11月の山・雲取山|写真家・野川かさねが選ぶ今月の山
季節によって異なる表情を見せる日本の山。その時期だけに出会える風景や体験を求めて、写真家の野川かさねさんに毎月おすすめの山と、その歩き方を教えてもらいます。秋と冬の、ちょうど間。11月に野川さんが選んだのは、東京都最高峰の雲取山。
取材・文/小林百合子 撮影/野川かさね
今月の山 雲取山
標高/2,017m
おすすめコース 1泊2日
1日目/鴨沢(3時間30分)七ツ石小屋(2時間)小雲取山(30分)雲取山荘
歩行時間計:6時間
2日目/雲取山荘(30分)雲取山(2時間10分)三条の湯(3時間)お祭
歩行時間計:5時間40分
東京で一番高い山で、季節の移ろいを感じる。
山に登っていて最も胸打たれる風景は、季節が移ろう、その「間(あわい)」の時です。山を歩いていると、街にいる時よりもずっと敏感に光や空気、植物の変化を感じます。そんな感覚をより濃く味わえる山へ、自然と足が向いてしまうのです。
11月、東京ではようやく涼しい風が吹き始めます。ああ、秋が来たなと感じたら毎年、雲取山に登りたくなります。雲取山は東京都、山梨県、埼玉県にまたがる山で、東京都では一番高い山です。カエデやブナなどの広葉樹の森が広がり、11月には赤や黄色、橙色と、色とりどりの紅葉を楽しみながら歩けるのが魅力。山頂周辺ではのびやかな尾根が続き、カラマツが黄金色に染まります。
広葉樹の森が広がる山麓から中腹、針葉樹が空に向かって伸びる山頂付近と、標高を上げるにつれて、全く違う植物や風景を楽しめるのが好きです。
日帰りで登るとなるとかなり体力がいるので、私は途中の雲取山荘で一泊して、ゆっくりと歩きます。秋の山は空気が澄んで、富士山や周辺の山々がとても綺麗に見えます。夕方や明け方の空も美しくて、天気が良さそうな時はいつでも外の風景を撮影できるようにテントに泊まります。
秋と冬の、ちょうど間。山で一晩過ごしているうちに紅葉が進み、翌朝には違った風景に出会えることもあります。また季節が一歩進んだことをカラダ全体で知ることができる。そんな瞬間に立ち会えた時、山に登っていてよかったなと思うのです。
東京の山で味わう、ロングコースの醍醐味。
東京都最高峰の雲取山は、初心者向けの日帰り登山からステップアップしたい人にぴったりの山。危険箇所はないが、ほどよいアップダウンがあり、長い時間をかけて山の魅力を味わうロングコースを体験できる。
山頂付近までは森の中を歩くため、涼しくなる10月下旬から11月中旬ごろがおすすめ。11月下旬には雪がちらつくことがあるため、軽アイゼンなどの装備がない人は注意が必要。入山前に山小屋に降雪状況などを問い合わせるといい。
紅葉の見頃は10月下旬から11月下旬。山頂から山麓にかけて、カラマツやカエデ、ブナなどが色付く。
さまざまなルート取りができるので、歩行時間と体力を考慮して選択を。鴨沢から山頂を目指し、来た道を下るのもいいが、温泉が湧く山小屋・三条の湯を経由するルートもおすすめ。その場合は登山口と下山口が異なるので、登山口の鴨沢まではバスを利用する。下山時のバスの時間を確認しておくのを忘れずに。秋は日の入りが早いため、15時には目的地や下山口に到着できるように計画を。
おすすめスポット情報
三条の湯
雲取山の中腹、標高1,103mにある山小屋。渓谷沿いにある小屋には温泉が湧き、立ち寄り湯や軽食利用も可能(不定休)。宿泊やテント泊も可能なので、逆ルートで登山する際はぜひ利用を。
0428-88-0616
https://tabayama.info/reserve/lodging/三条の湯/sanjonoyu_lodge.html
奥多摩ビジターセンター
奥多摩の自然や文化、歴史についての展示を行う施設。季節の植物について学んでから山を歩くと、登山はいっそう楽しくなる。登山道やツキノワグマの出没情報なども得られる。
東京都西多摩郡奥多摩町氷川171-1
0428-83-2037
https://www.ces-net.jp/okutamavc/
鳩の巣釜めし
JR青梅線 鳩ノ巣駅すぐの場所にある釜飯のお店。山菜や川魚など、奥多摩の自然のめぐみを味わえる。自家精米して炊くごはんがおいしくて、下山後のごほうびに。
東京都西多摩郡奥多摩町棚沢375
0428-85-1970
http://hatonosukamameshi.com/