「嫌なことがあったら、脳内でムカつく相手とスパーリングをする」笑いとウェルビーイング。レインボー・ジャンボたかお(後編)

笑うことは心身の健康に良いと言われています。では、日々誰かを笑わせているお笑い芸人は、自身も健やかな状態になっているのでしょうか。芸のために筋肉を鍛えることもあれば、不摂生が爆笑を生むこともある。ウェルビーイングの形は人それぞれです。本連載では放送作家の白武ときおさんが聞き手となり、芸人一人ひとりが考える「笑いとウェルビーイング」を掘り下げます。第12回後編もレインボーのジャンボたかおさんをゲストに、失敗を引きずったときの心のケア、コツコツと努力する姿勢、食への愛などについてお話を聞きました。

interview: Tokio Shiratake edit,text: Neo Iida photo: Kanta Torihata

Profile

ジャンボたかお/1989年、千葉県生まれ。NSC東京校18期生。2016年、同期の池田直人とレインボーを結成。2018年、『ぐるナイ おもしろ荘』(日本テレビ)で優勝。2019年、実方孝生から現在の芸名に改名。『キングオブコント2025』で初の決勝進出を果たし3位に。2023年には初の小説『説教男と不倫女と今日、旦那を殺す事にした女』(KADOKAWA)を刊行。YouTube『レインボーコントチャンネル』のほか、食をテーマにした個人チャンネル『レインボー ジャンボたかおの食うチャンネル』も好評配信中。

思い切って、築地で1万2千円のウニを買ってみた。

白武
ジャンボさんが一人でやっているYouTube『レインボー ジャンボたかおの食うチャンネル』も人気ですよね。あれはいつ頃から始めたんですか?
ジャンボ
確かコロナ前だと思うんですけど、同期のあしなっすから声をかけられたんです。あしなっすは100歳を超えたおじいちゃんと一緒にYouTubeやってた奴で、「実方(ジャンボさんの本名)、お前が食ってるとこってうまそうだよな。みんな実方が食べるの見たら気持ちがいいと思うはずだから、飯食うYouTubeやらない?」って誘ってくれたんです。あしなっすがいなかったら絶対やってないです。
白武
それほど食べっぷりが良かったんですね。ジャンボさんって元々大きかったですけど、ここ最近さらに大きくなってる気もします。
ジャンボ
えっとですね、YouTube始めた時が110キロくらいじゃないですかね。今は130キロあると思うんで、当時は20キロくらい痩せてた気がします。NSC入った時は90キロもなくて、85キロくらい。
白武
入学した頃は相当かっこよかったんじゃないですか。
ジャンボ
いや、キリッとはしてたはずなんですけど、ダサかったですね。ダサいとちゃんとモテないんです。髪型もダサいし、1000円カットだし、服装もダサい。絶妙な芋臭さがあって。
白武
最近の食のルーティンはどんな感じですか?
ジャンボ
お仕事で食べることが増えたんですよね。だったら家では制御したらいいのに、なんだかんだ食べちゃいますね。昨日も家でウニ丼を食べたんですよ。築地にロケに行ったらウニ屋さんのウニがすごい美味しそうで。思い切って1万2千円のウニを自腹で買ったら、店員さんが「いいよ1万円で!」と言ってくれて。しかもウニを7種類くらいおまけしてくれたんですよ。だからでっかい発泡スチロール抱えて帰って。そしたら隣のお寿司屋さんが「ジャンボくん、これも食べなよ!」とか言って発泡スチロールの上にカツオをのせてくれて。俺、築地で『こち亀』の両さんみたいになって。そうやって仕事で食べるものがプライベートにも繋がってきてる感じもありますね。
白武
お料理もされると思うんですが、読者も真似できるおすすめの料理はありますか?

