ランの不調を紐解くヒントに。踝〜膝の基本機能。

足首が硬い、アキレス腱が痛む、ふくらはぎが疲れやすい。そんなランナーの悩みは、踝から膝までのレッグの使い方が原因かもしれない。ヒラメ筋や腓腹筋、足首の背屈可動域など、快適なランニングに欠かせない機能を解説し、最後は実践エクササイズも紹介する。

取材・文/石飛カノ イラストレーション/野村憲司、作山依里(共にトキア企画)、山口正児 監修・取材協力/飯村剛史(足のクリニック表参道医師) 編集/星野“cap”徹

初出『Tarzan』No.920・2026年2月26日発売

くるぶしから膝のヒラメ筋にポイントを記している
教えてくれた人

飯村剛史(いいむら・たけし)/〈足のクリニック表参道〉でランニング障害特別外来を担当。自らが現役ランナーという経験を生かし、医師の診断と理学療法士による動作分析の2本立てで痛みの根本治療と再発予防を包括的にサポートする。

ランの衝撃を受け止める、足首とふくらはぎ。

脚(レッグ)と足(フット)の違い、そして膝から腰にかけた脚の上部の構造と機能については、以下の記事で解説した。

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今回はいよいよ膝から下、踝までの構造と機能を整理していく。

膝から踝までの構造|ラン時の衝撃を受け止める、上下のレッグの橋渡し役。

踝から膝の名称

【膝関節】
大腿骨と脛骨を繫ぐ関節。主な役割は膝の屈伸運動。股関節や足関節と協調して体重の負荷も請け負う。

【腓腹筋】
二関節筋として膝と足首を連動させ、スプリントなどで爆発的な加速に関与する重要な筋肉。

【ヒラメ筋】
腓腹筋の深層にある筋肉で腓腹筋と協調して働く。下腿(脛)の前傾を制御し、足首の安定性を保つ。

【長腓骨筋】
膝下の外側に位置し、深層の短腓骨筋と協調して足の裏を外側に向かって持ち上げる動作で働く。

【前脛骨筋】
膝下の前面にある筋肉で、爪先を上に向ける背屈動作の主役。坂道を上るときに強く働く。

【脛骨】
「すね」の骨。体重支持や足首の安定に関与。内側に向かい大きく膨らんだ部分が「内くるぶし」。

距骨(きょこつ)はレッグとフットの繫ぎ目だ。

レッグとフットの繫ぎ目となるのが距骨。その主な役割は体重移動と膝、股関節、体幹への運動伝達。

距骨には筋肉や腱が付着していない。文字通りフリーな骨なので比較的自由に動ける。このため足が地面に接したときにバランサーとしての役目を果たすことができるのだ。坂道や未舗装路に対応できるのは、ある意味、距骨のおかげと言ってもいい。

脚と足のハブとなるこの部分が正しいポジションで正しく機能することが、スムーズな歩行や快適なランニングを約束するのだ。

脛骨と腓骨という脚の骨と細かい足の骨のジョイント部が距骨の図

脛骨と腓骨という脚の骨と細かい足の骨のジョイント部が距骨。ごく小さな骨だが体重の支持や足首の動きをサポートするなど重要な役割を果たしている。

地面に接する踵骨(しょうこつ)はまさに足の土台。

足を構成する骨の中で距骨の次に重要なのが踵骨。

「距骨と踵骨がセットになって足の後ろの部分、後足部を構成しています。距骨と踵骨を繫ぐ関節を距骨下関節と言いますが、その位置関係によって足のニュートラルポジションが保たれていると言ってもいいと思います」

距骨も重要だが、その下で距骨を受け止める踵骨は、いわば足の土台。負けず劣らずの重要部位だ。

ちなみに、距骨も踵骨も他の動物に存在するが、位置が異なる。イヌやウマはどちらも地面から離れた位置にある爪先立ち状態。踵骨を地面につけて歩いているのはヒト含めた蹠行性動物の特徴。

人と犬と馬の踵骨の位置のイラスト

蹠行とは足の裏全体を使って歩くこと。イヌの踵骨はヒトで言えば脛くらいの高さに位置し、ウマは膝くらいの高さに位置している。踵はまさしく二足歩行の土台。

ランでよく聞く「プロネーション」とは?

