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カラダに響く活劇性は、“オールドメディア”への応援歌?|Move On Screen
話題の新作映画を通して、カラダや健康、生き方について考える。スティーヴン・スピルバーグ監督の最新作『ディスクロージャー・デイ』は、助走なしでいきなりカラダに響く。そのカラダに直に訴えかける娯楽としての映画の力は、物語の中で描かれる“オールドメディア”の存在とも重なっていく。
text: Keisuke Kagiwada
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スティーヴン・スピルバーグ監督の最新作『ディスクロージャー・デイ』は、助走なしでいきなり始まる。なんせ初っ端で映し出されるのは、リング上で対戦相手から顔面をボコリボコリと何度も踏みつけられる格闘家の主観映像なんだから。観客自身にも痛みが伝わってくるような、とんでもなく暴力的で痛快な幕開けではないか。
しかし、歓声で沸き立つ客席の中、カメラが近寄っていくのは、一人だけ浮かない顔の男だ。ダニエルという名のその青年は、なぜこんなに楽しくなさそうなのか?理由は次の瞬間に明かされる。腰に銃を突きつけられているからにほかならない。
ニクソン政権下で設立された巨大企業ウォーデックス社で、サイバー・セキュリティ部門を担っていた彼は、同僚から同社が宇宙人関連の血生臭い情報を隠蔽していると知らされ、仲間と共にそれを世間に公表しようと目論んでいたらしい。しかし、その隠密行動が企業側にバレて、拉致された恋人の命と引き換えに、持ち出した情報の返還を迫られていたのだ。
命からがら恋人と逃げた彼は、時を同じくして謎の特殊能力を得たお天気キャスターのマーガレットと協力しながら、「ディスクロージャー・デイ(情報公開日)」に向けて動き出す。
その後の展開は、冒頭のショッキング映像が予告だったとでも言うかのように、カラダにガツンとくるアクションがてんこ盛りだ。実際、ダニエルが車で玄関をぶっ壊しながら家屋の中へ突入していくシーン、あるいは、列車通過中の線路ぎわで彼らの乗る車が追っ手の車に追突されるシーンは、衝撃波がスクリーンを超え、こちらのカラダを直に揺さぶってくるかのような感覚を覚える。
後者のシーンは、スピルバーグが初期作『激突!』でやったことのアップデート版だが、何でもかんでも安易にCG化してしまう最近の映画では得られない興奮が、ここにはある。本作のスピルバーグは、今や忘却されつつある「カラダに直に訴えかける娯楽」としての映画の原始的な姿を、取り戻そうとしているのかもしれない。
それはストーリーからも伝わってくる。注目したいのは、ダニエルたちがどこで「ディスクロージャー」するのかという点なのだが、ネタバレを避けるためにふわっとさせておくと、“オールドメディア”だ。現代が舞台なのだからネットで発表した方が早いじゃないかとツッコミたくなるかもしれない。
しかし、そうではない。スピルバーグは、人間の血が通い、受け手のカラダへと直に訴えかける古き良きメディアの力をこそ信じているのだ。それをもうひとつの“オールドメディア”である映画において表現してしまうんだから、どうしたって号泣せずにはいられない。
ここでスピルバーグがほぼ10年前に撮った『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』を思い出さずにいるのは難しい。ベトナム戦争をめぐる国防総省の最高機密文書を、新聞社が掲載するか否かに焦点を当てた、実話に基づくこの映画もまた、今にして思えば公開当時は既に“オールドメディア”となったものへの応援歌だったのかもしれない。
『ディスクロージャー・デイ』
『未知との遭遇』や『E.T.』で知られる巨匠スティーヴン・スピルバーグ監督が久しぶりに手がけた宇宙人をめぐるSFアクション映画。主役の一人、お天気キャスターのマーガレットは、『プラダを着た悪魔2』のエミリー・ブラントが好演。公開中。WEBサイト


