高級車だろうとワイルドに乗りこなしたい《ポルシェ カイエン》|クルマと好日

アウトドアフィールドに、あるいはちょっとした小旅行に。クルマがあれば、お気に入りのギアを積んで、思い立った時にどこへでも出かけられる。こだわりの愛車を所有する人たちに、クルマのある暮らしを見せてもらいました。

撮影/伊達直人 文/豊田耕志

初出『Tarzan』No.820・2021年10月7日発売

《カイエン》だろうと躊躇せずに。ジーンズのように付き合う。

「まさか人生で《カイエン》に乗る日が来るなんて。一度も想像したこともありませんでした」。

ブティックホテル〈K5〉のPRに、兜町の文脈をひもとくウェブマガジン『Kontext』の編集。フレッシュに生まれ変わった兜町まわりの広報活動に日々尽力する大倉皓平さんは、思いもよらぬきっかけからポルシェのSUV、カイエンSのハンドルを握ることになった。

「ちょうど子供が産まれるタイミングで。“さぁ、クルマが必要になったぞ”と、ちょっと焦りながら、中古車屋を覗きに行ってみたら、このカイエンSがあった。予算は約200万。値札に並んだ数字はまさかの190万円……。手頃なSUVを買おうくらいの軽い気持ちだったのに、その出合いに運命を感じて後先考えずにポルシェドライバーになる道を選んでしまいました(笑)」

しかも、自宅マンションの機械式駐車場の寸法にもバッチリとハマるサイジング。我ながらいい買い物をしたぞ! と思っていた大倉さんにまさかの落とし穴が。

「なんと重量オーバーで駐車場に入れることができなかったんです。そんなことあるの? って泣きましたが、それだけ重量があるっていうのは、裏を返せば、どっしりと頼もしいことの証し。他で駐車場を借りることになってしまいましたが、それも度外視できるほど我が家の大黒柱的な存在になってます」

そんな彼のカイエンSをまじまじと眺めてみると所々に傷がある。

「どんなに高級車だろうと、ジープやランクルのような四駆に変わりはない。傷一つつけず大切に乗るよりも、ぶつけても擦っても気にしない。ワイルドに乗りこなした方がこのクルマらしい使い方なんじゃないかと。買って3年ほどですが、実は洗車もほとんどしたことがないんですよ」

それは年代物のヴィンテージジーンズを観賞用として保管するのではなく、本来の道具としてガシガシ穿く感じに近い男前な考え方。逞しい体格の大倉さんに似合った、クルマとのいい付き合い方である。

「といっても、野性味溢れる場所へ行くわけでもなく、仕事で兜町へ向かうときや、犬の散歩のため近隣の公園に行くときくらいしか乗らないんですが。しかし、何度見てもバックショットがクール。もしかしたら、これを眺めるためにカイエンSを買ったのかもしれませんね(笑)」

PORSCHE CAYENNE

写真のカイエンは、初代の改良型、957型。フルタイム4WDで抜群の走破性を誇るが、ポルシェとしては、あくまで“新しいカタチのスポーツカー”。2007年式。

車高調整のためのエアサスペンションシステムを搭載。写真のスイッチで5段階に高さを変更可能。「ベタッと走りたいときは一番下のレベルに。ふわふわとした乗り心地を楽しみたいときは一番上の車高にしています。気分によって車高を変えられるのもこのクルマの面白さ」。

ポルシェのエンブレムが一際輝くステアリング。「右脳が刺激される左ハンドルなのも好きなところですね」。

フロントマスクは気品溢れるプロポーションだが、バックサイドは品格の中に男らしさが見え隠れするデザイン。「シンプルだけど重厚感があって大好きな意匠。丸みと角張りの絶妙なバランスに惚れ惚れします」。

  • 全長4,798×全幅1,928×全高1,699mm
  • エンジン=4,806cc、V型8気筒32バルブ
  • 乗車定員=5名。写真のカイエンは、初代の改良型、957型
Owner

大倉皓平(PRディレクター)
1982年、東京都生まれ。バックパッカー時代にグアテマラでゲストハウスを経営。現在はPR業の傍ら、自ら手掛けるジンジャーシロップ《peligro》も販売する。