
「机が変われば、アイデアも変わる」放送作家・白武ときおさんの気分転換と発想法。|時間割とコンディショニング
世界にはさまざまなタイムラインで働く人がいる。超多忙な生活を送りながら、溌溂に活動をしているあの人は、いったいどうやって日々、コンディションを整えているのだろう。連載3回目となる今回は、「しもふりチューブ」などの芸人YouTubeチャンネルや、『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』といったテレビ番組も手がける放送作家の白武ときおさんが登場。昼食抜きの食事法から、1日2回入浴する理由、漫画喫茶の意外な活用術とは!?
取材・文/平岩壮悟 撮影/大町 晃平

Profile
白武ときお(しらたけ・ときお)/1990年生まれ、京都府出身、テレビ、YouTube、ラジオ、デジタルコンテンツ、雑誌、広告などジャンルを問わず越境する放送作家。担当番組は「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」など。著書に『YouTube放送作家お笑い第7世代の仕掛け術』(扶桑社)。
Morning
- まず入浴、その後朝食。
- 予定がなくても、まず家を出る。
身体を温めて目を覚ますことから一日を開始。

時間割は曜日によってまちまち。ある日は朝からテレビ局へ。ある日は芸人のスケジュールの合間を縫ってYouTubeの撮影を入れる。そんなノマドな白武さんのデバイス類がこちら。MacBookは前に使っていたAirの軽さを上回るほど、作業が快適な最新のProを愛用している。
売れっ子放送作家の朝は、身体を温めることから始まる。
「起きたらまず、お風呂を沸かして白湯を飲みます。ファンケルとAGAのサプリと一緒に。30歳を超えたあたりから、生活を整えたほうがいいなと思うようになって、体に良いルールを自分に課すことにしたんです。小さいころから母親に“体を冷やすとよくない”と言われていたこともあって、今のルーティンになりました」
風呂が沸いたら、10分から15分ほど湯船に浸かる。
「基礎代謝を上げるわけです。目も覚めますしね。39度くらいの湯に入りながら、メールやLINEのチェックをします」
朝食にも定番がある。
「最近多いのは、おかゆとお味噌汁と納豆。チェーン店のハンバーガーを久しぶりに食べて、普段摂っていない脂だからか、胃に負担がかかっているなと感じたことがあって。それ以来、意識して消化しやすい食べものを選ぶようになりました。おかゆは、コンビニにあるパウチ包装されたものを家に常備しています」
食べるのは朝風呂のあと、と決めている。
「食べてから入るより、入ってから食べたほうが消化に良いという認識です。もしかしたら今は定説がひっくり返ってるかもしれないですけど、前にGoogleで調べた範囲だと体温を高めてから食べたほうが消化に良い、ということだったので採用しています」
朝食を食べ終わると10時だ。家にも作業スペースはあるけれど、昼に撮影や打ち合わせがある日は、午前のうちに外に出る。
「たとえば、マガジンハウスに行く用事があれば、先に銀座まで移動して、その近辺のカフェで作業をします。決まった店がある地域だったらそこに。行きつけのお店がない場所だったら、何も考えずに最寄りのスターバックスに入るか、もしくは、偶発性が好きなので、入ったことのない店に行くこともあります。それがチェーン店なら、“ランチタイムの椿屋珈琲にはこういう人が来るのか”とか、“駅近の猿田彦珈琲はこんな内装なんだ”とか、「カンブリア宮殿」的な視点で見たりして」
この遊牧民的なワークスタイルには年季が入っている。むしろ昔のほうが、よりノマディックだったという。
「コロナ禍に入る前は、フジテレビに行き、日本テレビに行き、TBSに行きと、毎日ミツバチみたいに飛び回るのが常でした。それがリモートワークの時代になり、出向かずに自宅で作業できる時間が増えた。だから、昔のほうがずっとノマドでしたね」

