
Profile
田中偉登(たなか・たけと)/2000年生まれ。俳優。12年、『13歳のハローワーク』(テレビ朝日系)でドラマデビュー。同年に映画『宇宙兄弟』に出演。連続テレビ小説『エール』(NHK)、映画『長崎—閃光の影で—』などテレビや映画で活躍中。
大場美和(おおば・みわ)/1998年生まれ。フリークライマー。9歳でクライミングを始め、ユースではアジアで実績を残す。2015年、クライミングワールドカップ日本代表に。現在はフリークライマーとして、スポーツクライミングの普及活動を積極的に行う。
肩甲骨・股関節を駆使するボルダリングの動き。

クライミングは岩壁を自らの力で登るスポーツ。その中でもボルダリングはロープを使わずに、手足のみで大きな岩(ボルダー)を登攀する。全身運動のためコアである肩甲骨と股関節の動きが重要となる。
ここでは基本のキをフリークライマーの大場美和さんに教えてもらう。
生徒は俳優の田中偉登さん。ボルダリング部の部員役を映画で演じて、そこからジムに通うようになったが、なかなか思い通りに登れないというのが現状だ。大場さんが笑顔で話す。
「筋力がある人は、とりあえず登れます。でも、ある程度いくと、それだけでは対応できなくなる。肩甲骨と股関節の柔軟性が重要になってくるんです」
「ボルダリングを始めて筋肉がつきました。とくに背中。いいカラダって言われるようにもなった。でも、それだけでは限界があるんですね」と田中さん。
「関節をどう動かせばいいかがわからないという人は多い。基本の技術を学べば、どうすれば上手く動くかということを理解できます。さらに手足を順に出して登るので、股関節と肩甲骨を連動させる感覚もつかめていくと思うんです」(大場さん)
「動きの秘訣、ぜひ教えてください!お願いします」(田中さん)
まずはストレッチで動けるカラダを準備!
上半身のストレッチ。
下半身のストレッチ。
基礎編|壁の中で自由に動くためには?
人工壁につけられた突起物を“ホールド”と呼ぶ。いろんな種類があるから持ち方を覚える。そのうえで、壁の中で動きやすい姿勢を体得しよう!
基本の姿勢|壁とカラダの間に空間を作るのが大事。

登攀中、基本的には壁とカラダがくっついてはいけない(わざと寄せる場合もあるがそれは後ほど)。常に空間を作っておく。こうすると体力的に楽だし、動きを壁に妨げられることが少なくなる。
ホールドの種類とつかみ方。
足の使い方|爪先だけをホールドに乗せる。

足は爪先だけを乗せるのが基本。「慣れれば小さいホールドでも足先で左右を入れ替えられるし、爪先立ちもできるからより遠くのホールドも取れます」と大場さん。また、爪先を中心にカラダの向きも変えやすい。

足全体を乗せるのはNG。
実践編|ムーブでラクに効率よく登る。
壁を登るときの基本・四点支持とは、一番安定して疲れない姿勢のこと。そして四点支持の状態から、次のホールドをつかむためのカラダの動かし方のことをムーブと呼ぶ。今回は、3種類のムーブをご紹介。
四点支持|一番安定して疲れない姿勢。
左右の手足がすべてホールドにある。これが四点支持だ。壁の中で一番安定する姿勢。腕を伸ばし次のホールドへ(三点支持)。さらに左足をホールドから外し、右手でより高いホールドを狙う(二点支持)。
二点支持では対角の手足のみを外して動くこと。同じ側の手足を外すと安定性を失って落ちやすい。で、再び四点支持に。
「三点、二点支持の時間はできるだけ短く。素早く動き四点支持に戻りましょう」(大場さん)
キョン|膝を入れカラダを壁に近づける。これで次のホールドは楽勝!
両足をホールドで安定させた状態から、片側の脚を内側へひねる。膝が下を向くようにカラダの内側まで運んだら、両足で突っ張るようにして重心をとる。カラダを腰から回して壁に近づける。これで姿勢が安定するので、腕を伸ばせば次のホールドが楽につかめる。
「カラダを横にするのが難しい」(田中さん)
「腰が壁に入り切っていない(寄っていない)。もっと近づけてみましょう」(大場さん)
乗り込み|腰だけを動かして膝を深く折る。その後にカラダが“乗り込む”のだ。
目的のホールドに片側の足を乗せたら、上体はできるだけそのまま、腰だけを動かして膝を深く折り、踵の上に尻を乗せるように“乗り込む”。上手くいかない田中さんは膝をしっかり曲げられない。
「最初からカラダ全体で動くとダメ。感覚としては膝だけを横に動かして曲げる感じ。体重移動は片側の脚が動き切ってからです」(大場さん)
「頭ではわかっていますが……」(田中さん)
カラダのポジショニングが大切なのだ。

クロス|カラダを壁に寄せてひねり、反対側にあるホールドをつかむ。
腕を交差させてホールドを取るのがクロス。片側の肘を曲げ、カラダを壁に引き寄せ、同時に内側へとひねる。目的のホールドとの距離が近くなる。肩甲骨を大きく動かし、腕を伸ばしてホールドをつかむ。この時体重はほとんど下の手にかかる。
「クロスの後、ひねったカラダを元に戻し、しっかりと止まってから次のホールドへと進む。戻している時に次に行こうとすると、カラダが振られて落ちる危険性があります」(大場さん)
肩甲骨・股関節が使えれば、もっと自由に動けるようになる。

3時間、しっかり集中してレッスンを受けた田中さん。大場さんの手本を軽々とクリアする場面もあったが、やはり一筋縄ではいかないことが多かった。
「今までは、力だけで登っていたんだと痛感させられました」
田中さんは、ホールドさえつかめればグイグイ登れるのだが、手が届かない、足を置けないなど難所で止まってしまう。
「ボルダリングではまず股関節から動き始め、腕が連動する。さっきやった“乗り込み”が難しかったのは、股関節から動かす感覚がわからなかったからです。最初からカラダ全体が動いてましたから」と大場さん。
まず足を安定したホールドに置き、次にそこへ重心を移動させる。力で無理やりカラダを引き上げるのには限界があるし、体力もすぐになくなっていく。
「今日のことを何度もやればわかってきます。そうすると考えなくてもカラダが勝手に動く。それで、より遠い場所のホールドもつかめるようになるし、肩甲骨や股関節の可動域も広がります。でも、実は私自身もまだ肩甲骨の使い方に不満があるんですが。とにかく田中さん、今回は大健闘でした。すごく優秀だったと思います」(大場さん)
「あっ、余計悔しい(笑)。もっとがんばります」(田中さん)
「肩甲骨で引くのが苦手で、いまだに腕に頼ってしまう」と大場さん。本当!? で、こんな練習。張り出した棒に指を引っかけ懸垂。肩甲骨で引っ張り上げる。





























