フジロックから始めるキャンプのススメ。「FUJI ROCK FESTIVAL’26」テント訪問スナップ!

苗場の大自然と音楽の調和を楽しむフジロックにおいて、最もフィジカルにその魅力を享受できるのが”テント泊”だ。例年多くの来場者が寝泊まりするキャンプサイトに『Tarzan Web』編集部もテントをたずさえて潜入。素敵なキャンプをする人を訪ねてまわり、欠かせないギアや場所取りの極意、ちょっとしたコツを聞かせてもらった。

interview,text: Haruka Hayashi photo: Narumi Tanaka

7月23日(木)〜26日(日)までの4日間、新潟県湯沢町・苗場スキー場で開催された「FUJI ROCK FESTIVAL ’26」(以下「フジロック」)。4日間で総勢12万3500人を動員し、大熱狂の中無事に幕を閉じた。

そんな「フジロック」のもうひとつの楽しみと言えるキャンプサイトに、『Tarzan Web』編集部も滞在。次なる参加者へのキャンプ啓蒙を図るべく、9組のテント宿泊者にスナップとインタビューを実施。来年の参考になる生の声がたくさん集まった!

「フジロック」オフィシャルフリーペーパー『Festival Echo’26』の冒頭には「地球に優しいとは、人間に厳しいことを意味する」という記述がある。「フジロック」とは、随所でこれを実感できる祭りであり、キャンプはその骨頂だ。天候は不安定だし、空調も当然ない。山の傾斜は寝ている身体がずり落ちるし、様々な虫もいる。

けれど同時に、全身で吸い込む森の匂い、一晩中聴こえる心地よい重低音、空が白み出す時間の澄んだ空気、目覚めのコーヒー。その素晴らしい経験ひとつひとつは、他の何にも代え難い。それに、何日滞在しても一人6000円という価格も魅力的だ。

一度試せば病みつきになること間違いなし、あなたもきっとテント泊をしてみたくなる素敵なキャンプの実例を順に紹介しよう。

1人1テント、タイから飛行機の手荷物で持参。

タイ・バンコクから「フジロック」のためだけに来日した4人組。飛行機の手荷物重量内で全てのギアを持参すべく、4人それぞれが1人用のミニマムなテントをかついでやってきた。選んだのは、Cサイトをしばらく上まで登った通路沿い。傾斜もあるが、人が多すぎず、ちょうど大きな木の影になるところがお気に入り。

おすすめのキャンプ道具は?と聞くと真っ先に出てきたバナナ。フェス飯は脂っこいものが続くから、キャンプ勢にとっては優れた栄養補給も重要なポイント。

カナダ発、軽量アウトドアギアに特化した〈DURSTON〉のバックパック。本体は1kgにも満たないのに、耐荷重は20kg。重量が嵩みがちなキャンプギアも余裕で全部入る。

リサイクルポリエステルを用いた〈Beach Wizards〉のレインポンチョ。設営中でもお構いなしに雨が降るフジロックキャンプでは、ステージ鑑賞時と同様に必須のアイテム。

〈スノーピーク〉のステンレス製真空マグ。高い保温性、保冷性を持ちながら、結露もつきにくい。いつでもサッと取り出せるようにカラビナで吊るして。

絵を描いて気ままに過ごす、丘の上のミニマムキャンプ。

Cサイトの丘の上でソロキャンプ中の男性。急斜面を登った先にあるこの場所をあえて選んだのは「平地は家族連れに譲りたいから」。自分自身もかつては子連れで来ていたのだそう。テントは神奈川県発のアウトドアブランド〈ローカスギア〉のフロアレスタイプ。トレッキングポールを使って立てる仕様で超軽量。ステージもそこそこに、テントの横で4コマ漫画を書いて過ごすというキャンプ玄人は、ギアもなんだか軽やか。

会社員として働く傍ら、イラストレーターの仕事をしているのだとか。自分のイラストが描かれたレジャーシートをグランドシートの代わりに。1枚あると、設営時にも便利。

目印になるようにとポールに括りつけたライト。ソーラーライト(上)はパネルを上に向けて蓄電中。防水素材「タイベック」でできたランプ(下)は雨が降っても安心。

4コマ漫画用の画材。題材は「フジロックにいる面白い人たち」。思う存分描き終わったら「KHRUANGBIN」を観る予定。キャンプサイトに拠点を作れば、こんなに贅沢な時間の過ごし方もできる。

