
デザイナー・丸山新さんの、空手に欠かせないコスメ。|ささやかだけど、大事なこと。 vol.8
気持ちよく汗をかくときにこそ使いたいコスメやアイテムがある。日々身体を動かしているあの人がどんなものを愛用しているのか、アクティビティに同行して紹介。第8回はデザイナーの丸山新さんが空手の前後で使う3つのアイテムの話。
取材・文/佐々木彩 編集/黒木許子 撮影/五十嵐一晴(ロケーション)、鳥羽田幹太(プロダクト)

Profile
丸山新(まるやま・あらた)/デザイナー。宮城県出身。セントラル・セント・マーチンズ美術大学コミュニケーションデザイン科卒。イギリスにてハンズ・ディエター・ラハイト氏に師事後、スイスへ渡り、キアッソ市立美術館のアートディレクターや、南スイス州立大学SUPSIのデザイン・コラボレーターを経て帰国。デザインスタジオ&Formを設立。アイデンティティデザインを軸に、ブランドの本質をビジュアルコミュニケーションによって可視化する。
丸山新さんは週に1回、子供2人と共に空手の稽古に勤しんでいる。親子で一緒に取り組むアクティビティとして空手を選び、かれこれ7~8年継続している。
「ヨーロッパで仕事をしていた時期が長かったのですが、現地では日本の伝統文化がとてもリスペクトされます。帰国したら子供達にも積極的に親しんでいってほしいと考えていました。日本文化を深く理解するための習い事として、剣道や柔道、茶道、華道と様々なものを検討したのですが、僕自身が以前から武道に興味を持っていたことと、たまたま近所に世界中から空手家が稽古を受けに来る河崎典夫先生がいらしたことから、空手を習うことを決めました」
稽古は通常、子供も大人も混ざった大人数で一緒に受ける。仕事が忙しくて行けない時もあるが、やめようと思ったことは一度もないという。
「自分の中で、続けることに重きを置いています。強くなっていくこと以上に、精神を鍛錬し、動く禅とも言われる日本文化に接することが目的です。ご指導いただいていると、先生は一体どれだけの時間を積み上げて、このブレない力強いかたちに到達したのだろうかと、ただただ感じ入ります。稽古は、河崎先生の空手を目の前で見て、自分の肉体と精神に向き合える貴重な時間です」

稽古のはじめは正座をし、集中力を高める静謐な時間に。
道場に入ると、教える側と教えられる側がいて、独特の緊張感が流れる空間が生まれる。
「“間合い”という言葉がありますが、空手に限らず、剣道や茶道にも同じように“間”の存在がありますよね。行為だけでなく精神性も整え鍛えていく側面が、他のスポーツとは大きな違いであり、私が求めていたことだと思います」
これまでたくさんのスポーツに触れ、現在もサーフィンやテニスを楽しんでいる丸山さん。
「サーフィンは波に触れ自然との一体感を得るもので、テニスはゲーム性があって勝ち負けがはっきりしている。そして、多くのスポーツは繰り返すことで経験値が上がるため、慣れによってプレイできる部分があるけれど、空手は全くアプローチが異なります。内省的であり、その日の自分の心の有り様が如実に出る。それこそが、空手の魅力です」

河崎先生に倣って次々と型をきめていく。
「型を見ると、できそうな気がするんです。でも、全然簡単じゃない。調子がいい時と悪い時は、自分でもはっきりわかりますし、先生にも見抜かれる。集中しきれてないとか、雑念があるとか。その日の稽古の中で、心と身体がしっかりと重なり納得のいく型が1回できるかどうか。そのくらい難しいと思います。」

長男の市晶くん、長女の十和ちゃんと共に、親子3人で稽古に励む。
先日、丸山さんが昇級審査を受けよるべきかと河崎先生に相談したところ、もう少し稽古を重ねることを勧められたという。
「先生にいつも言われるのは、審査はいま自分がどこまで達しているかを見るもので、帯を取ることが目的ではないということ。そして、じっくり、かたちを作っていきましょうということ」

拳を受けても、先生の体はびくともしない。強靭な肉体を目の当たりにする。
汗だくの稽古の後は、化粧水、石鹸、シャンプー&コンディショナーでさっぱりするのがルーティーン。日本以上に環境保全への意識が高いヨーロッパでの生活が長かった丸山さんは、コスメを選ぶときも、なるべく自然に配慮した製法のものを手に取っている。そして、どれも家族皆で使えるものばかり。
「特に石鹸やシャンプーなどは、排水後に河川に負荷がかからないものを選ぶようにしています。スイスで暮らしていた時に、近所の方々が『下水処理がされても完全にきれいな水質になるわけではないから』と使うものにすごく気を配っている姿を目にして。それ以来、自分でも意識するようになりました」

稽古終わりは、河崎先生と一緒にお互いの日々の出来事をおしゃべりする。
全体のデザインにも関わっている〈セラリー〉の化粧水はさっぱりとしたつけ心地ながら、潤いもしっかりと与えてくれる。
「ヘアメイクアップアーティストの松井里香さんが作る化粧品で、奈良の薬草、大和当帰を配合しています。香りもよく、細かいミストが気持ちいい肌あたりです」
洗顔は固形石鹸を愛用している。
「何年も通っている箱根の温浴施設〈天山湯治郷〉のオリジナル石鹸です。余分な化学物質が入ってないし、汗を洗い流すにはこれで十分。いくつもストックしています」
天山の目の前には須雲川が流れていて、排水処理後にここに流れ込む水が生態系をこわすことがないように、自然に優しい素材でつくられている。

日帰り温泉の先駆けとして多くのファンを持つ「天山湯治郷」の石鹸。液体ソープだと合成界面活性剤が水質に影響してしまうため、固形石鹸に行き着いたというこだわりの逸品。
シャンプーとコンディショナーは、〈余〉を愛用。
「いつも通っている〈ヘア サロン プラハ〉の代表である大川さんに教えてもらったものです。環境に最大限配慮したケミカルフリーの製品で、ユーカリやティーツリーなどのオーガニックのエッセンシャルオイルが配合され、香りも強すぎなくて好みです」

日本人の髪質に合わせた処方で、植物由来のアミノ酸系洗浄成分によるシャンプーとコンディショナー。(写真は詰め替え用パウチ)
丸山さんは、空手を行うことで、己の気持ちの有り様を意識する瞬間が増えたという。マインドフルネスのような側面もあるが、自分が立っている場所や進む道などの物差しができたと感じているそう。
「今何をしたいのか、なぜこれをやっているのか、そういったことを考える癖がついたように思います。段位だけで言えば、すでに息子にも抜かれているんです。でも、これからもマイペースで、自分に向き合う時間として空手を続けていきたいと思っています」

こんなアイテムも、おすすめです。
空手の前後に使いたい丸山さんの愛用コスメに着想したアイテムを、Tarzan Web編集部が見つけました。
スプレー式化粧水
水にこだわったしっとり処方
固形石鹸
日本産植物がキー成分のソープ
シャンプー&コンディショナー
髪も自然も健やかに保つ