“第2の永久歯”インプラントとは?〈きぬた歯科〉に聞いてみた。

聞いたことはあれど、実態はよくわからないことも多いインプラント。治療法や金額、間違いない医者選びなどについて、“看板の人”でお馴染みの、〈きぬた歯科〉きぬた泰和さんに聞いてみた。

取材・文/河野友紀 撮影/内田紘倫

初出『Tarzan』No.913・2025年10月23日発売

インプラントのイラスト
教えてくれた人

きぬた泰和(きぬた・やすかず)/1966年生まれ。歯科医師。医療法人社団きぬた会理事長。日本医科大学新潟生命歯学部卒。東京都江戸川区葛西の歯科医院勤務を経て96年に八王子市に〈きぬた歯科〉を開業。「看板広告」でも知られ、現在全国に250以上の看板を立てている。

見た目も使用感も“天然の歯レベル”。

インプラントって、痛そうだし高そうだし、怖くない? そんな素朴な疑問を、4万本以上のインプラント治療を行ったという、TVや看板でおなじみの歯科医師のきぬた泰和先生にぶつけてみた。

「この治療法は1965年にスウェーデンで実用化されたことがきっかけで世界に広がりました。日本に入ってきたのは80年代前半ですが、国内ではなかなか広まらなかった。僕が開業した96年あたりから徐々に選択する人が増え、2015年あたりがピーク、今は横ばいという感じです」

インプラント治療の一番のメリットは、見た目も使用感も、天然の歯とほぼ同じ、ということ。

「実は僕も6本入れており、違和感はありません。一般的にメーカーのインプラントの保証は10年。でも適切な口腔ケアをしていれば、20年以上使用できます。顎の骨にネジを埋め込むと聞くと痛そうですが、当然麻酔もしますし、ここが重要なのですがクリーンルームでの手術で痛みの原因になる感染も防げる。親知らずを抜くより痛くないという人もいます」

先生曰く、インプラントの最大のデメリットは、治療費の高さ。

「ただ入れ歯やブリッジとは比較にならない咀嚼力があり、周囲の天然歯を傷つけることもない。僕としては、歯を失った場合の治療はインプラント一択です!」

Q.インプラントってなんですか?

A.顎の骨にチタン製のネジを埋め込み、その上に人工歯を取り付ける治療法のこと。

「本来インプラントは、“体内に植え込む人工物”の意味。歯科分野では、顎の骨にチタン製の人工歯根(インプラント体)を埋め込み、その上に人工歯を装着する治療法が“インプラント”と呼ばれています。チタンの表面に存在する〈酸化チタン層〉には骨と直接結合するという性質があり、それを利用したのがこの治療法。骨と一体化するため、使い心地も天然歯と変わらず、使用中のストレスもほぼありません」

インプラントの構造

覚えておきたいワード

【 スクリュー固定とセメント固定 】

インプラント体と支台を連結する際、ネジを使って固定するのがスクリュー固定。セメント固定は歯科用の接着剤を使う方法。前者は上部構造を外せるが、後者は外しにくい。

【 1回法と2回法 】

インプラント体を埋めた同日に支台も連結させることで、手術が1回で済む方法。2回法はインプラント体を埋め骨と結合するのを待ち、もう一度手術をして支台を埋入する方法。

【 ワンピースとツーピース 】

インプラント体と歯を連結させる支台部が一体化しているのが「ワンピース」型、分かれているのが「ツーピース」。ワンピースは価格が安いが、微妙な角度調整などはできない。

Q.どんな人が使う治療法ですか?

A.主に、“歯根ごと歯が抜けた人”が使います。

「むし歯や歯周病といった疾患で、歯根ごと歯が抜けてなくなった人向けの治療法です。また、先天性の病気により歯が連続して生えない症状の人も利用可能。同じ症状の場合、ブリッジや部分入れ歯といった選択肢もあります。ただ、インプラントは顎の骨にしっかり固定されるので自分の歯に近い嚙み心地が実現でき、さらに見た目も自然に仕上がるところが長所。ちなみに歯根がある場合は、主に差し歯治療になります」

入れ歯の構造

ブリッジの構造

残る歯に金属製のバネなどを引っ掛け固定する部分入れ歯は、嚙み合わせの安定が維持しにくい。失った歯の両隣の歯に、人工歯を橋のように渡して固定するブリッジは、両隣の健康な歯を削る必要があるのが難点。

Q.やっぱり高いんでしょうか?

A.価格は平均30万〜40万円。自由診療ですが医療控除も。

「インプラント治療は保険適用外になるので、施術費用が高額なのは事実です。インプラント体や人工歯自体が、チタンやセラミックといった素材などの観点から高額であることも、施術費の高さにつながっています。ただ、還付される金額は人によって異なりますが医療費控除が受けられます。また一度に治療費を払うのが難しい場合は、デンタルローンという方法も。治療費を理由に諦めている方は、検討を」

Q.治療って、どのくらいの期間かかりますか?

A.一般的に約2か月半で完了!

「歯が抜けた場所の歯肉を切開し、その下にある骨に穴を開け、インプラント体を埋入。このインプラント体が骨と結合します。普通は2か月半で結合します。ちなみに下の2から4の間、必要であれば仮歯の装着も可能です。ただ、歯磨きでインプラントを埋めた上の歯茎を刺激することで血行が良くなり、その血行の良さがチタンと骨の結合を促すという側面もあるので、治療過程で必ずしも仮歯を付ける必要はありません」

2回法&ツーピースの場合。
  1. 顎の骨の量と質を調べるため、レントゲンやCT撮影を行う。
  2. インプラントを埋め込む。
    → 1〜2週間後に抜糸。約2か月半かけて、インプラントと骨が結合するのを待つ。
  3. 支台の装着。
    → 人工歯の型取り、嚙み合わせチェック。
  4. 人工歯装着。
    → 2〜3週間後に人工歯を装着し、治療終了
  5. 定期検診

Q.この治療が向いていない人はいる?

A.ヘビースモーカーと、骨粗鬆症の薬「ビスフォスフォネート」を服用している人は避けましょう。

「タバコに含まれるニコチンとタールによって血流が悪くなり、さらに血液内の酸素を運ぶ能力が減るため、結果インプラント体と骨が結合しにくい環境になってしまいます。骨が薄い、または柔らかい人も、カルシウム剤を使うことで今は施術可能です。ただ骨粗鬆症の人用の薬“ビスフォスフォネート”を服用している人は壊死のリスクが高く、全く不可能なわけではないですが注意が必要。医師とよく相談を」

Q.歯科医を選ぶポイントを教えて!

A.以下の4つは絶対に確認しましょう。

「僕は30年近く第一線にいますが、今最も伝えたいのは、良質な医師を選ぶために、患者側も知識を持ってほしいということ。低品質のインプラントを使った施術や、歯が割れたり抜けたときの保証がゼロ、また毎月1万円からの定期検診を義務付けるような歯科医もあります。質の良い歯科医を探すには、下の4つを確認すること。“使用インプラント体のパンフレットをください”と言っても出さないような医者は、信用してはダメです」

確認したいこと。
  • 契約書があるか。
  • どこのメーカーのインプラントを使っているか。
  • 保証期間と内容(どこまで保証されるのか)。
  • 定期検診はいくらかかるのか。