HYROXが「鍛える人の目指す最高峰」である理由。

筋肉を持つ意味は、見た目だけでは測れない。走力、筋力、持久力、そして最後まで動き続ける力。「HYROX」に身を置けば、自分のカラダに何が備わっているのかが、嫌でも見えてくる。2026年8月に開催され、国内最大規模の約1万2000人を動員した『AirAsia HYROX Chiba』出場者の声とともに、熱気をお届け。

text: Ryo Ishii photo: Naoto Date

『Tarzan』No.933 on sale September 10, 2026.

HYROX

鍛える人の目指す最高峰が、ここにあります。

8月6日、真夏の幕張メッセは、むせ返るような熱に満ちていた。ウェイトプレートが積まれたソリを全力で押す者、砂が詰まったサンドバッグを担ぐ者。その傍らを、別の参加者が荒い息遣いで駆け抜ける。「HYROX」は、1kmのランニングと8つのワークアウトを交互に繰り返し、そのタイムを競うフィットネスレースだ。

発祥は2017年のドイツ。欧米や韓国、香港などを中心に爆発的に成長しており、ヨーロッパでは、1大会で数千人の参加者が集まるほど。競技の魅力は、その仕組みが実に明快なことにある。

走る、押す、引く、跳ぶ、漕ぐ、運ぶ。ジムや日常のトレーニングでも馴染みのある動作が中心で、観る側にも直感的にわかりやすい。しかも基本フォーマットは世界共通。自分の記録を別の大会や世界中の参加者と比べることもできる。

1.スキーエルゴ(1,000m)

スキーエルゴ

スキーのポーリング動作を再現する全身運動。ケーブルを上から下へ引き続け、1000mを進む。心肺機能を揺さぶる最初の関門。

2.スレッドプッシュ(50m)

スレッドプッシュしている様子

152kg(以下、すべて男子オープンの重量)のソリを前方へ全力で押し進めるパワー種目。強靱な脚力と体幹のバランスが求められる。

3.スレッドプル(50m)

スレッドプルしている様子

総重量103kgのソリを、ロープを手繰りながら50m引き寄せる。腕や背中だけでなく、脚と体幹まで総動員するパワー種目。

4.バーピーブロードジャンプ(80m)

バーピーブロードジャンプしている様子

うつ伏せからの跳躍と前進を繰り返す過酷な種目。一定のリズムを保ちながら進み続ける強靱な精神力がタイムを大きく左右する。

5.ローイング(1,000m)

リーイングしている様子

ボート漕ぎの動作で負荷を生む。脚の押し出しから背中の引きまで、無駄のない連動性がタイム短縮に向けた最大の鍵となる。

6.ファーマーズキャリー(200m)

ファーマーズキャリーしている様子

24kgのケトルベルを両手に提げて歩く。極めてシンプルだが握力への負担は絶大で、体幹を真っ直ぐ保ちながら前進する力が必要だ。

7.サンドバッグランジ(100m)

サンドバッグランジしている様子

20kgを背負い、膝が地面に触れるまで深く沈み込んで前進する。終盤の疲弊した下半身を容赦なく削る、レース屈指の難所だ。

8.ウォールボール(男性6kg×100回、女性4kg×100回)

ウォールボールしている様子

スクワットから立ち上がり、6kgのボールを3m上の標的へ投げ続ける。残された最後の力を限界まで振り絞る集大成だ。

日本では2025年に横浜で初めて開催され、その規模は回を増すごとに拡大。8月6日から4日間かけて行われた千葉大会は、前回比48%増の約1万2000人を動員し、最大規模となった。

『AirAsia HYROX Chiba』

AirAsia HYROX Chiba

2026年8月6日〜9日、幕張メッセで開催された『AirAsia HYROX Chiba』。多彩なカテゴリーが用意され、約1万2000人が参加。元プロ野球選手の糸井嘉男さんなど著名アスリートも出場し、会場を沸かせた。

『Tarzan』が取材に訪れた8月6日は、シングルとダブルスのオープン、ミックスダブルスが開催。参加者たちの声を聞くと、口を揃えて言うのは「シンプルだからこそキツい」ということ。技術でカバーできる部分が少ないからこそ、ごまかしは一切利かないのだ。

例えば男子オープンのスレッドプッシュでは152kgのソリを50m押し進め、ファーマーズキャリーでは両手に計48kgのケトルベルを提げて歩く。これら8つの高負荷種目の間に1kmのランニングが挟まるとあれば、筋力も心肺機能も限界まで削られる。レース中は「早く終わってほしい」と願う参加者も多いというのも納得だ。

それでも彼らが歩みを止めないのは、プライドだけではない。大音量で鳴り響くDJプレイ、そして観客との極めて近い距離。心が折れそうな瞬間、仲間からの声援が己の限界を超えさせてくれる。完走直後は「二度とやりたくない」と思っても、数時間後には「次も出たい」、と語った参加者の顔はとても晴れやかだ。この中毒性こそが、「HYROX」の神髄なのかもしれない。

出場者の声。

川口市のジム〈The Human Base〉の仲間

川口市のジム〈The Human Base〉の仲間と出場したというToshihiroさん(後列真ん中)とユイさん(前列左)。「目標タイムには惜しくも届きませんでしたが、仲間からの熱い声援が本当に力になりました!」。

Shogoさん、Charlotteさん

「全力を出し切り、素晴らしいレースを経験できました。限界を乗り越えた先にある達成感は、日々の生活にもプラスに働きます。運動経験に関係なく、多くの人に挑戦してほしい競技です」(Shogoさん、Charlotteさん)