F1・角田裕毅選手は、なぜレース前にサウナに入るのか?
子供の頃は嫌いだったというサウナが、今や欠くことのできない場所に。レースの成績にも良い効果をもたらしてくれるという、F1・角田裕毅選手とサウナの関係について。
取材・文/鈴木一朗 撮影/下屋敷和文
初出『Tarzan』No.914・2025年11月6日発売

Profile
角田裕毅(つのだ・ゆうき)/2000年生まれ。F1ドライバー。F3、F2を経て21年にF1デビュー。レッドブル・レーシング所属。
雑音が消えて、カラダがリセットされるんです。
世界中を転戦している角田裕毅選手。オフシーズンに心身を癒やす場所が温泉で、日常的に活用しているのがサウナである。
「子供の頃は温泉に興味はなかったです。温泉のありがたさを感じ始めたのは、海外に住むようになってから。今は日本の自然の中で露天風呂もいいなって思います。サウナも嫌いだった。ただ2、3年前から日本で流行っていると聞いて、イタリアで行ってみたら汗をかいて気持ちよかったんです」
サウナで水風呂のあとイスにドカッと座った瞬間がたまらない。
「入り終わってボーッとしているときの、なんか宇宙の感覚っていうか、ぐるぐる回っているような感じが好きなんです。そのとき普段は考えていない、いろんなことを思ったりしていると雑音がスーッと消えてカラダがリセットされていくように感じられるんです」
彼にとってサウナの効能はこれだけではない。F1という過酷なレースにも恩恵をもたらす。この取材は25年10月5日に開催されたシンガポールGP前に行ったが、暑い地域で行われるレースに向けてサウナを活用しているのだ。
「暑いところでのレースは大変なんです。レーシングスーツを着て、ヘルメットを被って、狭いコックピットに長時間いなくてはならないので。50〜60度ぐらいにはなります。だから、暑さに対する順応性はすごく必要で、その中でどれだけ筋肉だったり、車のパフォーマンスが出せるかが、結果を左右することにもなるんです」
また、熱に対する耐性も大きなポイントとなるようだ。サウナで熱に慣れることで、暑い場所でも普段と変わらずに体調を維持することができるようになったのだ。
「レースの2、3週間前から15分で2、3回、コンスタントに入るようにしています。この、コンスタントというのが大事で、いきなり5日前から始めたというのでは意味がない。スポーツで大切なのはもちろん本番なんですが、それ以上にそこに至るプロセスというのが重要だと思う。普段からどれだけ準備できるか。そんな意識を持っていつも自分を追い込んでいるし、サウナにも入っています」
角田選手のサウナルーティーン。
1.トレーニング後に15分のサウナで締める。

筋力トレーニングを1時間30分ほどこなして、この日はバイクマシンを約30分。それが終われば、ようやく至福のひとときがやってくる。さぁ、サウナだ。
2.まずはシャワーで汗を流す。

トレーニングでの汗をまずは冷水のシャワーでさっぱりと流す。それにしても驚くのは、首から肩にかけて発達した僧帽筋と、肩甲骨の下に張り出した広背筋。
3.この熱さがたまらない快感。

座っているとカラダ中から汗が噴き出してくる。温度が低いと思ったらロウリュ。どれぐらいの温度にして何分間入るかは、もう感覚としてわかっているという。
4.冷たい水で気分は爽快

火照ったカラダを冷たい水が包み込む爽快感。その非日常的な時間が贅沢でもあるし、レースに向かう彼を助けてくれているのだ。
5.外気浴でまるで宇宙にいる感覚。

ぐるぐる回っているような感じが好き、の状態。イスに座って人心地つけば、心もカラダも解放されてリセット。次のレースへの力も湧き上がってくるのだ。


