【診察簡易シミュレート】デスクワーク中、お尻のあたりが痛む。それ「特異的腰痛」かも

慢性的な腰痛症状は、放っておくと深刻な状況に陥る可能性が高い。とはいえ、整形外科に行くのは怖い…。二の足を踏んでいるあなたに、「あるある腰痛患者」の受診の様子をお伝えします。

取材・文/石飛カノ イラストレーション/野村憲司(トキア企画)、ホセ・フランキー 取材協力/平尾雄二郎(東京都立広尾病院整形外科医長) 参考写真/東京都立広尾病院

初出『Tarzan』No.803・2021年1月28日発売

例えばこんな人…「デスクワーク中、お尻のあたりが痛む」
30代独身SE・Dさん

30代独身です。仕事はSEです。もう半年以上、リモートワークで平日はほとんど家から出ることがありません。でもプロゲーマーが愛用しているというガンダムみたいなチェアを使っているので腰痛対策は万全! と思っていたんですが、最近お尻のあたりが痛んだり、脚がしびれたりします。これって腰の病気なのかなぁ?

→ そんなアナタは、「梨状筋症候群」かも?

まずはチェック! 背骨の基本構造。

その腰の痛みの原因はどこにあるのか? どう対処すればいいのか? 背骨のS字カーブの基本構造を頭に入れたうえで、整形外科の名医の診断を拝聴しよう。

特異的腰痛の原因部位

筋肉が硬くなって神経を圧迫。

先生(以下、先) 大変お待たせしました。Dさんには前回の初診でMRI検査を受けていただきましたね。

Dさん(以下、D) 悪い結果だったらどうしようかと、今日までドキドキでした。

先 腰の骨や組織には異常がありませんでした。

D よかった〜!

先 骨盤の中に腫瘍などもありませんでした。

D よ、よかった…。えっと、じゃあなんでお尻が痛かったり脚がしびれたりするんでしょう?

先 非常にレアなケースです。Dさん、あなたは梨状筋症候群である可能性が高いです。

D リジョーキン症候群???

梨状筋症候群 の メカニズム
坐骨神経には脛骨神経と腓骨神経の2種類がある。腓骨神経が梨状筋の内部を通っていたり、上を通っていたりするのが“破格”と呼ばれるケース。生まれつきの形状で原因は不明。

先 梨状筋はお尻の深い部分、骨盤の中にある股関節を外旋させる筋肉です。

D はぁ。

先 腰から脚の後ろ側に走る坐骨神経という太い神経があるのですが、この神経は骨盤の中で梨状筋の下を通って脚に至ります。何らかの原因で梨状筋が坐骨神経を障害し、痛みやしびれが生じている可能性があります。

D なんらかの原因というと?

先 坐骨神経の一部が梨状筋の上を走っていたり、梨状筋の中を通っていたり。こういうケースは“破格”と呼ばれています。

D げ、激安セール的な…?

先 並ではないという意味です。こうしたケースは生まれつきで原因は分かっていません。

D うわ〜、僕、どうしたらいいんでしょう?

先 画像検査の結果、Dさんの場合は破格ではありませんでした。長時間座り姿勢をとることで梨状筋が硬くなり、坐骨神経が圧迫されているのかもしれません。梨状筋はもともと腱性成分が多く、ほぐしにくい筋肉ですから。

梨状筋症候群 の 診察

D ということは?

先 消炎鎮痛薬や筋弛緩薬、ストレッチなどの保存療法で改善できると思います。

D どこかでストレッチポールを買って帰ります!