マキタスポーツ&大久保佳代子対談「歳を重ねると、諦めることに“上手”になる」

本誌『ターザン』で連載を持つマキタスポーツさんと大久保佳代子さんは、ともに50代前半。自然に年を重ねるふたりは、年齢による心身の変化とどう向き合っているのだろう。年を重ねたからこそのポジティブな変化など、エイジングをテーマに話してもらった。

取材・文/間宮寧子 撮影/幸喜ひかり スタイリスト/野田奈菜子(大久保さん)、小林洋治郎(マキタスポーツさん)

初出『Tarzan』No.880・2024年5月23日発売

マキタスポーツさん 大久保佳代子さん アンチエイジング

マキタスポーツさん

マキタスポーツ

1970年生まれ(54歳)。お笑い芸人、ミュージシャン、俳優。7月19日公開の映画『あのコはだぁれ?』出演。『東京ポッド許可局』(TBSラジオ)が放送中。著書に小説『雌伏三十年』(文藝春秋)などがある。

大久保佳代子さん

大久保佳代子

1971年生まれ(53歳)。タレント。『ノンストップ』(フジテレビ系)、『ゴゴスマ』(TBS系)、『あさこ・佳代子の大人なラジオ女子会』(NHKラジオ第一)などレギュラー番組多数。

前は飲み会の途中で“帰る”が言えなかった

マキタスポーツ
50過ぎたあたりから、不調の連続ですよ。最近は階段を下りるのが怖いんだよね。膝下がおぼつかなくて、不安になる。
大久保佳代子(以下・大久保)
私も雨の日は慎重にゆーっくり歩くようになりました。五十肩に謎の関節痛と、もうボロボロ。
マキタスポーツ
ガタが来るよね。カラダのパーツは消耗品。
大久保
でもちょっと愛おしくもあるんです。頑張っているから痛いんだよな〜って。ラクになる方法を探りながら向き合っています。

40代の頃に比べてお酒も抜けなくなりました。だから外で飲まない。前は「なんか楽しいことがあるかも」と思って遅くまで飲んでいたけど、何も起きやしないし(笑)。

マキタスポーツ
同じく。中座すると悪いと思っちゃって。で、最終的につぶれるまで飲んで、翌日ずっとローディング中…みたいな(笑)。
大久保
そう。今は「ここで帰ります」と躊躇なく言える。どう思われても自分が大事だから。基本はひとり家で晩酌です。
マキタスポーツ
消化も鈍くなるよね。僕は食いしん坊で、目は欲しがるんですよ。食欲と消化の速度が不釣り合い状態。朝食バイキングで欲張ると、昼まで満腹状態で絶望する。
大久保
満腹になると動きが鈍くなるし、気持ちも落ちますよね。

マイナスを0に戻すため、ストレッチだけはやる

マキタスポーツ
あと、お通じ問題。1日1回出ないと生き物としてダメなんじゃないかと思い、適度に歩こうとか、野菜を食べようとか、お通じを意識した生活するようになった。
大久保
私はわりと快調です。朝起きたら掃除機かけて、顔洗って歯磨きして、美顔器かけて。コーヒー飲んで新聞を読み始めると、決まってトイレに行きたくなります。
マキタスポーツ
ルーティンがあるんだ。
大久保
ルーティンに囚われる人間になどなりたくないって思っていたんですよ。でも、こなす気持ちよさが年齢とともにわかってきちゃった。週3回ほどユーチューブ見ながら運動もしています。30分動くだけでだるさが取れてスッキリ。
マキタスポーツ
僕はストレッチ。緩んだり硬くなったりしたところを少しだけ正すつもりで。無理なアンチエイジングっていうのはどうも性に合わない。

カラダを鍛えてプラスに持っていくのではなく、老いを受け止めつつ、マイナスをゼロに近づけよう、という意識です。

大久保
マキタさんが鍛えたり、たるみを取ったりしたら、良さが消えちゃうもんね。年相応の色気と哀愁を背負ったままでいてほしい。
マキタスポーツ
我々、仏像みたいなもんですから。侘びて寂びてきてなんぼみたいなところありますよね。
大久保
私はまだ老化に抗ってはいますよ。白髪も隠しますし、美顔器も使う。なんならリフトアップとかも興味ありますもん。
マキタスポーツ
外見を整えることは、自分の戦闘力を高めるというか、鼓舞することにもなるよね。
大久保
そう。鏡見て「お、いいんじゃない」って思えれば、活動的にもなるし、ご機嫌でいられる。

“そっと生きる”意識が芽生える頃なのかも

マキタスポーツ
大久保さんは、ここからどんな年の重ね方をしたい?
大久保
ああ、どうしようか(ため息)。痛いおばちゃんにはなりたくない、というのはありますね。なるべく今の感覚をキープするために、世の中に向けてアンテナを張り、俯瞰で自分を見られる状態にしておくことは大事だろうなと。

そのためにはメンタルも肉体も健康じゃないといけない気がする。となるとやっぱり健康第一ですね。

マキタスポーツ
その感覚わかるな。キープするために何をすべきか、逆算的に考えるよね。以前ある女優さんに「いつまでもお若いですね」と言ったら、「そんなことないです。私、そっと生きているだけです」って返ってきたのが印象的で。

その方は舞台の合間にいつもストレッチしていて、スーパーフードとか食べて、きちんとしているの。そっと生きるって、残りの命を大切に使うってことなのかなと。そろそろ“そっと生きる”意識が芽生える頃なのかもしれない。

大久保
飲みに行かず家で晩酌するのも、そっと生きる方向に向かっているということなのかも。若い時に比べてエネルギーがないから行動は変わってくるけど、悪いことばかりじゃないですよね。
マキタスポーツ
うん。最近、公園にある健康器具で背中を伸ばしたりするんだけど、あの器具って若い頃は意味あるのかなって思っていた。でも効くんですよ。

なんでもそうで、無味だと思っていたものに、味を感じられるようになってきた。今はほんのちょっと塩が入った白湯でも十分おいしい。幸せを感じられることも増えたかもしれない。

大久保
私は感情が揺さぶられなくなったんですよね。バラエティで失敗して収録後に自分を責めた時期もあったけど、今はすぐ忘れられる。

年とともに自分に課すハードルが下がって、諦め上手になれたんです。もう悩んで眠れないこともないからラク。まあ、単純に眠りが浅くはなりましたが。

マキタスポーツ
酒の力で寝て、おしっこしたくなって起きたらもう眠れなくなる、なんてことはよくあるね。
大久保
ヤダ、昔は人を想って眠れない夜だってあったのにね(笑)。