ジャンボ
ありますよ。フライパンでシャウエッセンをしっかりカリカリに焼いて、目玉焼きも焼いて、そこに美味しい出汁醤油をシャーッと回しかける。皆さん、各自美味しい出汁醤油を探してくださいね。牡蠣醤油でもいいです。ヒガシマルが出してる牡蠣の出汁醤油が最高に美味しいからおすすめです。で、出汁醤油をシャーッと回しかけると煙がモクモクって出るんですけど、ここで火をパチンと止めて、ご飯をよそって、海苔とかぶわーってまぶして、出汁醤油とシャウエッセンから出た油で極上のタレができてるんで、シャウエッセンごとご飯の上に一気にワッとかけてガーっていって、後半はマヨネーズをシャーってかけてまたカーッて食ったらもう最高!この世にこれより美味いもんなんてないんで、マジで皆さんもこれやってください。
白武
途中からマヨネーズで味変するわけですね。ちなみにお酒はどうですか?
ジャンボ
俺、ほぼ飲まないんですよ。実は飲みの場とかも別に好きじゃないですし。
白武
でも飲み会にいる謎の社長みたいな、怪しいキャラを演じてもいますよね。
ジャンボ
昔は行きましたよ。ナダルさんについて行ったら胡散臭い社長や港区女子を束ねてる女性を見たこともあります。本当に嫌でしたね。一応ちゃんと盛り上げますけど、結局バカになれないんですよ。

「痛みが10から2になる」と言われたが、1ヶ月後も10だった。

白武
トレーニングやダイエットをすることもあるんですか?
ジャンボ
これが全くしてないんですよ。ただ、今年の5月に舞台上で激しいコントをやって、アドリブで激しい動きをしたら膝がめっちゃ痛くなったんです。診てもらったら膝の軟骨が欠けてるかもしれないって。そこから2ヶ月くらい膝痛くて、めっちゃ落ち込んじゃって。だって膝の軟骨って治んないんですって。体の部位で唯一再生しない場所が軟骨らしくて、ものすごいショックで。そしたらいい整体師さんがいるって教えてもらって、行ったら「ちょっと見せて。全然治るよ」って。「あのさ、医者っつうのはさ、商売人なんだよ。だから膝にヒアルロン酸入れるとか言うけどあんなの意味ねえから。膝の軟骨が7ミリ欠けたぐらいで痛えわけないじゃん。安心して、俺なら治せるから。今日で痛みの10が2になります。1週間後には0だから」って言われて。「嬉しい!ありがとうございます!」って施術してもらったら1ヶ月後も10だったんですよ。すごいショックで。
白武
それはショックですね…。
ジャンボ
なんだよあの整体師!と思ったけど、2ヶ月経ってようやく痛みがなくなってきて。でも膝をかばい続けてきたせいで身体のバランスがめっちゃ悪いから、そろそろトレーニングしようかなと思ってます。もうあんまり痛くないのに、あの痛みがまた出るのが怖くて動くのにビビってたりするんで、リハビリ的にトレーニングをやろうかなって思ってるとこです。
白武
痩せようというよりは、膝を守るためのトレーニングなわけですね。
ジャンボ
はい。最初、病院で診てもらった時に「必ず痩せてください。痩せることが一番の特効薬です」と言われたので、それも整体師の先生に伝えたんです。そしたら「医者はそう言うよ。ただ痩せろなんて誰でも言えるんだよ。君を見たら痩せろなんて誰だって言える。子どもだって言えるよ。そうだろ?痩せる必要なんてないさ。俺がいるからな。まあ2が無理だとして6だな、今日は6、1週間後には2、1ヶ月後には0だ」って言われて1ヶ月経って10だったんですよ。
白武
(笑)。
ジャンボ
でも2ヶ月経って0にしてくれたんで、俺はその整体師さんを信じてます。誰もが「太りすぎは膝に悪い。体重は膝に関係ある」って言うんですけど、その整体師さんは「体重は膝に関係ない」って言うので、それを勝手に信じてますね。

