上重聡(アナウンサー)「目指すは奇跡の45歳」
「助けてください」から道が開けた。弱音を吐き出し、仲間と笑い合う。上重聡が目指す45歳のスタイルとは。
取材・文/今井恵 撮影/内田紘倫
初出『Tarzan』No.907・2025年7月17日発売

Profile
上重聡(かみしげ・さとし)/1980年、大阪府生まれ。局アナ時代は『ズームイン!!サタデー』MC、『22年冬季北京五輪』『箱根駅伝』『プロ野球中継』などで活躍。著書『怪物と闘ったPLのエース』(竹書房)。
フリー転身の1年目で帯状疱疹に罹患。
現在45歳。43歳の年に日本テレビを退社し、フリーアナウンサーへと転身した上重聡さん。PL学園野球部時代は投手として活躍、立教大学野球部でも完全試合を成し遂げた生粋のアスリートだ。更年期など無縁に見えるが、
「あれが更年期かどうかはわからないんですが、フリーになったタイミングも重なって、退社して1年の間に2度も帯状疱疹に罹患しました。振り返ると新人アナウンサー時代にも、胃潰瘍や突発性難聴になっていて。もしかして僕は弱いんですかね(笑)」
長年野球で心身ともに鍛え上げたせいか、精神的には強い。それだけに無理をしてしまい、どうやらカラダが悲鳴を上げたようだ。
「男には弱い部分を見せるのが格好悪いという意識がありますよね。フリーになってスケジュールが埋まらないという時期も弱音が吐けず、開き直って“仕事をください”とも言えず。夜、眠れなくなり、食欲もなくなりました」
老化を笑い、仲間と目指すは奇跡の45歳。
転機は意外なところで訪れた。
「帯状疱疹になった後、『ダウンタウンDX』のフリーアナウンサー大集合SPに出演させていただき、他の方々が“仕事が増えました”“給料が何倍になりました”と話すなか、僕は全然そうじゃなくて。格好つけても仕方ないと吹っ切れて“助けてください。僕、仕事がありません!”と正直に話しました。浜田さんが明るくいじってくれて(笑)、オンエアの翌日、仕事が30件も来たんですよ」
強がっていても自分がしんどいだけと気づいた上重さん。そう気づいたら、帯状疱疹も治っていた。
「同じ年で仲がいい松坂大輔とも若い頃は互いに弱音を言い合えなかった。でも彼が引退前、怪我に苦しみながら少しずつ心のうちを吐露するようになり、僕も彼に弱音が吐けるようになりました」
さらに素敵に年を重ねたいと考えた時、女優の吉永小百合さんが浮かんだ。彼女の健康法に倣って週に3、4回ジムで泳いで心身をリフレッシュしている。自分らしいペースが生まれると、すべてが自然と前向きに解放された。
「先日、松坂が俳優の名前を思い出せず“あれだよ、あれ”を繰り返して大笑い。俺のほうが若いとか、気楽に話せる関係が本当にありがたいです。だから更年期を楽しみながら、奇跡の45歳と呼ばれる自分を目指してみようかと」