〈MIZUNO〉の《ネオ ビスタ2》|これ、履きたい。

styling,text: Masayuki Ozawa photo: Nobuko Baba hair&make-up: Moe Hikida

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シューズ《NEO VISTA2》 22,000円、ショートパンツ 5,940円、以上ミズノ、問い合わせ先:ミズノ お客様相談センター 公式サイト、ポロシャツ 25,300円、パンツ 40,700円、以上シンクウール、問い合わせ先:SN JAPAN

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文・小澤匡行

靴と人との相性がランニングに与える影響は、どのくらい変わってきたのだろうか。選択肢が少なかった僕の学生時代と比べてアスリートの記録が大幅に向上しているのには、どのくらいシューズが貢献しているのだろうか。少なくとも僕が高校生だった30年前は、〈ミズノ〉と〈アシックス〉に依存しきっていた。日本人なら特にそうだった。

癖のない着用感とか、万人に良いとされる機能は、一般的にエントリーユーザーに勧めやすい。しかしテクノロジーの進歩は、多様化、細分化を促進させた。シューズは平均値よりも個人に対しての反応値を見る必要がある。例えば「厚底、高反発フレーム、プレート」を組み合わせたAFT(Advanced Footwear Technology)は昨今の主流で、ランニングエコノミーを2〜4%向上させると言われている。この数字はフルマラソンで5〜10分近く短縮する可能性が理論上あるということだ。もちろんこれはその人の筋力や走力やフォームによって異なるが、厚いミッドソールの反発が沈んだエネルギーを跳ね返し、カーボンなどのプレートが前方向に進む力を安定させる。この一連性が、効率的ということだ。

〈ミズノ〉の会社で、いろいろとシューズを見せてもらった時に、自分がレース後半になるとふくらはぎが攣る話をしたら「ぜひ履いてみて」と紹介してもらったのが《ネオ ビスタ2》だった。試してほしかったのは「スムーススピードアシスト」という2022年に開発されたテクノロジー。最初はサブ3とにらめっこするようなシリアスランナー向けのシューズに搭載されていたので、縁遠い機能だったが、“ふくらはぎ周りの筋肉の負担を低減してくれる”という恩恵を日常のランニングでも授かれるようになったのが、2024年に発売された「MIZUNO NEO」シリーズだ。

足が攣る理由は水分やミネラルの不足だったり、神経疲労だったりと複合的だが、結局は脚力が足りないから僕のセンサーが筋肉にブレーキをかけているのだ。だからまずは走行距離を増やして筋持久力を蓄えるべき、と思っていた。しかしこのシューズを履いて外に走り始めた初日、ふくらはぎに集中していた負荷が身体の別のどこかに分散しているようだった。ミッドフットで着地し、足を前に回転させるように誘導する「スムーススピードアシスト」と、地に足が浮いた感覚になる高反発のミッドソールは、明らかに脚ではなく靴がサスペンションのように衝撃を吸収していた。

この効果を確かめるために、僕は一人ハーフマラソンを開催することを決めた。GW最終日の代々木公園、約1.9kmの周回コースを11周。心が走ることを止めるよりも脚が先に音を上げてしまうから、日常の内省ランではこんなに走ったことはない。心肺と脚のバランスを考えると、僕には10km程度がちょうどよかった。しかし《ネオ ビスタ2》を履いていると、呼吸は苦しくなったのに、脚が余裕を残している。しかも後半の10kmの方が2分以上も速く走っていたのだ。興味深いのは、このシューズはスピードを作り出すのではなく、脚が楽に進むように着地させてくれるのだ。

いわゆる一般的なカーボン入りのシューズは、適正な筋力と正確なフォームを条件に反発をあげると言われているようで、履き手の身体能力が試されている気がする。しかし《ネオ ビスタ2》は自分に対して協調性が高いシューズに感じた。脚を動かすのも腕を振るのも、苦しい時に励ますのも自分だから、シューズ選びだけで速く、長く走れるわけではない。ランニングシューズをただの道具として捉える時代ではないとも思う。自分が抱えている悩みや目標と対話してくれる感覚があるかどうか。そのコミュニケーションが、自分にシューズが馴染んでいく過程なのだろう。

こうして長く走っていると、ポリエステルを使った速乾素材よりも、ちょっと上質で繊細なウール主体の方が身体になじんでくる感覚がある。最近よく着ている〈THINK WOOL〉のTシャツはメリノウール主体のファブリック。温度調整も穏やかにあって、不快なベトつきも少ない。においもしにくいし、次もすぐに着たいと思わせる何かが洗い上がりにある。人はそれを肌あたりというのだろう。機能を数値化してしまえば、化繊の機能性は圧倒的に優れていて、たくさんの汗もどこかに消してくれるし、乾燥機を回さなくてもすぐに乾く。しかし実際に10キロ、20キロ走った時のストレスは、他の部分で働いているようにも感じる。人と人との付き合いのように、長く走れば走るほど、僕は大きな刺激よりも違和感が少ないことに救われる気がする。《ネオ ビスタ2》もそういうシューズなのだろう。