「プロネーション」とは、着地後に足首が内側に倒れ込む“回内”という衝撃吸収に必要な動き。適度な倒れ込みはニュートラル、過度な倒れ込みはオーバー、倒れ込みが少ない状態はアンダーと呼ばれる。

「オーバープロネーションの人はアーチが低い扁平足のタイプが多く、足首が外側に倒れやすいアンダープロネーションの人は逆にハイアーチで甲高のタイプが多い傾向があります」

オーバープロネーションは足底筋膜や膝の障害に繫がりやすく、アンダープロネーションは足の甲などに負担が。下のエクササイズで足部の動きの精度を上げよう。

右足の着地時のプロネーション。

ニュートラルプロネーションの図

オーバープロネーション

アンダープロネーション

適度なプロネーション、オーバープロネーションが過度、アンダープロネーションが過小なプロネーション。とくに扁平足による過度なプロネーションはランニング障害の原因に。

足関節の背屈可動域がカギ。

次なるランニング科学のお題はレッグ。最初の注目ポイントは脛の骨と距骨を結ぶ距腿関節、いわゆる足関節だ。歩いているとき、片足が宙に浮き、軸足に体重がかかっている状態をミッドスタンスと言うが、このとき足関節の角度が15度程度に確保できていないとスムーズな歩行ができない。

「足関節が前に倒れた状態を背屈と言います。このとき、距骨は後ろに滑り込むのですが、距骨が前方に出すぎていると、足関節の背屈が制限されてしまいます」

むろんランニングでも足首の柔軟性は必須。15度を確保できないと膝や股関節などに負荷がかかり、障害に繫がることもある。

足関節が15°が稼働しているイラスト

体重が片足に乗ったとき足関節の適切な角度はおよそ15度。これは脛の骨がまっすぐな状態で足先を引き上げた「背屈」の状態。足首が硬いとこの15度を確保できない。

アキレス腱はなぜ痛むのか?

歩いたり走ったりしているとき、足首の角度を意識している人はほとんどいないだろう。ところが、足首が硬く、15度という足関節の角度が確保できないと、シワ寄せを食うのはアキレス腱だ。

足が背屈できないことで、重心はどうしても踵寄りになる。すると重心を前に戻そうとしてふくらはぎの筋肉が酷使される。

「アキレス腱は複数のふくらはぎの筋肉が腱として合流し、踵骨に繫がっている組織です。足首が背屈できないとふくらはぎの筋肉に常に引っ張られることになるので、負担が増し、痛みが生じることもあります。歩行でも痛みは出ますがランニングならなおさらです」

アキレス腱が痛む!を表している

アキレス腱は足首を下に曲げる底屈動作を担当するので、足首を背屈できないことでも負担が増す。痛みが出たときはただちにランニングを休止し、後ほど紹介するストレッチを。

腓腹筋よりヒラメ筋主体で走れ。

表層にある腓腹筋、深層にあるヒラメ筋。これらの総称を下腿三頭筋と呼ぶ。腓腹筋は瞬発的に大きな力を出力する速筋の割合が高く、ヒラメ筋はパワーは小さいが長い出力が得意な遅筋の割合が高いという差がある。

「スプリントではパワーが大きい腓腹筋が優位に働いた方が有利ですが、長距離のランニングで腓腹筋に頼るとすぐに疲れてしまいます。そのため長く楽に走るためにはヒラメ筋を使う方が有利。ただ、ヒラメ筋を使うためにはやはり着地時の足首の背屈が必要です」

足首を背屈させないとアキレス腱に負担がかかるし、腓腹筋が優先的に使われて長く走れないのだ。

ヒラメ筋が使われているイラスト

ヒラメ筋をうまく使って走れば長距離ランでも疲れにくい。着地時に足首を適度に背屈させ、上下動を避けるためぴょんぴょん跳ねるような走り方も控えたい。

膝〜踝の機能改善エクササイズ。

リスフラン関節モビライゼーション|足の関節を動かしてスムーズに。

リスフラン関節モビライゼーションをしている様子

リスフラン関節は足の甲の中足骨と立方骨などの足根骨を繫ぐ関節。足の甲を摑み、逆の手で足裏を持ち、母趾中足骨を底背屈させるようにねじり足部稼働を高める。逆足も。

足を内外反に捻るモビライゼーション|回内から回外へシフトさせる感覚を摑む。

足首を手で動かしている様子

足首を手で動かしている様子

踵を持って、距骨を内側・外側にねじる。足部を内反させると同時に外返しにして、距骨の可動域を広げるエクササイズ。動きが滑らかになるまで繰り返す。逆足も行う。

足底ストレッチ|足首の背屈を手でサポート。

足底ストレッチしているよ様子

片手で足首を摑んで固定し、反対側の手で足指全体を反らせるストレッチ。足首の背屈状態を強制的に作る。ふくらはぎのマッサージなどと組み合わせて行いたい。

距骨セッティングとヒラメ筋ストレッチ|距骨の位置矯正と遅筋のケアを同時に。

距骨セッティングとヒラメ筋ストレッチしている様子

片膝立ちになり、立てた膝の側の足首を両手で摑み、後ろに押し込んで距骨を後方にスライドさせる。同時に体重を前方にかけてヒラメ筋をしっかりストレッチ。逆足も行う。