劇場でサボらずやってきたんで、どうにかやれている。

白武
落ち込んだりストレスを抱えたりした時はどうですか?発散したり気を紛らわせたり、特別にやることってあったりしますか?
ジャンボ
俺はとにかくわかりやすい人間なんで、死ぬほどパチンコ打って、山ほどメシ食って、嘘みたいに寝ますね。それ以外ないですね、ストレス解消法。
白武
じゃあ引きずることもなく?
ジャンボ
いや、引きずります。めちゃくちゃ女々しい奴なんで俺。
白武
それは一人で悶々と考え込むんですか?それとも誰かに話すとか。
ジャンボ
俺、脳内で一人で口喧嘩するんですよ。スパーリングするんです。「マジムカつくな。めっちゃ腹立つわ。お前なんなんだよ」って脳内でずっとやってる。
白武
それはラリーをするんですか?
ジャンボ
あります。言い返してきたらします。
白武
なるほど。言うだけ言って完結するというか。
ジャンボ
完結しないです。
白武
しない。
ジャンボ
そのスパーリングも長期にわたりますし、次のムカつく人が見つかったりしますし。
白武
連鎖していく。
ジャンボ
そうです。
白武
でも、具体的にどういうことで落ち込むんですか?
ジャンボ
昔は、落ち込むのはもう完全に収録でした。ショックすぎて楽屋から1歩も動けなかったこともありましたし。でも最近は、劇場でサボらずやってきたんで、どうにかやれてるんです。劇場のコーナーライブをサボらず、一生懸命お客さんを楽しませようと思ってやってきたことを、信じられないくらいテレビに活かせられますね。
白武
ちゃんと足腰が鍛えられていたんですね。コーナーライブをやってる時は、これが何かに繋がってると思えてました?
ジャンボ
1ミリも思ってないです。ていうか(ニューヨークの)屋敷さんがよくテレビで「劇場でやってたことって何も意味ない」とか言ってたんで、意味ないのかなと思ってました。それでも目の前のお客さんを笑わせたいじゃないですか。あと俺、池ちゃんとコンビ組む時に「どんな芸人になりたい?」って話し合った時に「身近な先輩に頼られる芸人になりたい」って言ったんですよ。池ちゃんは「は?そんなんすぐやで」って言ってくれたけど、当時3年目とかで劇場でもまだ全然だったんで、ただ「なりたいな」って。でも実際、劇場の先輩に頼られるようになったあたりで自信がついてきたんですよ。「あ、今日はコーナーにジャンボがいるから大丈夫か」みたいな一個一個がものすごく自信に繋がってましたね。
白武
やっぱりサボらずずっとコツコツとやるって大事なんですね。
ジャンボ
俺はそう思いますね。だって俺、コーナーでスカしてた先輩がテレビでうまくいってないの見て震え上がりましたもん。やっぱサボったらそうだよな、だってスカしちゃってたもんって。キャラか知らないけどけどそこまでスカしたら冷めるよ、みたいなのあるじゃないですか。ちゃんと結果に繋がるんだなって。
白武
ジャンボさんは着実にやって来て、今があると。
ジャンボ
はい。よく池ちゃんと「俺らっていつ売れるんだろうな。でも俺らって一度も去年より悪い年はなかったよな」って慰め合ってたんですけど、時間をかけて良かったです。それに、先輩の一言が救いでしたね。(蛙亭の)イワクラ姉やんとか大好きなんですけど。「どうやったらテレビ出れるんすかね」とか相談すると「いやいやいや、ジャンボはマジ絶対大丈夫すぎるから」とか言ってくれて。(オズワルドの)伊藤さんもそう言ってくれて、あのカップルによく言ってもらってたんで、めちゃくちゃ僕の支えでしたね。今でもあの時の言葉には感謝してます。
ジャンボたかお

東京吉本の憧れの先輩、平成ノブシコブシの吉村さん。

白武
素敵ですね。じゃあ、ジャンボさんの周りでこの人のスタンスいいな、生き生きしてるなと思う人はいますか?
ジャンボ
やっぱり(平成ノブシコブシの)吉村さんですかねえ。お会いする前はちょっとナメてたんですよ。特に今の若手って特に「ネタ」への意識が強いじゃないですか。ネタで実力が決まる賞レースが全盛で、ファイナリストへの敬意も半端ないですし。ネタ頑張ってるか頑張ってないかが第一なんですよ。それでいうと吉村さんってネタで出てきた人じゃないのに、なんでこんなにテレビに出てるんだろうって、何もわからない頃はそう思っちゃってたんです。でも、共演した時に鳥肌立ちました。すごすぎて。必ず盛り上げるし、笑いにするし、ディレクターさんや作家さんに「吉村がいたら大丈夫!」って思わせる圧倒的安心感がありながら、異常なほどエネルギーもある。ああ、俺の理想の人は吉村さんだったんだって思って、めっちゃ憧れました。
白武
生で見るまではあまり追ってはなかったんですね。
ジャンボ
だから悔しいんです。この前もストロングな『アメトーーク!』の収録があって、その回の吉村さんがまじで面白いんで見てほしいですね。
白武
ここからこうやっていけば吉村さんの背中が見えてくる、みたいな道筋はあったりしますか?
ジャンボ
今僕がやってることは間違ってないなと思います。どの現場も「ジャンボがいたら大丈夫」と思ってほしくて、めっちゃ一生懸命やらせてもらってるんで。このまま自分なりに走っていったら、もしかしたら背中見えるかもなって感じです。
白武
今後はMCで番組やりたいとか、コントの公演をすごい回りたいとか、何か決めている目標はありますか?
ジャンボ
目標なんてなかったんですけど、ちょっと思うのは、俺は去年渋谷の劇場を卒業したんですね。そこには例えばダイタクさんみたいに勝手に自分でおもろくなれるような方々がいる一方、この人たちのことは俺が一番面白くできるかもっていう人たちもいたんですよ。カゲヤマとかいぬとかスクールゾーンとか。スクールゾーンなんて気絶するくらいおもろいのに、信じられないほど人見知りで、俺らくらいにしか心を開いてないんで、そのメンツをめっちゃテレビに出したい。後輩のくせに生意気なんですけど、それはめっちゃ思いますね。てかこの人たちの面白さ伝えるの俺じゃんって。それが自分の番組でできたら本当に嬉しいですね。