ノートはフィジカルのルーズリーフと、iPhoneの純正メモアプリ、iPadに入れたアプリGoodnotesの3種を併用している。「統一したほうがいいのかもしれないですけど、それぞれに利点があるので、その時々で使い分けています」
Afternoon
- 昼食は食べない。
- 会議中にも積極的に”内職”をする。
- 漫画喫茶は”カンヅメ”のためのオフィスとして利用。
対面の会議中でも、スマホはフル活用
昼はほとんど食べない。
「もちろん、昼マックでテンションをぶち上げたり、食べログやTikTokでそのとき自分がいる町を検索して、点数の高い店やバズっている行列店に行ったりすることもあります。友達と一緒に食べることも。でも、基本は“昼抜き”に設定しておきたいんです」
なぜか。
「現代人は食べ過ぎだと聞いたことがあります。1日3食の習慣はトーマス・エジソンがトーストを売るために“朝食”の概念を導入してからできた、という説もありますよね。タモリさんも1日1食しか食べないみたいですし。自分の実感としても、朝をしっかり摂ったら夜までお腹は空かないんです。どうにもならないほどお腹が減ったときは、バナナを食べますけど」
一ヶ月に一度の頻度で、1〜2日間のファスティング(断食)もしている。
「食がストレスの捌け口になっていた時期が長かったんです。忙しいとついつい、ストレスの発散がてらUberで爆食しちゃったり。でも、運動不足になりがちで、体重も気になるから、節制のためにファスティングを始めました。断食中はフラフラになったりすることもあるんですけど、胃から余計なものがなくなって、スッキリする感覚はありますね」
テレビ番組からお笑い芸人のYouTubeチャンネル、出版社と協働しているボードゲーム制作まで、多種多様なプロジェクトに関わる白武さんは日々、多くの会議に出席している。「かぎりなくゼロ件に近い日」もあるけれど、重なると1日に参加するミーティングの数は10件にのぼることも。それでいて、毎月100個以上の企画やネタを出しているというのは、一体どういうことなのか。多産の秘密の一端は、会議中のスマホ使いにあった。
「スマホやパソコンは会議中でもめちゃくちゃ触ります」
これはオンラインの会議だけの話ではない。対面での打ち合わせでも、白武さんは隙あらばスマホで情報を摂取し、メールを返す。
「会議の内容は耳で追いながら、自分のところにボールが来たらちゃんと返す。俺の現場では俺のことだけをしろ、という考えの人もいるので、そういう場合は、場をわきまえます。生意気だ、痛さ爆発だ、っていう見方もあるかもしれません。でも、その調べ物がその会議で活きたり、僕がもっと活躍して、いろんな現場で得た知見をそのプロジェクトに返せるほうが良いのではないかなと」
陽が暮れるころには疲れが出始め、テンションも下がってくる。そうすると白武さんは、居心地の良さそうなカフェや喫茶店に作業場を移す。
「環境が変わると、違う発想が出てくることを信じているんです。作業している机の素材や高さはもちろん、同じ部屋でも、陽の射し加減次第で発想は違ってくるはずだ、と。夜書いたラブレターを朝になって読み返したら恥ずかしい現象と同じ原理というか」
なかでも2日に一度、“通っている”と言っても過言ではないほど、頻繁に利用しているのが漫画喫茶だ。
「固定されたチェアに、黒い仕切り。雰囲気としてはさながら独房ですよね。もう、逃げ場がない。でも、余計な情報がないので、目の前の仕事に自分を追い込めるんです。最近はこの時間に、書きものや次の日提案しないといけない企画のネタ出しを集中してやることが多いです。要は“精神と時の部屋”ですね。行ったら3〜5時間作業して。その日の重いタスクが終わったら、ご褒美にちょっとだけ漫画を読みます」
適度な負荷が創造性を引き出す。ということもあるのだろう。
「流石に過度なストレスを受けていたら良いアイデアも出てこない気がするんですけど、一方で、居心地が良すぎるのもよくないな、と感じています。缶詰をするにしても、ホテルや自宅だと快適すぎて。同じ理屈で、たまにノリが合わなさそうな人と関わったり、興味の薄い仕事を受けてみたりもしています。コンフォートゾーンの外でしか得られないものもあると思うので」
身体の不調があれば、病院にはすぐに行くのだそう。
「マッサージ的なものにはいい出会いがなくて普段行かないのですが、恵比寿の頭痛外来は時々行きますね。気圧の影響で頭が重く、肩まで凝るときは、薬を処方してもらっています」

Evening
- 夕食は豆腐にパスタソース。
- 飲み会や会食の回数は最低限に。
- 就寝前に”ジャーナリング”をする。
就寝直前までがインプットの時間。


〈ニールズヤード レメディーズ〉の《アロマパルス》、乾燥肌対策にお薦めされたという〈ダルバ〉の《ホワイトトリュフ バイタル スプレーセラム》、、漫画喫茶などで1枚出して置いておくだけでも気分転換になる〈サンタ・マリア・ノヴェッラ〉の紙お香《アルメニアペーパー》はいつも携帯しているリフレッシュ3点セット。

上/カフェの喧騒が気になるときに使用する耳栓。作業中は音楽を聴くことも多い。「歌詞がわかると集中できないので日本語やわかりやすい英語以外の曲をかけています」下/現在考案中のアナログゲームのデザイン関連メモ。ノートはボックスで整理できるようにルーズリーフを採用している。
漫画喫茶から帰宅するのは7〜9時ごろ。まずは風呂に入って、ご飯を食べる。これまた、朝と同じ順序だ。
「夜も風呂は10〜15分。じっとしているのは苦手で……だから本当は入りたくない。体温を上げるために無理して湯船に浸かっているんです」
夕食は昼を抜いているから豪勢に、というわけではない。それよりも朝食と同様、効率と栄養素が優先されている。
「夜ご飯は豆腐が多いですね。ファミマとかで売っている木綿豆腐を電子レンジで湯豆腐にして、茹でた温野菜とパスタソースを和えて食べています。パスタだとつい食べすぎて太ってしまうので。その点、豆腐は低カロリーで飽きずに延々と食べられるので気に入っています」
外で食べたり飲んだり、もしない。
「誰かと楽しく飲むことは全然あるんですけど、日常的に飲んだりはしないですね。むしろ、飲み会や外食の回数はあまり増やさないように気をつけています」
7時ごろなど早めに帰宅する日は、入浴と夕飯を済ませたあと、漫画喫茶に出かけていって、もうひと作業をすることもある。そうでない日であれば、夜はインプットに充てる。
「夜にかぎらず、余暇はずっと何かを観たり読んだりしていますね。高校生の頃から“つねに見なきゃ”という強迫観念があって。”という強迫観念があって。でも、夜は紙の本か漫画を読むことが多いかもしれません。疲れるか飽きるかするまで、ずっと読んでますね」
この時間帯にジャーナリングをすることもある。
「頭にあることを紙かパソコンでバーッと書き出します。見返すことはないですけど、その日起こったことや雑念を外に引っ越し(外部化)させるような感じで、今自分がやりたいこととか、モヤモヤの正体がわかるんです。毎日ではないですけど、よくやってますね」
頭が冴えアイデアが溢れてくれば、朝の4時ごろまで作業を続けることも。とはいえ、大半の日は12時〜1時には就寝する。
「寝ると決めたら、目を瞑って、脈絡のない単語や情景を思い浮かべていきます。りんご→飛行機→デニムというように。これは認知シャッフルという睡眠法で、どこかの科学者が考案したものだったと思います。論理的な思考から離れることで、脳が弛緩して眠くなるそうです」