健康効果を高める、正しいサウナの入り方。
サウナは「熱→冷→休」を繰り返すだけではない。カラダへの負担を抑えながら健康効果を高める、科学的サウナ習慣を解説する。
取材・文/井上健二 撮影/今津聡子 イラストレーション/林田秀一 監修/加藤容崇 撮影協力/91°SAUNA
初出『Tarzan』No.914・2025年11月6日発売

教えてくれた人
加藤容崇(かとう・やすたか)/日本サウナ学会代表理事。慶應義塾大学医学部特任助教。北海道大学医学部卒業。ハーバード大学医学部附属病院などを経て現職。専門はがんゲノム医療とがん早期発見技術開発だが、サウナをはじめとする健康習慣の科学的な解析を第二の専門と定める。医学博士。
健康効果をより高める理想的なルーティンとは?

サウナ室を出る頃合いは心拍数の変化を目安に。
サウナの入り方の基本は、サウナ室→水風呂→外気浴を3セット程度繰り返すこと。初心者が4セット以上行うと、逆に自律神経のバランスが乱れることもある。また熱中症を避けるため、水分補給を忘れないようにしたい。
サウナ室では、坐る場所にも注意を払う。内部は上段、中段、下段と階段状になっているが、熱気は上昇しやすいから上の段ほど温度は高い。設定温度が90度だと上段90度、中段80度、下段70度くらいになっているのだ。サウナを我慢大会扱いするオジには、より上に坐るほどエラいと固執する人もいるが、いきなり上段に坐ると熱すぎる。1セット目は下段、2セット目は中段、3セット目は上段というふうに少しずつカラダを慣らしながら移動するのが正解。
走るときに心拍計を身に着けるように、サウナウォッチを利用するのもいい。タイマー代わりに使えるだけではなく、心拍数、自律神経の活動量などが客観的にモニタリングできて、無理せず健全に入れる。
なかでもサウナ室を出るタイミングは、時間や汗の量ではなく、心拍数の変化を目安にするのがお薦め。軽い運動をしたときと同レベル(毎分120〜130拍程度)になったら、そろそろ水風呂に移動した方がいいだろう。
女性がサウナで気をつけるべきポイント。
入りすぎると月経不順に。顔を覆えば平気だ。
ひと昔前までは男性ファンが多かったけれど、昨今のサウナブームを牽引しているのは女性。サウナーを自称するタレントやインフルエンサーも目立つ。
でも、女性がサウナを利用する際には、気をつけたいポイントがある。
男性と比べると、女性は体表の神経の感受性が高め。ゆえにサウナの熱で火照りやすく、交感神経の過剰な興奮が生じる。交感神経が強く刺激されると、卵巣の血管が収縮して血流が悪くなりやすい。結果、卵巣から分泌されて月経を維持するエストロゲンという女性ホルモンの分泌が減る。
「女性が1週間に10回以上サウナに入ると、70%以上が月経不順になるというデータがあります」
エストロゲンが不足すると、生殖機能を抑えるプロラクチンという女性ホルモンの分泌が逆に盛んとなってしまう。妊活中の女性はサウナは控えめに入ろう。
入る頻度を減らす以外にも、こうしたマイナス面をカバーするのに有効なのは、顔をタオルで覆うこと。男女とも顔は温度変化にセンシティブだが、女性はことにその傾向が顕著。顔をタオルで覆うと温度変化の影響が最小限に抑えられるため、プロラクチンの分泌が適正にセーブされるのだ。
顔を覆うかどうかでプロラクチン濃度が変わる。

サウナ室で顔をタオルで覆った女性と覆わなかった女性で、血漿中のプロラクチン濃度を比較した研究。熱さに敏感な顔を覆った女性の方がプロラクチン濃度の上昇が抑えられた。
出典/Exp Physiol. 2006 Nov; 91(6)1007-14
ドライサウナとウェットサウナを賢く使い分ける。

慣れたら「セルフロウリュ」も試してみよう。
日本でサウナといえばドライサウナだが、本場フィンランドではウェットサウナが主流。両者の違いを知っておこう。
ドライサウナは湿度が低いため、熱さを感じにくい。そこでサウナ室の温度は70〜100度と高めにセッティングされている。
ウェットサウナは湿度が高く、熱さを感じやすいため、温度は低め。フィンランド式で80〜90度、ミストサウナ(スチームサウナ)では50〜60度のところが多い。サウナストーンに水をかけて蒸気を発生させる「ロウリュ」が楽しめるのも特徴。ただし、自分でロウリュする際は、対応施設かどうかを確認したうえで、入っている人たちに「ロウリュしてもいいですか?」と尋ねてから。
両者とも芯から温まり、健康効果も大差ないが、ドライサウナが不向きなタイプも。気道が弱い人と熱さを感じやすい女性だ。
「100度超のドライサウナが耐えられるのは、熱い空気と皮膚の間に“境界層温度帯”という膜ができて熱の伝わりを妨げるから。でも気道には境界層温度帯が生じないので、気道が弱い人は熱で痛める恐れがある。また、女性は前述のように男性より顔が温度変化に過敏で、熱さを感じやすい。タオルで顔を覆って守りましょう」
カリスマ熱波師の追っかけは吉?

ウェットサウナでロウリュとともに行われるのが「アウフグース」。ロウリュで生じた蒸気を、タオルなどで熱波としてサウナ室内に巡らせる行いで、その技を持つ人を日本では「熱波師」と呼ぶ。ピザ職人の生地回しのように、熟練の技を見て楽しむエンタメ性も魅力だが、達人レベルだとより快適にサウナが享受できる。
「下手な熱波師だと室温にムラが出て心拍数が乱高下しますが、上手な熱波師は熱波を満遍なく送って室温を上手にコントロールするので、心拍数の上昇は緩やかでカラダの負荷が抑えられます。日本には世界大会で入賞する熱波師もいますから、推しを見つけてその技を体験してみてください」。



