名品と呼ばれる英国伝統のSUVをマイカーにする喜び。
昭和のシティボーイは、「いつかはクラウン」と夢を語ったが、令和のシティボーイたちにとって、それは「いつかはレンジ」らしい。そんな念願を昨年2月に叶えたのが、代々木八幡にあるセレクトショップ〈サプライ トーキョー/バックドア〉の共同オーナー、深味翔さんだ。
「洋服も家具も、名作と呼ばれるものには、可能な限り触れてみたいなと思っていまして。クルマで言ったら、それは間違いなくレンジローバーかなと。途轍もない高級車でありながら、荒野をものともしないオフローダー。それでいて、英国紳士のように慎ましいデザイン。絶妙なバランスのもとに成り立ったプロダクトだと思います」
確かにクラシックレンジと呼ばれる初代レンジローバーは、MoMAに永久収蔵されてないのが不思議なくらいにグッドデザイン。ファッションシーンで注目されるデザイナーたちも自身のインスタグラム上で、ムードボードとして、その写真を連投するほど。でも、深味さんの愛車は、2002年に登場した3rdレンジの略称で呼ばれる一台だ。
「僕にとって初代はクラシックすぎる気がして。90年代〜00年代初頭の雰囲気を持った洋服が好きなこともあり、3rdレンジのシティな面構えがちょうどいいなと。でも実はミックス型なんです。もともとはBMWエンジンを搭載した3rdの初期型なんですが、ライトまわりやグリルなどのフェイス、20インチのホイールなどは3rdの後期型に替えているんです。これは、BMXのカスタムから始まって、いろんなブランドと面白い服を作っている〈ミンナノ〉の店主、中津川吾郎さんが手がけたもの。わかる人にしかわからないカスタムを施した究極の一台を格安で譲ってもらったものなんです(笑)」
大袈裟に言えば、今をときめくプロダクトデザイナーが手を加えた不朽の名作家具みたいなもの。そんな完璧な一台を初めてのレンジで手に入れられるなんて正直羨ましい!
「見た目はもちろん、走りもパーフェクト。重量が2.5tもありますし、ねっとりと力強く加速するので、高速道路でスピードを出しても安定感が半端ない。しかも、ボンネットの両サイドにキャッスルコーナーと呼ばれるものが備わっているので、両辺角を認識しやすく東京の狭い道を走るのも不安がない。燃費は悪いですが、そこだけ目を瞑れば、こんな最高なクルマはないですよ」
話を聞けば聞くほど、3rdレンジへの欲求が高まる。しかも、中古市場では、100万円台で手に入ると聞く。「いつかはレンジ」と思いきや、実は「気軽にレンジ」なのだ。
LAND ROVER RANGE ROVER VOGUE
- 全長4,950×全幅1,955×全高1,900mm
- エンジン=4,398cc、水冷V型8気筒DOHC
- トランスミッション=5速AT
- 燃費=5.7km/ℓ(10モード/10.15モード)
- 乗車定員=5名。
Owner
深味 翔(〈SUPPLY/BACKDOOR〉共同オーナー)
1983年、山梨県生まれ。2011年、井岡千浩さんとweb上のセレクトショップ〈サプライ トーキョー〉をスタート。2014年に実店舗〈バックドア〉をオープン
























