見た目はトレンディ、中身はファット《BMW 325i》|クルマと好日

アウトドアフィールドに、あるいはちょっとした小旅行に。クルマがあれば、お気に入りのギアを積んで、思い立った時にどこへでも出かけられる。こだわりの愛車を所有する人たちに、クルマのある暮らしを見せてもらいました。

撮影/伊達直人 文/豊田耕志

初出『Tarzan』No.843・2022年10月6日発売

欧州セダンの王道、BMW 325iを選んだのは、傑作エンジンに惚れたから。

ブー、ブロロッ。トレンディなルックスとは裏腹にファットなエギゾースト音を響かせるこのクルマは、BMW 325i。ハンドルを握るのは、雑誌やカタログで“AMANO”名義でクレジットされるメンズグルーマーの天野紘一さんだ。

「僕にとって、クルマは移動手段であり、遊び道具。仕事現場に向かう30〜40分、ダラダラ運転するよりも、運転する行為そのものが楽しいほうがいいなぁと、昔乗っていたゴルフGTIが教えてくれまして。一時期、家族のことも考えて、スバルのレガシィに乗っていたこともありましたが、やっぱりあの体験が忘れられず、VWと同じドイツ車に戻ってきてしまいました」

六本木のカローラと呼ばれたBMW 3シリーズの第4世代のE46系。エンジンは、自然吸気の直列6気筒。シルキーシックスと呼ばれるエンジンを搭載したBMWの傑作であり、ユーロセダンの王道だ。

人はうるさいと言うけど、この低音こそがBMWの魅力。

「最近は外車も日本車もEV化の一途を辿るなかで、ガソリン車のエンジンの最高傑作を今味わっておかなきゃと、妙な使命感に駆られて。それを積んだ車種としては最終系である2005年式の325iを選びました。走りですか? ドイツ車らしい地を這うような走行感がたまらなくいいですね。その感覚を2倍増しにしたく、車高をほんのり下げて。シルキーシックスならではの、低く唸るような排気音をもっと強調するため、マフラーはイタリアの老舗メーカー〈スーパースプリント〉のものに変更。でも、僕は走り屋では決してないので、ホイールは、3シリーズの1クラス上の《M3》純正のホイールを嵌めて、あくまでトレンディな見た目は崩さずに。まだまだカスタムは途中の段階ですけどね」

お気に入りスポットは、やっぱり首都高。仕事前にちゃっかり乗って、スポーティな走りを満喫するそう。

「シルキーシックスは、エンジンの回転数を上げると走りが格段に良くなるといわれてまして。しかも、僕の325iはオートマですが、その手の好き者のためにマニュアルモードも備わっている。だから、首都高に乗ったら、すぐさまそれに切り替えて、2速、3速くらいでエンジンの回転数を目いっぱい上げて運転する遊びをしょっちゅうやっちゃいますねぇ(もちろん法定速度ですが)。あぁ、今俺クルマを操っているんだなぁと妙な感慨が込み上げてきて、それもすごく楽しいんですよ(笑)」

クラシックなガソリンエンジンが奏でるクールな排気音やエンジンに思いを馳せる。男のロマンを詰め込んだBMWは、EVが当然という未来が来るまで、天野さんの相棒であり続けるはずだ。

BMW 325i

当時の新車価格は、約500万円。中古車市場では、車両本体価格が70〜80万円台で手に入る。

ステアリングの中心には、エンブレムが凜々しく輝く。もともとはドイツ空軍用にエンジンを開発していた会社だけに、そのアイコニックなデザインはプロペラを表しているとも。

上質な革を使ったレザーシートを筆頭に、車内は黒で統一。さりげなくあしらったウッド調パネルやシフトレバーがトレンディ。

マフラーはイタリアの老舗マフラーメーカー〈スーパースプリント〉製にチェンジ。さらに重厚感たっぷりな音が出るようになった。

  • 全長4,470×全幅1,740×全高1,415mm
  • エンジン=2,493cc、直列6気筒DOHC24バルブ
  • 乗車定員=5名
  • 燃費=9.4km/ℓ(10モード/10.15モード)
Owner

天野紘一(メンズグルーマー)
1977年、千葉県生まれ。ヘアアーティストのKA
NADA氏に師事し、2007年独立。ファッション誌を中心にグルーミングを手掛ける。床屋開業計画中。