就寝は〈ヘリノックス〉のコットの上で。標高が高く、頻繁に強い雨が降る苗場キャンプでは浸水のリスクがつきものだが、これがあれば心配無用。

ティピー型テントの内部は、家クオリティの居住空間。

取材に答えてくれた2人の他に、友達と、その息子の計4人で滞在するという〈DOD〉のティピー型テント。一年に一度、フジロックのためだけに使っているのだとか。ポイントはこの円錐形のフライシートと、あまり見かけない黒一色のカラーリング。「家のクオリティをなるべく再現したい」というテント内部は電源も完備で、グランピング仕様。

テント前に設置した水のタンクは足の汚れを落とす用途で使う。タンクを置くミニチェアはペグで固定。タンクも椅子も折りたたみ式。

円形のテント中央に円形のテーブルを。下にはチェックのカーペットを敷いてあり、地べたにも座りやすい。足を洗う一手間を惜しまないことで、この場所がジャリジャリせずに済む。

3分の1の面積を占めるエアベッドは、アウトドア用の域を超えた厚みと広さ。これさえあれば、4泊しても腰痛とは無縁。

FMラジオ対応の小型Bluetoothスピーカー。テントに戻っても好きな音楽が楽しめるほか、非常時にも頼りになる。

あえてのDサイトは「RED MARQUEE」アクセス重視。

高校時代からの友人2人、会社の同期とその友人、下北沢のバーで知り合った男性の計5人で東京から参加。各々のテントを密集させる形で場所取りした。ポイントは日陰になることと、キャンプサイトと「RED MARQUEE」を直接つなぐ「RED GATE」と呼ばれる専用出入り口が近いこと。その分音漏れの音量も大きいが、夜間のステージを見るなら最高のポジショニング。

「RED MARQUEE」の音漏れをBGMに木陰で休めるハンモック。寝不足は最高の昼寝で解消。

正方形の面で強く発光し、広範囲を照らす小型のLED、COBライト。日が落ちるとあたり一面が真っ暗になるキャンプサイトでは、足元を照らす照明が必須。

背もたれを調整でき、ゆったり座れる〈コールマン〉の折り畳みチェア。読書や食事、仮眠など、用途も様々。

レトロなデザインがかわいらしい〈barebones〉のランタン。日中は外側につるしてテントの目印に。

木曜朝6時入りで掴んだ、Aサイト一等地。

両サイドに居室、中央には広々としたリビングも兼ね備える〈DOD〉の《カマボコテント》は、友人を集めて飲み会をするのにぴったり。大人が立って過ごせるほどの高さがあり、人数が増えても窮屈にならない。キャンプサイトエントランスから徒歩15秒のAサイト一等地にあるこの場所は、木曜朝6時入りで掴み取った気合いの賜物。年間を通して数多くのフェスに参加するという熟練の3人は、キャンプギアも用意周到だ。

木曜朝からの4日間、フルで楽しみ切るための必須栄養補給《アミノバイタル》。おすすめはオレンジ。大箱で持参して友人とシェアする。

テント内部の換気のために欠かせないのが〈Shark〉のコードレスファン。直置きしないための網棚もあると便利。

洗濯物の平干しネットは細々とした食料を入れておくのに便利。中には種類豊富なおつまみが。

複数人で4日間を過ごすため、ポータブル電源は〈Jackery〉の超大容量のタイプを。スマートフォンはもちろんPCや家電まで余裕。

朝の見晴らしが気に入って、2年連続斜面に。

急斜面に張った巨大なテントと佇ずむ女性は、骨組みを立て、遅れてやってくる友人を待機中。〈BUNDOK〉の2ポールタイプは一人でも設営ができた。フジロックは3年目。1度目はオールナイトで、2度目からテントを持参。3度目となる今回もテント泊を選んだ。テント面積の広さゆえに平地は空いておらず、2年連続で斜面をチョイス。寝る時は多少ずり落ちるけれど、朝の見晴らしが気に入って今年も同じ場所を選んだ。

キャンプ好きのお父さんに借りてきた寝袋は、コンパクトながらしっかりと保温してくれる。ビビットなカラーもファッションに馴染んでおしゃれ。

少し離れた両サイドに就寝スペースがあるスタイルは、適度にプライベート空間を確保できて快適。

大きく開く入り口は開放感抜群。晴れている日中は一番上まであけて、中央で友人と寝転ぶのが最高。

〈キャンプよろず相談所〉で借りてきたペグハンマー。大型テントでは特に、ペグを素手で打ち込むのは至難の業。撤収時にもお世話になる予定。

キャンプ歴20年の工夫が光る、ファミリーフジロック。

キャンプ歴20年以上のお父さん率いる5人で東京からやってきたファミリー。ポジションはエントランスからの距離重視で、やや斜面気味。朝起きると、子どもたちは下に転がっているそう。窓のように大きく開く背面は通気性抜群。細部に光る工夫は、フェスキャンプ以外でも覚えておきたいものばかりだ。

