早く動かそうとしてももたもたとスローな動作しかできない。これは水の粘性・抵抗作用のせい。水は空気に比べて粘り気があるため、カラダを動かそうとすると陸上の3〜4倍の負荷がかかるといわれている。

ならば好都合。粘性・抵抗作用を利用してトレーニングすればいい。これがいわゆるアクアビクスの理屈。

ただし、自宅での入浴なら湯の中でバシャバシャ動いても問題ないが、温泉では静かに腕や脚を動かす程度で。これだけでそれなりの運動効果が得られる。

5.水圧|下半身の静脈血の循環が活発に。

静止している水は水中にある物体の表面に圧力をかける。これが静水圧と呼ばれるもの。水深が深くなるほど圧力は増すので、とくに下半身が締め付けられることになる。これがまたラッキーな効果を生む。

陸上で立った姿勢では下半身には全血液量の約70%が集まっている。通常はふくらはぎの筋肉がポンプ役となって静脈血をせっせと心臓に戻すのだが、長時間の立ち仕事などではその力も及ばず、血流が滞りがちに。

そこで利用したいのが水圧。下半身が締め付けられ血管が細くなることで血液は心臓へ押し戻され、むくみも解消する。

6.清浄|角質が柔らかくなり汚れスッキリ。

湯船に浸かることで皮膚表面の角質が柔らかくなり、毛穴が開いて全身の汚れが排出されやすくなる。シャワーだけに比べて湯船に浸かる方がその効果がより望めるので、カラスの行水ではもったいない。

自宅での入浴の際もこの物理的効果が狙えるが、温泉の特定の成分は皮脂と反応して高い清浄効果を発揮することが知られている。後ほど詳しくご紹介するが、これがいわゆる「美人の湯」と呼ばれる所以。

ボディタオルに石鹸やボディソープを含ませてゴシゴシ洗う必要なし。ただ湯にじっくり浸かればそれでよし。

7.解放・密室|非日常体験で心身が解放される。

誰にも邪魔されない自分だけの時間と空間で得られるリラックス効果、それが「解放・密室」作用だ。相反する意味だが、お風呂という密室空間で心身の疲れを解放するという意味。

家族で暮らしているとひとりきりになれる環境はなかなか確保できない。自宅での入浴の場合はそれが確保できるので、自動的に非日常な時空体験となる。

温泉の場合でそれが可能なのは家族風呂や部屋に付いた露天風呂など。他人に邪魔されないプライベート空間で視界の先に絶景が広がっていれば、もうこれ以上の「解放・密室」効果はないだろう。