in-dとマンチェスター・シティ | そのユニ、どこの? vol.1

ユニフォームには、選手や監督、サポーターが積み重ねてきた歴史と、その地に根付いたカルチャーが詰まっている。この連載では、ひたむきに一つのチームを応援し続ける人々に注目。お気に入りのユニフォームを纏ってもらい、一途な愛を掘り下げます。第1回は、ラッパーのin-dさんが登場。プレミアリーグに所属するフットボールクラブ、マンチェスター・シティについて語ります。

取材・文/小川陸 撮影/園山友基

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Profile

in-d(インディー)/1993年生まれ。ヒップホップグループ・THE OTOGIBANASHI’Sに所属するラッパーで、クリエイティブクルー・CreativeDrugStoreのメンバー。

Tarzan Web
まずは、マンチェスター・シティを好きになったきっかけから教えてください。
in-d
「2011/12シーズンの劇的優勝をリアルタイムで観たから」ではなくて、2016年頃に友人が突然、俺が“水色が好き”という理由でマンチェスター・シティのユニフォームをプレゼントしてくれたのがきっかけです(笑)。

サッカー自体は幼稚園から高校に入るまでやっていたので、ヨーロッパのクラブも選手もそれなりに知ってはいたけど、海外リーグの試合をリアルタイムで観たことはありませんでしたね。

でも、ユニフォームをもらってから「そういえば、2011/12シーズンの劇的優勝をYouTubeで観たことはあったな」と少しずつ興味を持ち始めたタイミングで、ちょうどペップ(ジョゼップ・グアルディオラ)の監督就任が重なったので次第に応援するようになりました。

Tarzan Web
シティズン(マンチェスター・シティのサポーターの愛称)になる前のマンチェスター・シティの印象は?
in-d
正直、全然わからなかったです。小さい頃は海外のスーパースターのプレイ集をVHSが擦り切れるほど観ていたんですけど、中学校に入って音楽や洋服にも興味を持ち始めた分、サッカーに対する熱量が低くなってしまい、高校生の頃には情報が全て止まっていたというか。

当時は海外といえばイタリアのイメージが強かったし、憧れていた選手もセリエAの選手でした。プレミアリーグもクリスティアーノ・ロナウドが出てきた頃だったので、マンチェスター・ユナイテッドやアーセナルとかの印象が強かったです。

Tarzan Web
ちなみに、小さい頃に応援していたクラブはなかったのでしょうか?
in-d
特になかったんですよね。小学生の頃は、ゲームもアニメも漫画もほぼ通らないくらい本当にサッカーに夢中で、“プレーしていた人ほど熱狂的に観てきていない”っていうのは、“サッカーやってた人あるある”だと思っています(笑)。

それに当時、実家に海外サッカーをリアルタイムで観られる環境がなかったし、年齢的にもリアルタイム観戦は難しかったから、海外クラブを応援するという考えすらなくて。日本代表やワールドカップの試合を中心に観ていましたね。当時好きだった選手はヨハン・クライフ(アヤックスやバルセロナで活躍した元オランダ代表)でした。

Tarzan Web
それでは、マンチェスター・シティを応援してきたこの10年弱で最も好きな選手を教えてください。
in-d
ベルナルド・シウバ(ボルトガル代表のMF)が、プレイもキャラクターも一番好きですね。

大袈裟に聞こえるかもしれないし、ペップのおかげもありますが、ボックス トゥ ボックス(自陣のペナルティボックスから敵陣のペナルティボックスまでをカバーする運動量豊富な選手を形容する用語)という言葉では片づけられないタスク量なのに怪我もせず、近代フットボールを変えた選手の一人だと思っています。

Tarzan Web
特に思い出深いシーズンはありますか?
in-d
2022/23シーズンはプレミアリーグ、FAカップ、チャンピオンズリーグのトレブル(1シーズンに3つの主要大会で優勝すること)を達成して本当に嬉しかったんですけど、パッと思い出すのは2021/22シーズンなんですよね。

アストン・ヴィラに勝てば優勝の最終節、キャッシュとコウチーニョに決められて0-2で諦めかけていたら、76分から5分で3ゴールして大逆転という最高のフィナーレで。

2011/12シーズンの劇的優勝をリアルタイムで観れなかったシティズンとしての悔しさがあった分、2021/22シーズンで同じような瞬間を味わえたのは忘れられません。

Tarzan Web
忘れられない試合となると、その2021/22シーズンの最終節でしょうか?
in-d
そうですね。あとは、トレブルの2022/23シーズンに初めて現地観戦したエティハド スタジアム(マンチェスター・シティのホームスタジアム)でのリヴァプール戦です。

個人的には、その頃のチーム状況をあまり良いと思っていなかったのですが、4-1で大勝してから上がり調子になった気がして、シーズンのターニングポイント的な試合としても覚えています。

Tarzan Web
エティハド スタジアムの雰囲気はいかがでしたか?
in-d
なんとなく、シティズンはコップ(リヴァプールのサポーターの愛称)やグーナー(アーセナルのサポーターの愛称)と比べて大人しい印象だったんですけど、やっぱり当日も熱気はあれどバカ騒ぎではなかったですね。

とはいえ、マンチェスターの中心部でご飯を食べてからトラムに乗ってスタジアムに向かうまで、どんどん周りの熱がエレベーションしていく感じは凄かったです。前日にスタジアムツアーに行けたのも感動しました。

