【ランナー・川内優輝】フォトグラファーを魅了する“記憶に残る走り”
長年、さまざまな競技で取材を続けるスポーツフォトグラファー、岸本勉さん、中村博之さんが写真を通じて、“アスリートの素顔”に迫る。第六回は岸本勉さんが捉えた【ランナー・川内優輝選手】。
撮影・文/岸本勉
走っている時の表情やレース直後のぶっ倒れる姿、もちろん彼が発する言葉も面白く、魅了された
2023年秋、ベルリンマラソンではキプチョゲ(ケニア)が2年連続6回目の優勝を果たした。その2週間後、キプトゥム(ケニア)はシカゴマラソンで2時間0分35秒という世界記録で優勝。男子マラソンは2時間切り時代に突入目前なのだ。
しかし記録だけじゃない、記憶に残る走りをするランナーがいる。公務員ランナーからプロランナーになった現状打破でお馴染みの川内優輝である。
2012年の東京マラソンにおいて川内は失速した。結果は14位と振るわず、ロンドンオリンピック出場は遠のいた。レース後の記者会見が終わると深々と一礼をする川内がいた。そしてその翌日、川内は応援してくれた人への誠意を見せるため頭を丸めて記者の前に現れた。
丸刈りにすることが良いか悪いかの話ではないが、ビジュアル的にもキャラ的にも、フォトグラファーの筆者にとってこの選手は今でいう「推し」が決定的になった瞬間だった。
それ以降、事あるごとに川内選手を撮りに出かけた。
走っている時の表情やレース直後のぶっ倒れる姿、もちろん彼が発する言葉も面白く魅了された。2016年の福岡国際マラソンではこちらが想定している以上に全てを出し切ってぶっ倒れた。1人で立ち上がれないくらい全てを出し切っていた。必ずしもその一連のアクションが良い成績になるとは限らないのだが、撮っていて本当に楽しかった。
私生活では同じランナーの(水口)侑子さんと結婚、現在は1児の父になった川内選手。まだまだプロランナーとして活躍をしている。また近いうちに、あの苦悶の表情で走る姿やレース後の笑顔を撮りに行くつもりだ。
フォトグラファー・岸本勉
岸本勉(きしもと・つとむ)/1969年生まれ、東京都出身。10年余りスタッフフォトグラファーとして国内外の様々なスポーツイベントを撮影。2003年に独立、「PICSPORT(ピクスポルト)」を設立。オリンピックは夏季冬季合わせて14大会、FIFAワールドカップは8大会、ほか国内外問わず様々なスポーツイベントを取材。2015年FINA世界水泳選手権カザン大会より、オフィシャルFINAフォトグラファーを担当。国際スポーツプレス協会会員(A.I.P.S.)/日本スポーツプレス協会会員(A.J.P.S.)
Instagram:@picsport_japan