氷を長時間持ち運ぶためのアイスタンク。二重の真空断熱構造で、外気温に左右されずに保冷効果を保てる。苗場は晴れると30度を超えることもあり、氷は貴重。

ソフトなプラスチック製の水タンク。手足を洗ったり、 飯盒に使ったり。水のためにエントランスに戻る必要がなく、体力を温存できる。

荷物を一切合切運べるキャリーカート。テント正面に設置し、入り口を持ち手にくくりつければ、ポールがなくても常時あけておくことが可能。

ちょっとした物干しに便利な紐。アジャスターとクリップで可動式。

上海とオーストラリアからフジロック会場で集合。

上海とオーストラリアからこの場所で集合したという旧友の二人。二人の共通点は音楽が大好きなことと、ENFPであること。一番のお目当ては「Massive Attack」。今回のフジロックのためだけに来日した。服装にこだわるように、キャンプギアもとにかくカラフルなものを調達。

物を干せる場所がないことに気がつき、近くに落ちていた小枝をDIY。タオルから靴下まで、ちょっとした小物なら晴れている間にすぐ乾く。

グリーンのマットにブルーの枕、ネックピローは「ちいかわ」を持参。アウトドア用ではないけれど、お気に入りのグッズは気分があがるのでそれもよし。

フジロックオフィシャルトレイはテントにくくりつけて保管。エントランス付近や「イエロークリフ」で買った食事をここまで持ち運ぶのに欠かせないアイテム。

蛍光イエローがひときわ目立つ折り畳みチェア。メッシュ素材で乾きやすく、雨が降っても無問題。

「キャンプするしかなかった」から「キャンプが目的」に。

2つのテントを連結させた見事な空間で過ごす二人も、一番最初のきっかけは”初めてのフジロックで宿が見つからなかったこと”だったそう。意図しなかったアウトドアデビューを機に徐々に興味が広がり、今ではすっかりキャンプ三昧だ。「フジロック」にも「もはやキャンプをしにきている」のだとか。それもそのはず、ステージ開始の11時を2時間も過ぎた13時に取材を受けてくれた!

日差し除けとして使っているペイズリー柄の大判スカーフ。薄手の素材で、風に靡く様子は風流。人間にとっても、食料や電源にとっても、直射日光を避けることは大事。

2つのテントの前室を連結させた空間は、テーブルを広げてリビングルームのように。キャンプサイトで長時間過ごすとあって、食料も潤沢だ。

「フジロック」の文字が散りばめられたガーランド。目印になるだけでなく、外観が一気に楽しげな雰囲気になる。

バッテリーは〈DJI〉のものを。コンセントからUSB-A、USB-Cまで、変換器なしにそのまま差し込めるのが便利。

困った時の駆け込み寺!〈キャンプよろず相談所〉

キャンプサイトのエントランス広場にある〈キャンプよろず相談所〉。その名の通り、アウトドアにまつわるよろずの悩みに答えてくれるプロフェッショナル集団が常駐する場所だ。

テントの張り方やサイトの選び方、ハンマーの貸し出しにペグの販売、壊れたギアの応急処置まで、困った時はなんでも頼れる駆け込み寺的存在。ホームセンターもコンビニもない苗場において、これほどありがたい活動はない。

〈キャンプよろず相談所〉の代表で、アウトドア業界のご意見番・滝沢守生さんは、キャンプのことならなんでもお任せのプロキャンパー。ポールが折れた、キャリーが壊れた、立て方がわからないなど、諦めて打ちひしがれる前に駆け込もう! 編集部も初日にペグを購入。早朝の雷雨でもテントが吹っ飛んで行かずに済んだ。

2026年版・キャンプサイトエリアマップ

エントランスに近いAサイト、「RED GATE」があるDサイトは大混雑の人気エリア。狙う場合は前夜祭入りがほぼ必須。

入り口から近いが斜面多めのBサイト、少し歩くが平地が多めのCサイトは比較的狙い目。とはいえ、3人用以上の大型テントはなるべく早めの到着がおすすめだ。

時間と体力いずれにも余裕がある人は、E、F、G、Hサイトまで行くのも一つの手。平坦で見晴らし良好、音漏れも少なく、穏やかなキャンプが楽しめる。

2026年版。エリア配置は変動する可能性があるため、必ず自分が行く年のマップを公式サイトからチェックすること。

来る2027年7月23日(金)、「フジロック」はついに開催30周年を迎える。来場者もよりいっそう増えるに違いない。早めに宿を押さえるのもいいけれど、少しでも興味が湧いたなら、来年はあえてのテント泊デビューが『Tazran Web』のおすすめだ。