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違いが分かれば動きが変わる!「歩く」と「走る」を比較しよう。

着地と蹴りの繰り返し。だけど、歩くと走るは大きく違う。違いを正しく見極めたら、動きの質も大きく変わる。重心の移動や足首の使い方、受ける衝撃の差を理解することで、歩き方・走り方が見えてくる。

取材・文/神津文人 イラストレーション/ヒライノブマサ 取材協力/アシックススポーツ工学研究所

初出『Tarzan』No.912・2025年10月9日発売

接地|両足が浮く走りと、両足が接地する歩き。

ランとウォークは、スピードだけが異なるものだと勘違いしている人もいるかもしれないが、そもそも動作が大きく違う。

「両者の大きな違いは、両足が同時に地面につくか否かです」と、アシックススポーツ工学研究所の市川将さん。

例えば、競歩とマラソンの違いを見れば明らかだ。競歩では両足が同時に地面から離れると、ロス・オブ・コンタクトという反則になる。つまり、どちらかの足が地面に接していないと“歩き”とは見なされない。

常にどちらかの足が地面にあり、両足がつく場面もあるウォーク。両足が地面から離れる瞬間があるのがラン。まずは、根本的な違いを覚えておこう。

歩く

歩く動きをするイラスト

片足支持の局面と、両足支持の局面が交互に繰り返されるのがウォーク。両足が必ず接地している瞬間があるのだ。

走る

走る動きをするイラスト

シンプルに説明するならば、ランは片足でのジャンプ動作の繰り返し。蹴り出した後に、両足が地面から離れる瞬間がある。

足首|足首を曲げて伸ばすのは、歩きの動き。

「歩くときの足はまず、足首が背屈(足首が曲がっている状態)して踵から前方に着地。その後、足裏全体がべたっと地面につき、最後は足首が底屈(足首が伸びた状態)し、爪先が地面に残ります」

この背屈と底屈と呼ばれる動きを繰り返すことが歩行動作。一方、ランでは足首は背屈したまま足裏全体で着地し、地面からその衝撃をもらって前に進んでいくのが基本となる。

歩くときと同じように足首を曲げて伸ばして走ってしまうと、ふくらはぎの筋肉に頼る動きになる。スピードが出ないうえに、長い距離を走り続けるのも難しい。

ウォークとランで足首の動きを意識してみると、その動きの違いがよく分かるはずだ。

足首の曲げ伸ばすイラスト

速度も関係するが、ランよりもウォークのほうが、足首の背屈・底屈動作が大きくなる。走った後にふくらはぎが張る人は、歩くときと近い動作をしているかも。

重心|ボールみたいに弾んで走り、卵のように転がって歩く。

両足が地面から離れる瞬間があるランと、どちらかの足が常に地面と接するウォークでは、重心の動き方も大きく違う。

「片足でのジャンプ動作を繰り返すランでは、ボールがポンッと弾むように重心が移ります。一方のウォークは、跳ねて進むわけではないので、喩えるなら卵がゴロンと転がるような動きになります」

卵が転がるような動きの連続であるウォークでは、重心の上下動による位置エネルギーを前方へ進む運動エネルギーに変換しているという特徴がある。

一方、ボールがポンッと跳ねて着地し、その地点ごとでエネルギーが変化していくランの場合は、重心の持つ位置エネルギーと運動エネルギー変換の関連はあまり成り立たない。

歩くときと走るときのボールでイメージ

歩行時に限れば、位置エネルギーと運動エネルギーの総和は一定。上下の動きを抑えればエネルギー変換が円滑にでき、ロスなく前に進める。上図のように、歩く際は卵のように転がるが、走る際は球のように跳ねていく。

衝撃|走ったときの地面反力は、歩いたときの倍以上。

地面反力とは、着地時に足が地面を押す力に対する反作用として、地面から受ける力のこと。

「もちろんスピードやフォームに影響される部分もありますが、着地時に、ランの場合は体重の約3倍、ウォークの場合は約1.3倍の力を受けることになります」

ウォークの方は緩やかに2回、着地して地面からもらう力のピーク(足裏全体が地面に接地したときと、踵が地面から離れ前足部に体重がかかったとき)があるのも特徴的だ。

地面から受ける力が大きいランは、その分、ケガのリスクも高くなる。体重が重い自覚がある人や、脚の筋力が不足している場合は、まずはウォークから始め、徐々にランへと移行していこう。

動作と地面反力および接地時間。

動作と地面反力および接地時間の図

白い曲線がランを、黒い曲線がウォークを表している。接地時間はランのほうが短く、着地時に地面からもらう反力はランのほうが大きくなる。体重がある人ほど衝撃は大きい。

アシックススポーツ工学研究所調べ