辛いことがあったら、お腹いっぱい食べてほしい。

白武
普段持ち歩いている必需品や気持ちが落ち着くアイテムはありますか?
ジャンボ
えっと、本当に大事なのは3つですね。まず、日々人に腹立を立てている負の部分を打ち消してくれてるのが日向坂46です。去年大好きになったんですよ。ライブに行かせてもらって、本当にふぁ〜ってなったりします。ライブ見てる時だけムカつく奴のことを忘れられてるし、毒素が抜けていくのがわかる。推し活って心の健康にいいって言うけどマジだなと思いますね。

白武
それまでは推しっていなかったんですか?

ちょこちょこあるんですよ。もちろんAKB48を人並みに好きになったり、乃木坂46を好きになろうとしたりもあったんですけど、こんな風にしっかりライブに行ってがっつり好きになるのは初めてですね。
白武
あと、これはぬいぐるみですか?
ジャンボ
はい。俺実はこう見えて可愛いものが好きなんですよ。なんでキーホルダーはめっちゃつけますし、ダンボがいたりするとものすごいテンション上がります。その辺の女子高生と一緒でアゲポイントです。あとはお弁当を持って帰るための『カレーハウスCoCo壱番屋』のエコバッグ。猫のキャラの絵が描いてあるんですけど、「NeCo壱」っていう渋い名前なんですよ。僕は「ココにゃん」がいいと思うんですけどね。
白武
ジャンボさんが考える、生き生きと健やかに生きるための秘訣やアドバイスはありますか?
ジャンボ
ちょっと待ってくださいね。ちゃんと真剣にお答えしたいな。なんか俺、17歳の頃だったかな、高校で「20歳の自分に手紙を書く」っていうタイムカプセルの企画があったんです。いざ20歳になって送られてきた手紙を読んだら、たった3年前なのにめっちゃ悩んでたんですよ。マジで忘れてたんですけど、3年前の俺は「もう毎日悩んでばかりで頭がいっぱいです」って。バレーボール部でキャプテンやってたんですけど、「どうしたらいいだろう、先生も厳しいし、後輩にはバカにされてるし、下手すぎるし」とかものすごい悩んでて。でも、最後にそいつが「でもこれでいいと思ってる。人は絶対に悩めば悩むほど人に寄り添うことができるし、成長できる生き物なんだ」って。20歳の俺はヘラヘラした大学生で悩みなんてひとつもなかったから「やべえ、俺今悩み1個もねえや」と思ったんですけど、同時に「いいこと言うな、この17歳の俺」とも思って。だから、皆さんもストレス溜まったり悩んだりしてても、それは間違いなく人が成長する上で大事な傷で、やがてかさぶたになって強くなる。これは綺麗事でもなんでもなくそうだなって芸人やってても思うんで。辛いこともあると思いますけど、そういう時は俺が日向坂46を見つけたみたいな拠り所を見つけていただければと思いますね。
白武
17歳のジャンボさん、素晴らしいですね。
ジャンボ
あと、心の健康にはやっぱり飯ですね、うん。俺の大好きな『オモウマい店』っていう番組で、80歳を超えたおばあちゃんが嘘みたいな値段で大盛り飯出してる店が紹介されていて。そのおばあちゃん、「なんでこんな値段でこんな大盛りのご飯出すんですか?」って聞かれたら、「お腹いっぱいで怒ってる人ってね、一人もいないのよ。だからみんなお腹いっぱいになったら争い事はなくなるの」ってめちゃくちゃいいこと言ってたんですよ。だから死ぬほど辛いことがあったり、めっちゃムカつくことがあったら、腹がちぎれるぐらいご飯を食べてほしいなって思いますね。
ジャンボたかおと白武ときお