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Tarzan Web
日常的には、どのように応援していますか?
in-d
最初の頃は観ていない試合もあったんですが、わりとすぐにシーズンを通して全試合をリアルタイムで観るようになり、基本的には自宅で1人ですね。ただ仕事柄、週末の夜中にライブがあることが多いので、その場合は次の日中に追っかけで観ています。

それまでは極力SNSを遮断して、LINEも開くと勝手にアルゴリズムでニュースが出てくるから薄目で返信しています(笑)。あとは、今はどのクラブも強くビッグゲームのような試合が毎節あり、1日に観たい試合が複数開催される時はプレミアリーグ好きの友人たちと一緒にパブで観ることがありますね。

Tarzan Web
観戦の際は、ユニフォームを着ますか?
in-d
自宅では、開幕節やダービーなど気合の入る試合を観るときに着るくらい。パブで観るときは着て行くことが多いかもです。
Tarzan Web
日常的にユニフォームを着ることはありますか?
in-d
パブに行くときを含めると、ライブでも着ることがあるので1ヶ月で2〜3日くらいですかね。ライブは、大事な舞台だからこそ好きなものを着る感覚です。
Tarzan Web
ユニフォームを着用する際は、どのようなスタイリングを意識していますか?
in-d
色を合わせたりすることは考えますけど、普段通りのスタイリングに組み込んでいる感じです。

ここ数年、街でユニフォームを着ている人を見かけることが増えた実感はありましたけど、ブロークコア(スタイリングにユニフォームを取り入れるトレンド)って言葉は最近まで全然知らなくて、俺の場合は本当に好きだから着ているだけですね。

Tarzan Web
現在、マンチェスター・シティのユニフォームは何着ほど持っていますか?
in-d
ちゃんと数えたことはないですけど、20着くらいだと思います。
Tarzan Web
毎シーズン、ユニフォームは購入されていますか?
in-d
1シーズンで1.8着くらいの感覚ですね。早い段階でアウェイやサードを買ったあと、結局「水色を買わないでどうするんだ」と、シーズン途中でホームも買っています。
Tarzan Web
今季はいかがですか?
in-d
ラヤン・シェルキ(フランス代表のOMFで、今季加入した新10番)のサードを買いました。シェルキは、シティに加入前から追っていたんですけど、見ているだけで楽しいトリッキーなプレースタイルと、ペップのチームにはあまりいないストリートな感じが好きなんですよ。
Tarzan Web
なぜホームではなくサードを選んだのでしょうか?
in-d
プレーと同じようにユニフォームのデザインもトリッキーなものが好きなのですが、シティのユニは単体で見るとわりと堅実なデザインが多くて、買っても全然着ていないものも正直あります。

だからこそ、今季のサードは初めて見た時からめっちゃ良いと思ったんですよね。日本でも現地でもシティズンの間では評判が良くないっぽいんですけど、着ていると周りの友達からは褒められるので良かったです(笑)。

Tarzan Web
毎季、固定の選手のユニフォームを購入するタイプですか?
in-d
そのシーズンに期待している選手を選んでいて、これまではエデルソン、グリーリッシュ、ラポルテ、アグエロ、ロドリ、フォーデンなどを買ってきましたね。
Tarzan Web
今季のプレミアリーグの順位予想はいかがですか?
in-d
どのクラブも良すぎて、どこが降格するかも分からないシーズンでシティは立ち上がりから苦しいですけど(取材時、3戦1勝2敗)、優勝を願っています。
Tarzan Web
最後に、マンチェスター・シティの魅力とは?
in-d
やっぱり、ペップという監督の存在は大きいです。一度フットボールからプレーをするのも観るのも離れている間に、彼は偽サイドバックだったり新しい戦術をどんどん生み出して、なかば浦島太郎状態でした。

個人の打開力というよりも、どのメンバーでも再現性のある時代と状況に応じた新しい戦術を、サポーターとして間近で観ることができるのは魅力ですよね。たまに、劇場型やロマン系に憧れることはありますけど(笑)。

今、シティはいろいろと問題を抱えていますが、監督が誰になろうと、状況が大きく変わろうと、何が起きても“心のクラブ”なので応援を辞めることはありません。ただ、自分が好きになってからは強いシティだけを観てきたので、苦戦している今の状況はキツいし、負けた時は最悪の気持ちで1週間を過ごしています。

それでも、他のクラブを応援してきたサポーターの方々は、冬の時代を経験しているからこその感情もあるだろうし、サポーターとしては応援することしかできませんから。

とにかく、どのタイミングでどこのクラブを好きになろうが、好きであればなんでも良いと俺は思っています。応援できるクラブがあること自体、めちゃくちゃ素晴らしいことだと思うんです。

クラブ情報

マンチェスター・シティ

創設年:1894年
本拠地:イングランド・マンチェスター
愛称:マンシティ / シティ

1880年にイングランド・マンチェスターで母体となるクラブが結成され、1894年に現在の名称に変更。以来、ホームユニフォームにはスカイブルーを採用している。初タイトルは1904年のFAカップ優勝で、1936/37シーズンには初のリーグ優勝を果たす。その後、国内外のカップ戦を何度か制するも、1980年代から2000年代にかけては冬の時代を迎え、3部まで降格したシーズンも。しかし、2008年にUAEの投資グループに買収されると、2010/11シーズンにFAカップを35季ぶりに優勝し、2011/12シーズンには44季ぶりのリーグ制覇を達成。2016/17シーズンにジョゼップ・グアルディオラが監督に就任以降は、全シーズンでトップ3圏内をキープし、2022/23シーズンには悲願のUEFAチャンピオンズリーグ制覇を含む歴史的な3冠を達成した。